ディフェンダー 110に待望のディーゼルモデル登場。驚くべき万能な走破性能を実感

泰然自若のクロカン王者、ディフェンダー。待ちに待った110ボディのディーゼルをラフロードで試す

ランドローバー ディフェンダー 110 X D300のフロントスタイル
ランドローバー ディフェンダー 110にディーゼルエンジン搭載モデルが追加ラインナップ。街中からオフロードまで、その真価をモータージャーナリスト・吉田拓生が確認した。
販売好調のディフェンダーについに3.0リッターディーゼルモデルが追加された。300ps/650Nmを発生する自社製INGENIUMエンジンを搭載した、ファン待望のニューカマーはガソリンモデルに対してアドバンテージがあるのだろうか?

Land Rover Defender 110 X D300

待望のロングボディ、ディーゼルモデルが上陸

ランドローバー ディフェンダー 110 X D300のリヤスタイル
4ドアモデル「110」にディーゼルモデルが追加ラインナップ。クロスカントリーモデルとディーゼルの組み合わせは盤石のものであり、国内での要望も多かった。今回の試乗車は足もとにグッドイヤー・ラングラーを装着。

約1年前に上陸を果たしたランドローバーの新型ディフェンダー 110。このクルマが今現在、大人気となっている事実はデビュー当初から簡単に予測できたことだ。

ランドローバーのオリジナルの血統を受け継ぐモデルの、約70年ぶりにして初めての完全刷新。それは今をときめくクロスカントリーSUVのアイコン的な存在でもある。ライバルと目されるメルセデスGクラスと並べてみると、同じくらいのインパクトがありながら、実際のスタートプライスはGクラスの半分程度という身近さもウケているに違いない。

ポテンシャルも印象的だ。新開発のモノコックボディを与えられた新型ディフェンダーの走りには、他のランドローバーとは一線を画す軽快さが込められている。先代のディフェンダーがマニア垂涎のミリタリーライクな1台だったとすれば、新型はその武骨な意匠を引き継ぎつつ、性能的には想像以上にモダンなクルマへと進化しているのである。

デビュー当初からおおよそ弱点が見当たらなかった新型ディフェンダー 110。もしその購入を踏みとどまった人がいるとすれば、考えられる理由はただひとつだけ。ディーゼルエンジン搭載モデルの登場を待ったということではないだろうか?

モダンに生まれ変わり多くの支持を得ているが・・・

ランドローバー ディフェンダー 110 X D300のインテリア
10インチのタッチスクリーンを搭載する、最新インフォテインメントシステム「Pivi Pro」は直感的な操作が可能だ。上位グレード「X」のシートはウィンザーレザー&スチールカットプレミアミムテキスタイルシートが標準装備。

彼の地には2.0リッターと3.0リッターのMHEVディーゼルを搭載した新型ディフェンダーが存在していることはUKのサイトに出ている。そのいずれかが追って本邦導入されることだって容易に想像がつくはずだ。

ヨーロッパ製のディーゼルエンジン車は、日本ではいまひとつパッとしないまま人気が下火になってきている。だが副変速機が付くような本格的なクロカン4駆を所望するマニアは今なお、選べるならディーゼルを希望するに違いない。クロカン4駆とディーゼルはタフなイメージで結ばれているし、ランニングコストも安い。また最高出力よりも低速トルクが重要視されるオフロードの世界においてディーゼルの方が偉いのは当然という見方もある。

2.0リッター4気筒のガソリンエンジン、P300を搭載した新型ディフェンダー 110のデビューからちょうど1年後に追加された待望のディーゼルモデルは3.0リッターの直6ターボ、つまりD300の方だった。48VのMHEVが組み込まれていることからもわかるように、D300はガソリンのP300のも上位モデルとしてラインナップされることになる。

さらにディフェンダーシリーズ全体としては、2種類のエンジンを搭載した110の他に、伝統的な3ドアモデルである90の4気筒ガソリンモデルが加わったばかりだ。

ディーゼル搭載モデルは期待以上に素晴らしい性能を披露した

ランドローバー ディフェンダー 110 X D300の走行シーン
8速ATを介して最高出力300psを路面に伝える直6ディーゼルターボを搭載。650Nmの最大トルクは僅か1500rpmから発生し、力強くストレスのない走りを披露する。

