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Aston Martin Valhalla
アストンマーティン「初」を数多く導入
F1参戦で培ったパフォーマンスとテクノロジー、エアロダイナミクスを追求したデザイン、スリリングなドライビングダイナミクスを融合した「アストンマーティン ヴァルハラ」は、公道とサーキットの双方で圧倒的な走行性能を発揮することを目指したスーパースポーツだ。現在、開発は最終段階を迎え、アストンマーティンは、2025年に発売される生産仕様の全貌を明らかにした。
ヴァルハラは、多くの“初導入”が採り入れられた。アストンマーティン初の“量産”ミッドエンジンスーパースポーツであり、アストンマーティン史上最高レベルのパフォーマンスを誇るV8エンジンとして開発された、新開発4.0リッターV型8気筒ツインターボを搭載した初のモデルとなる。また、電気モーターとリヤ電子制御ディファレンシャル(E-デフ)を備えた、8速デュアルクラッチ・トランスミッション(DCT)も初めて搭載される。
アストンマーティンの新たなデザインランゲージが導入され、エクストリームスーパースポーツとしてのパフォーマンスを、そのフォルムとプロポーションで表現。アストンマーティンらしいピュアなラインが、強力なダウンフォースを生み出す革新的なアクティブエアロダイナミクスと高次元で融合した。
ダイナミクス、エアロダイナミクス、マテリアルに関しては、「アストンマーティン・アラムコ・F1チーム」のコンサルティング部門であるアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)と緊密に協力し、デザインと開発に新たな次元の知識と技術がもたらされることになった。
ラグジュアリーの伝統にF1の技術を投入
アストンマーティンのエイドリアン・ホールマークCEOは、ヴァルハラについて次のようにコメントした。
「4年前、私たちはアストンマーティン・ブランド変革の旅に出ました。長年にわたって築き上げてきたラグジュアリーにおける名声に、F1から得た最先端のテクノロジーと、クラス最高水準のパフォーマンスを融合させ、世界で最も成功を収めるブランドとなることを目指したのです」
「次世代スポーツカーが発売以来、高い評価を受ける中、アストンマーティン初のミッドエンジンの量産モデルである究極のドライバーズスーパースポーツ『ヴァルハラ』がラインナップに加わります。スペック上でもサーキットにおいても、最もドライバーにフォーカスした、技術的に最高レベルへと進化したスーパースポーツとして開発されました。真の性能を備えながら、公道では他のアストンマーティンモデルと同様、実用性と快適さも確保されています。市場で最もエレガントでエキサイティングな車両として設計された、唯一無二の存在です」
「究極のハイパーカーである『ヴァルキリー』の開発や、エイドリアン・ニューウェイとの協業を通じて、私たちは新たな視点で考える方法を学びました。この知識と新たな手法により、これまでの成功の強みをさらに発展させ、アストンマーティンの新たな歴史を担うヴァルハラに注目するお客様のため、テクノロジー、パフォーマンス、顧客体験において、クラスをリードする企業としての地位を確立することができました」
最高システム出力1000PSオーバーを実現
ヴァルハラの生産仕様は、当初のコンセプトから大幅に進化し、最高出力、ダウンフォース、動的性能などが大幅な進化を遂げることになった。
その中心には、エンジン単体で最高出力828PSを発揮する4.0リッターV型8気筒ツインターボ、さらに251PSを供給する3基の電気モーター(2基はフロントアクスルを駆動)によって構成されるプラグインハイブリッドパワートレイン。クラス最高レベルの最高出力1079PS、最大トルク1100Nmを発揮する。
内燃エンジンは、1リッターあたり207PSというアストンマーティン史上最高の排気量あたり出力を実現。新開発トランスミッションの8速DCTは、リヤアクスルへと駆動力を伝達し、俊速のシフトとスリリングな特性を提供すると謳う。パフォーマンス目標値は、0-100km/h加速が2.5秒、最高速度は電子制御リミッターにより350km/hに設定される。
ヴァルキリーで得た知見がフィードバックされたアクティブエアロダイナミクスにより、600kgを超えるダウンフォースを発揮。この数値は240km/hで達成され、その後、350km/hの最高速度に至るまで維持される。アクティブエアロダイナミクスは、速度が増すにつれてフロントとリヤウイングの迎角を徐々に小さくすることで、過剰なダウンフォースを逃がす効果も与えられた。
「ピュアEV」を含む4種類のドライブモード
