2023年・コロナ禍における中古バイク価格、どれくらい高騰した?|理由と市場動向のおはなし|バイク王調査レポート

中古車で人気の高い旧車・絶版車の値動きはどうなのか?グラフは主要な車種7車種の値動きを示したもの。
バイク業界のよりよい未来を考え、新しい価値を調査し、分析した内容を広く社会に発信することを目的に活動を行う「バイク未来総研(運営:Bike Life Lab supported by バイク王)は、中古バイクの価格高騰について独自考察を交えたレポートを、同オウンドメディア内にて公開。コロナウイルスへの対応や意識が変化し続ける状況を加味した上で、最新の2023年データまでを読み解き、今後の中古バイク市場動向を考察している。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
バイク未来総研調べ https://www.8190.jp/bikelifelab/notes/bikefuture/20230615/

2023年の最新データまで読み解き、今後の中古バイク市場動向を考察

2020年から続く新型コロナウイルスの蔓延、それに伴うバイク部品や半導体不足・物流の混乱・生産遅延など、断続的に発生したものの、国内の新車出荷台数は上昇傾向を見せた。

2023年は、コロナ需要により大きな盛り上がりを見せた2022年と比較すると、前年比で軽二輪(126~250㏄)、小型二輪(251㏄以上)などのカテゴリーでマイナスとなっており、全体としては落ち着きを見せている。

バイク未来総研ではこれまで、中古バイクにまつわるデータや、当時の社会情勢から読み解き、過去10年間のオークション相場から見る中古バイク価格について考察してきた。

今回は、コロナウイルスへの対応や意識が変化し続ける状況を加味した上で、2023年の最新データまで読み解き、今後の中古バイク市場動向を考察していく。

コロナ環境が変化するなか、バイクの相場状況に変化はあったのか?

第一回の調査レポートでは、2022年5月までの中古二輪オークション相場の掲載と考察を実施。今回は2023年4月までのデータまで伸ばし、その推移を見ることとした。

以下は国内の中古バイク、すべての排気量を合計したオークション相場(中古車データグラフは年間10万台以上の買取台数を誇るバイク王独自データ集計により作成)。

※バイク王調べ

2020年の平均価格が18万1187円なのに対し、2021年の平均価格は23万7352円と、平均価格は5万6165円上昇。2022年に入り、ウクライナ侵攻による先行き不安に見舞われた時期の3月には、平均価格が下落。落ち込んだオークション相場は、2022年5月には盛り返し、秋の行楽シーズンとなる2022年10月には過去最高となる30万3226円を記録した。

その後、冬の需要低下の時期には一旦落ち着くものの、2023年2月より再び回復の兆しを見せている。また、1年間の平均価格で見ると、2021年は23万7352円。2022年は27万1822円と、前年と比較し3万4470円の上昇を見せている。

※(株)ユー・エス・エス開示情報

なお、上記は中古4輪オークション相場の推移。2022年9月の122万1000円をピークに、2023年3月の89万8000円まで、30万円以上の振り幅を見せている。

中古2輪市場は4輪ほど大きな振り幅はなく、年間を通して見ると緩やかな上昇傾向。これは2輪市場特有の市場推移であり、堅調な推移であるといえる。

主要な旧車・絶版車の値動きの歴史

全体の値動きでは緩やかな上昇の動きを見せていたが、中古車で人気の高い旧車・絶版車の値動きはどうなのか。主要な車種7車種の値動きを見てみよう。

※バイク王調べ

2005年頃から緩やかに旧車の価格上昇が始まり、2013年から2014年頃にさらに一段価格が上昇。2019年からコロナ需要を背景に価格の上昇が加速し、2021年には急激な価格高騰の波が訪れている。

2020年は「おうち時間」など、外出せずに家で楽しむことを意味するワードが流行し、家で楽しむ趣味などやソロキャンプなども注目を集めた。翌年の2021年は、経済面の問題から「外に出る」動き・手段を模索する年となりましたが、依然としてコロナウイルスに対する社会的圧力が強まる中、外出する手段として「ソーシャルディスタンスを保つことができる移動手段」として一躍バイクが注目を浴びたのも2021年頃。

そうした社会背景と新車供給不足が重なったことで、中古バイクへの需要が急速に高まり、2021年、中古車市場全体の相場が上昇。人気の旧車については、さらに極端な高騰が見られた。

2022年に落ち着きを見せた値動きは、2023年から新たな動向を示しているが、急激な高騰前の2020年よりも高い水準を維持。2001年からの全体の相場状況としては、現在まで上昇を続けている。

超お宝モデル「ホンダCBX400F」の内訳から考察

上記グラフの通り、2022年から2023年にかけては、需要の高い車種は再び値上がりし、そうではない車種は低下する動きを見せた。ひとつの例として、「ホンダCBX400F」のデータから今後の値動きについて考察していく。下記のグラフは、CBX400Fの2021年から2023年までの価格推移を示したもの。

※バイク王調べ

同じCBX400Fでも、流通台数が少なく希少価値の高い「CBX400FⅡ型」は、2023年に入りさらに値を上げて450万円超。一方、逆輸入車は横ばいの200万円程度。Ⅰ型は2021年から60万円以上値下がりし、164万円程度となっている。

値段が上がらない逆輸入車とⅠ型の共通点としては、流通台数が比較的多いことが挙げられる。また流通台数が多いことで、レストアを要する状態の悪い車両も割合として増え、平均価格を引き下げる要因にもなり、同じ逆車・Ⅰ型の中でも状態による価格差が拡大。

2021年の「旧車であれば良し悪しに関わらず高騰する」という状況から、状態が悪い車両は需要低下に伴い価格が低下し、一方で希少価値が高く状態が良い車体は価格上昇を続ける、いわば「二極化」が進むことが考えられる。

今後はしっかりと整備・レストアされた車両はさらに価値を高め、そうではない車両との価値・価格の差がさらに大きくなっていくと予想される。

バイク未来総研所長・宮城光さんのコメント

バイクレーサーであり、バイクジャーナリストでもあるバイク未来総研所長・宮城光さんのコメントをご紹介しよう。

「2023年4月までの各種データからは、2021年には世相と相まって旧車価格が爆発的に上がったものの、今後は状態の良くないバイクはそれなりの価格での取引が実施され、状態の良いバイクはさらに引き合いが強まる時代となっていくように見てとれます。

新車供給の動向や今後の世界情勢にもよりますが、コロナウイルスも5類となり、様々な行動制限が解除された現状においては、中古バイクの需要は一定数見込めるため、中古バイクの価格は2022年と同水準か、そこから緩やかに上昇していくのではと予想します。

コロナ禍によりバイクの価値が見直され、ソロキャンプのように需要が定着し、状態の良いバイクが多く流通するようになるのであれば、業界全体の活性化も実現。バイク業界に身を置く身として、大変喜ばしいことと感じます。引き続き今後の推移を見守っていきたいと思います(バイク未来総研所長・宮城光氏)」

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