さてディフェンダー 110の本命と言われて久しい(?)D300。その完成度はどうだったのか? 今回我々が試乗したのは最上級グレードである110 X D300だった。

エンジンを掛けた後でも、室内にはディーゼルらしからぬ静寂が残されていた。走りはじめのスッと軽く滑り出す様子は以前ドライブしたガソリンモデル、P300に似ていた。しかしそこからスロットルを踏み込んでいった時の力強さは、明らかに違っていた。

どちらのエンジンも最高出力こそ300psで一緒なのだが、最大トルクは3割以上もディーゼルの方が大きい。しかもその発生回転数が低いので、2トンを軽く越える車重相手でもまったくストレスを感じない。

またディーゼルエンジン自体の回転フィールにも「さすが直6!」と讃えたくなるようなスムーズさが感じられた。現行イヴォークのデビュー当初に搭載されていた2.0リッター直4(D180)は、言うなれば「まんまディーゼル」といったテイストだった。ところがD300のマナー(音や振動)はガソリンユニットのそれを思わせるのだ。

ディーゼルのイメージを覆す静粛性

ランドローバー ディフェンダー 110 X D300のエンジン
5月にラインナップに追加された48V MHEVシステムを採用した3.0リッター直6ディーゼル搭載モデル。ディーゼルに抱きがちな騒音とは無縁な静粛性を実現している。

ちなみに48Vのマイルドハイブリッドは発進時のみ推進力をプラスすると説明されている。だが直6ディーゼルターボのトルクに紛れてしまっているのか、その仕事ぶりを感じ取ることは難しかった。

街中を走っていて、ストップ&ゴーを繰り返すようなシーンでもD300ユニットは賢いパワーデリバリーに徹し、車体の重さを感じさせない。またアイドリングストップからの再始動でも、BiSG(ベルト駆動スタータージェネレーターモーター)のおかげでいつの間にかエンジンが掛かっているような感じだった。

一方、高速道路におけるディフェンダー 110 X D300は、いよいよディーゼルかどうかもわからないほど静かに走り、スロットルオフではコースティングのように抵抗感なく進む。高速走行中のレブカウンターは、いつも1200rpmくらいを指していたので「静かで当然」という言い方もできるわけだが。

1200rpmと聞くと、再加速するときのシフトダウンで少しくらいギクシャクしそうなものだが、実際にはそんな素振りもなかった。8速ATが瞬時に最適なギヤを選び、滑らかに駆動を繋げてくれるのだ。

エアサスのマッチングはガソリンモデル以上か

ランドローバー ディフェンダー 110 X D300のインパネ
あらゆるドライブシーンに対応する、ランドローバー自慢のテレインレスポンスを搭載。硬いモノコックボディとストロークたっぷりのエアサスをシームレスに繋げて制御し、常に快適なドライブを提供する。

一方、足まわりに奢られたエアサスとのマッチングについても、ディーゼルの方が車重があるからかガソリンモデルより馴染みがいいと感じた。10年くらい前までのエアサス車によくあったフワフワした感じもないし、段差を乗り越えた時にバシンッと衝撃が走ることもない。

ランドローバーは新型ディフェンダーのモノコックボディについて「他社の最も高剛性のラダーフレーム車の3倍のねじり剛性を実現」と謳っていた。ラダーフレームの場合ねじれをロードホールディングの一助とすることが当たり前なので一概には言えないのだが、ディフェンダーのボディが恐ろしく硬いことは疑いようのない事実だ。

徹底的に硬いボディを作り上げて、ストロークたっぷりのエアサスと組み合わせたディフェンダーのシャシーは、生来の軽快さも手伝ってとてもスポーティだ。ステアリング裏にシフトパドルもないし、テレインレスポンスのモードにスポーツモードが用意されているわけでもない。けれどワインディングを気持ちよく走るためのポテンシャルはちゃんと込められているのである。