「インテグレーテッド・ビークル・ダイナミクス・コントロール(IVC)」は、サスペンション、ブレーキ、ステアリング、アクティブエアロダイナミクス、パワートレインシステムを監視し、あらゆる状況での最適なパフォーマンスとドライバーとの一体感を実現する。
4種類のドライブモードと連動して作動するIVCは、車両の挙動やドライバーの要求を継続して把握し、ダイナミックな特性を調整。この高度に複雑で洗練されたシステムは、精緻なキャリブレーションにより有機的で自然なドライビング体験を提供し、エフォートレスかつシームレスに性能を高め、パフォーマンスとドライバーエンゲージメントを新たな次元へと引き上げる。
デフォルトは「スポーツ」モードだが、ドライバーは手動で「ピュアEV」「スポーツプラス」「レース」のドライブモードから選択することが可能。各モードはパワートレイン(トルクベクタリングやハイブリッドシステムを含む)、サスペンションの硬さ、アクティブエアロダイナミクス、ステアリングキャリブレーションの設定が与えられており、それぞれ特徴ある走行特性を実現する。
「ピュアEV」モードでは、フロント・アクスルのモーターのみで駆動し、バッテリー残量が少なくなると、自動的に「スポーツ」モードに変更。「スポーツ」モードでは、4.0リッターV8エンジンが作動し、電動フロントアクスルによる瞬発力と、V8エンジンの圧倒的なパワーを組み合わせた、ハイブリッドスーパースポーツらしい走行性能を実現する。
「ピュアEV」「スポーツ」「スポーツプラス」モードでは、アクティブリヤウイングは格納されたままとなり、「レース」モードで、リヤのTウイングが強力な油圧ラムによって255mmライドアップ。フロントアクスルの前方には、特徴的なアクティブリヤウイングと連動するアクティブフロントウイングが隠されている。
車両が不要なダウンフォースを逃がす必要があると判断した場合には、自動的に「DRS(ドラッグリダクションシステム)」が作動。「レース」モードでのブレーキング時には、リヤウイングは主にエアブレーキとして機能し、アクティブフロントウイングと連携して圧力のバランスを調整する。これにより、優れたブレーキング性能を発揮しつつ、最適な安定性が確保された。
アストンマーティンのビークルパフォーマンス担当取締役であるサイモン・ニュートンは、ヴァルハラのパフォーマンスについて、次のように説明を加えた。
「ヴァルハラは、1079PSと1100Nmという驚異的なパフォーマンスを前提としながら、さらにサーキットではさらに上のレベルのスピード、精密性、興奮を実現しています。公道では楽しく、エモーショナルなスーパースポーツとしての特性を維持することが課題になりました」
航続距離14kmが確保された「ピュアEV」モード
ヴァルハラのプラグインハイブリッドパワートレインは、828PSを発揮する4.0リッターV8ツインターボと、251PSを供給する3基の電気モーターが組み合わせられた。2基の電気モーターはフロントアクスルに搭載、3基目の電気モーターは8速DCTトランスミッションに組み込まれ、リヤアクスルのみに駆動力を供給する。
3基の電気モーターは、パフォーマンスに特化したPHEVパワートレイン向けに設計した先進的な高性能バッテリー(HPB)システムによって駆動。このバッテリーは効率的な誘電冷却システムを備えており、頻繁かつ連続的なパワー要求を満たすため、充電電力を迅速に展開する能力、高速エネルギー吸収能力、さらに高いパワー密度を兼ね備えている。
HPBの冷却システムは、電気絶縁性を持つ冷却液をバッテリーパック全体に循環させ、560個のセルそれぞれを最適な温度に保つことで、最大限のパフォーマンスを安定して発揮。「ピュアEV」モードを選択すると、ヴァルハラはフロントアクスルのみで駆動し、最大航続距離は14km、最高速度は140km/hに制限される。
リヤアクスルはV8エンジンによって駆動され、DCTトランスミッションに組み込まれた3基目の電気モーターが追加のパワーを供給。ヴァンテージ、DB12、DBX707モデルに搭載されているV8とは異なり、この新型エンジンはドライサンプ潤滑システムを採用し、サーキット走行中に横方向の強い力が加わる状況でも、適切なオイル供給が確保されるという。また、クランクピンが180度のオフセットで配置されたフラットプレーンクランクシャフトが導入されている。
新開発のパドルシフト付き8速DCTは、専用に設計・製造、ハイブリッド時代に対応し、専用開発され、内蔵型電気モーターが特徴となる。この電気モーターはV8エンジンの始動、高電圧バッテリーの充電、エンジンをアシストするトルクフィルに使用。また、リバースギヤはなく、後進はすべてのドライブモードにおいてフロントアクスルの電気モーターが行う。