GSX-R125の平均燃費は41.5km/ℓでした。|1000kmガチ試乗3/3

ツーリングライダー目線で各項目を評価すると、どうしたって厳しくならざるを得ない。とはいえ、スポーツライディング好きにとっては、いまひとつの快適性や積載性は取るに足らないこと……ではないだろうか。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

スズキGSX-R125……453,200円(消費税込み)

ドライブチェーンカバーはスイングアームの補強風デザイン。なお前後スプロケットに関しては、加速感を重視してロードギアード化を図る人が少なくないようだ(ノーマルは14/45)。

ライディングポジション ★★★★☆

今回はそうでもなかったけれど、2018年にこのバイクに初めて乗った時は、かなり攻めたライポジだな……と思った。その理由はハンドルグリップ位置の低さで、スーパースポーツに不慣れな人は上半身の前傾に手強さを感じるだろう。もっとも、シートが低く、ステップ位置は意外に前方かつ下方なので、一般的なスーパースポーツの基準で考えれば、市街地走行やツーリングは楽なほうである。なおGSX-R125が低めのセパレートハンドルを採用した背景には、アップライトな乗車姿勢のGSX-S125を同時開発したから、という事情があったようだ。

足つき性は素晴らしく良好(筆者の身長は182cm)。現在の日本で販売されている他の125ccマニュアルミッション+前後17インチ車のシート高が、ホンダCB125R:815mm、KTM RC125:824mm、125デューク:830mm、ハスクバーナ・スヴァルトピレン125:835mmであるのに対して(ヤマハYZF-R125の欧州仕様は820mm)、GSX-R125とGSX-S125はダントツに低い785mm。

タンデムライディング ★★☆☆☆

発進時には力不足を感じるものの、硬めのリアショックが功を奏してか、タンデムライディングはまあまあ快適。とはいえそれは僕の視点で、タンデムライダー役を務めた富樫カメラマン(身長172cm・体重52kg)の印象は、あまり芳しくなかった。「ジクサーSF250がすごくよかっただけに、ちょっと期待していたんだけど……。まず座面が小さいし、タンデムベルトがパッツンパッツンだから手でつかめみづらいし、もちろん他に手でつかむところは無いから、どうにも身体が落ち着かなかった。それで、メインライダーに密着すればいいのか?と思ったら、上半身が前傾してるせいで、意外に距離が遠いんだよね」

取り回し ★★★★★

低めのセパハンを採用していても、ハンドル切れ角が必要にして十分な左右35度で、軸間距離はクラス最短の1300mmだから、取り回しは楽々。ちなみにバーハンドル仕様のGSX-S125は、ハンドル切れ角が左右40度なので、もっと楽々。バックミラーは前後に折りたたむことが可能で、定位置にカチッと感があるのが嬉しい(過去に当企画で取り上げた、ジクサーSF250には無かった)。

ハンドル/メーターまわり ★★★★☆

コクピットはスーパースポーツ然とした雰囲気で、イグニッションキーシリンダー+シャッターはガソリンタンク前方に設置。視認性に優れるネガ表示の液晶メーターは、GSX250RやVストローム250などと同様の構成だが、ガソリン残量計のデザインや水温/油圧警告灯などの配置は異なる。右列上から2段目のシフトアップランプは、任意の回転数で点灯/点滅させることが可能。

左右スイッチ/レバー ★★★☆☆

左右スイッチボックスは他機種で実績を積んだスズキの定番品で、左にはハザードボタンが備わる。バランサーでエンジンが発生する振動が程よく抑えられているからだろうか、バーエンドウェイトは小さめ。

グリップラバーはGSX-R600/750/1000との共通部品。クラッチレバーの基部にはラバーブーツが備わっている。ブレーキ/クラッチレバーに位置調整機構は存在しないが、125ccクラスではそれが一般的。

燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★☆

ガソリンタンク+サイドカバーと内腿のホールド感は非常に良好で、125cc単気筒ならではのスリムさが実感できる。ちなみにサーキット指向のユーザーは、ガソリンタンク後部を減速時のストッパーとして使えるよう、社外品のカバーを導入することが多い模様。シート座面はやや前下がりで、実際のライディング中に違和感は抱かなかったものの(それどころか大柄な僕でも、前後左右に動きやすかった)、ロングランで尻に痛みを感じた後は、座面がフラットに近いGSX-S125用を試してみたくなった。

左右ステップバーはラバー無しのスポーティなデザインで、ヒールプレートはくるぶしでホールドしやすい形状。なおステップ位置はGSX-S125とまったく同じで、世の中には低いハンドルに合わせてGSX-R125は後方かつ上方にするべき、という意見があるようだが、日常走行やツーリングを考えると、現状の位置はひとつの正解だろう。

積載性 ★★☆☆☆

タンデムステップのヒールプレートにはフックがかけられる穴が存在するけれど、後方にフックポイントはナシ。今回の試乗ではタンデムシートにベルトを巻き付けるタイプのシートバッグを装着してみたが、タンデムシートの座面が小さいため、安定感はいまひとつだった。もっとも、ネットの画像検索で“GSX-R125 バッグ”というワードを打ち込むと、シート&サイドバッグを装着した写真が数多くヒットする。

ブレーキ ★★★★☆

ライバル勢ほど豪華な構成ではないけれど、フロント:φ290mmディスク+片押し2ピストンキャリパー、リヤ:φ187mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーのブレーキは、どんな場面でも扱いやすく、制動力に不満を感じることもなかった。ボッシュと共同開発した2チャンネル式のABSは、スポイーツライディングの楽しさを考慮した設定で、やや遅めの介入には開発陣のこだわりを感じる。

サスペンション ★★★☆☆

フロントフォークのインナーチューブ径は、現代の125ccスポーツの基準で考えると相当に細い31mm。とはいえかなりのハイペースで走っても、剛性や作動性に不満を感じることはなかったし、フォークの細さは車体の軽さ、軽快なハンドリングの一因になっている。リアサスペンションはボトムリンク式で、アセアン地域の多人数乗りに配慮したのだろうか、ショックユニットのスプリングは硬めの印象。なお調整機構は前後ともナシ。

車載工具 ★★★☆☆

タンデムシート下に備わる車載工具は、L型六角棒レンチ×2、プラグレンチ、差し替え式ドライバーの4点。なお近年の125ccスポーツモデルで、車載工具が最も充実しているのはKTM/ハスクバーナで、250cc以上の兄貴分と同様に10点前後が定番になっている。

燃費 ★★★★★

ほとんどの場面で高回転域を多用していたことを考えると、41.5km/ℓの平均燃費は望外の結果。ガソリンタンク容量は11ℓだから、航続可能距離は41.5×11=456.5kmで、エコランを意識すれば、1回の給油で500km走行も不可能ではなさそう。もっともホンダCB125Rの燃費はさらに良好なのだが、エンジン特性の差異を考えると(GSX-R125と比べれば、CB125Rは低中速・街乗り重視という印象)、それは当然のことだと思う。

インドネシア製の純正タイヤはダンロップD102A。決して悪いタイヤではないものの、ハイグリップ指向のダンロップのQ-LITEやブリヂストンBT-39SS、IRC・RX-03スペックRなどに変更したら、さらにワインディングロードが楽しくなりそうだ。

主要諸元

車名:GSX-R125
型式:8BJ-DL32D
全長×全幅×全高:2000mm×700mm×1070mm
軸間距離:1300mm
最低地上高:160mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:25.5°/93mm
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:124cc
内径×行程:62.0mm×41.2mm
圧縮比:11.0
最高出力:11kW(15PS)/10500rpm
最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/5500rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.923
 2速:1.933
 3速:1.476
 4速:1.217
 5速:1.045
 6速:0.925
1・2次減速比:3.285・3.214
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック正立式φ31mm
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:90/80-17
タイヤサイズ後:130/70-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:137kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:11L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:45.8.0km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス2:43.5km/L(1名乗車時)

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…