ビーチサンダルを履いているが如く水中時のステアフィールは秀逸

ランドローバー ディフェンダー 110 X D300の走行シーン
ラフロードの走破性は折り紙付き。また、カメラ画像を合成することでボンネット下の路面状況をリアルタイムで確認できるClear Sightグラウンドビューの採用により、悪路走行時の利便性も高めている。

今回箱根で開催されたディフェンダー試乗会の白眉は、オフロードコースの途中に設けられた「池越え」だった。よくイギリス本国のランドローバーのムービーなどでは渡河風景が出てくるのだが、日本における試乗会では珍しいタスクといえる。

新型ディフェンダーの90cmという渡河限界に対し、池の水深は20cm程度。しかもモニターにはリアルタイムで水深が表示されるので、安心感は非常に高い。

さらに興味深かったのは、新型ディフェンダーのステアリングフィールが水の中でもリニアだった点である。池を通過する途中にタイヤが水中の石のようなものを踏んだ時でもその感触がわかるのだ。それはまるでビーチサンダルで川の中を歩いている時のそれに似ている。

クルマで水の中を渡るなんて普通は考えもしないことだと思う。けれど年を追うごとに異常になっていく気象や災害のニュースを目の当たりにするたびに、緊急を要することもあるのかもしれないというくらいの意識にはなってきている。

D300の登場で新型ディフェンダーを取り巻く状況は変わった

ランドローバー ディフェンダー 110 X D300の走行シーン
ディフェンダーの伝統である抜群の走破性能は、ディーゼルモデルでさらなる高みへと到達する。ディーゼルでネックとなる車両価格もガソリンモデルと大きく変わらないのは嬉しい。

ランドローバー好きの友達が以前、東日本大震災の直後、先代のディフェンダーがずいぶんと売れたことを教えてくれた。クルマをライフラインとして考える人が実際にいるのだ。その場合ディフェンダーは最良の選択肢だと思う。有事には電気を要するハイブリッド的なものは役に立たないだろうが、D300のようなマイルドハイブリッドなら障害にはならないだろう。

少し話がそれてしまったが、直列6気筒ターボのディーゼルMHEV、D300は、ディフェンダー 110の完成度をさらなる高みまで引き上げたと言っていいだろう。つい先ごろイギリス本国ではディフェンダーの5.0リッターのV8モデルが発表されたが、クルマの性格を考えればD300こそがベストだと言い切れる。

一方ガソリンとディーゼルの価格差を110 Sでチェックしてみると62万円しかないことがわかる。しかもこの差は燃費や燃料代によって徐々に詰まっていく類のものだ。

D300の登場で新型ディフェンダーを取り巻くシーンがさらに活性化することは疑う余地がない。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MGAZINE/GENROQ 2021年 9月号

ランドローバー ディフェンダーの90及び110

新型ディフェンダーの90とディーゼルが上陸! いま最も注目すべきオフローダーに渡辺慎太郎が試乗

ランドローバー ディフェンダーの新型モデルは、日本発売以来国内でも売れに売れている。そして、上陸が待たれていたショートホイールベースの「90」とディーゼル仕様の実車が日本へやってきた。気になる2台の出来栄えはいかに。自動車ジャーナリストの渡辺慎太郎が試乗した。

【SPECIFICATIONS】
ランドローバー ディフェンダー 110 X D300
ボディサイズ:全長4945 全幅1995 全高1970mm
ホイールベース:3020mm
車両重量:2420kg
エンジン:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2993cc
最高出力:221kW(300ps)/4000rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgm)/1500-2500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後225/60R20
車両本体価格:1171万円

【問い合わせ】
ランドローバーコール
TEL 0120-18-5568

【関連リンク】
・ランドローバー 公式サイト
https://www.landrover.co.jp/

キーワードで検索する

著者プロフィール

吉田拓生 近影

吉田拓生

1972年生まれ。趣味系自動車雑誌の編集部に12年在籍し、モータリングライターとして独立。戦前のヴィンテ…