BMW iXを公道試乗! 最先端のBEVによる快適さと楽しさを味わう

現在進行形の未来、BMW iX。最新ピュアEV仕様のSUVが秘めたパフォーマンスとは?

BMW iX xドライブ50の走行シーン
電動車専門ブランド「i」を掲げ、着々と脱炭素社会への対応を進めているBMW。iブランド最新モデルiXのポテンシャルを、モータージャーナリスト・塩見 智が確かめる。
BMWが推し進める電動化の象徴がiブランドであり、i3、i8に続いてi4など続々と拡充するラインナップの最新モデルがiXである。SUVの姿を持つ最新BEVを都心部で短時間ながら試乗した。

BMW iX

ワクワクする未来

BMW iX xドライブ50のフロントセクション
ひときわBMW iXのフロントマスクを印象付ける巨大なキドニーグリルはまったくの飾りではなく、レーダーなどの各種センサーが組み込まれる。

BMWは元々電動車に積極的なメーカーで、古くはBEV(バッテリーEV。つまり純電気自動車のこと)のMINI EV、最近ではBEV及びレンジエクステンダーのi3やi8などを発表してきた。そして満を持して、バッテリー総電力量100kWh前後、価格1000万円級、BEV専用モデルというテスラが確立したラグジュアリーEVカテゴリーにiXで参入した。

見よ、このフューチャリスティックなエクステリアデザインを! このデザイン自体はコンセプトカーとして2018年に公開されており、何度も目にして時間をかけて消化してきたつもりだが、画像で見るのとは違い、現実社会に溶け込ませるとなかなかインパクトのあるスタイリングだ。

大きいだけでなく、黒地に金色の模様で派手に加飾されたキドニーグリルは、グリルと言いつつ完全に塞がれていて、機能はもたない。リヤコンビランプは水平のバーのよう。

堂々たるボディサイズだが後輪操舵システムで取り回しをカバー

BMW iX xドライブ50のリヤスタイル
急速充電は最大150kW、普通充電は11kWまで対応するという。急速充電40分で約80%、約500kmの走行が可能と謳う。

随所に奇抜なデザインが盛り込まれているが、一歩引いて全体を見ると、エンジンがないために低く短いボンネット、バッテリーをフロアに敷き詰めるためにロングホイールベース&ワイドトレッド、その上に車内空間を確保するために車高が高めという、大容量バッテリーをもつEVに多いプロポーションであることがわかる。

全長4955mm、全幅1965mmと大きいが、最近流行りの後輪操舵システムが備わるため、取り回しは悪くない。後輪は最大3.2度逆位相に切れる。高速域では同位相に最大2度切れる。

体感的にはハイパフォーマンスカーと同等の加速を披露

BMW iX xドライブ50のパワートレイン
ドアを開けると無塗装のカーボンの構造部材が現れる。まさに軽量化の象徴だ。ボンネットは開けない前提なのでボンネットオープナー、ダンパーは備わらない。

iXには性能が異なる上級モデルの50と廉価版の40があり、試乗したのは50のほう。フロントアクスルに最高出力190kW(258ps)/最大トルク365Nmの、リヤアクスルに同230kW(313ps)/最大トルク400Nmのモーターが備わり、システム全体では同385kW(523ps)/同765Nmを発揮する。

これだけ大出力のモーターが前後に仕込まれて四輪を駆動するのだから遅いわけがない。停止状態からアクセルペダルを蹴飛ばすように踏めば、ワープのような加速を味わうことができる。車両重量は2530kgに及ぶが、でもそんなの関係ねぇ。0-100km/h加速は4.6秒。発進と同時に最大トルクを発揮するため、体感的には3秒台のICE(内燃機関)ハイパフォーマンスカーと同等の感覚だった。

もちろんジェントルに踏めばジェントルに加速する。とにかく走行フィールがなめらかで心地よい。アクセルペダルを戻せば、それだけで強い減速が得られる。その強さを3段階から選べるほか、先行車両の有無などによって自動的に調整されるモードもある。

快適な乗り心地とエンタメ要素の高いサウンドの演出が秀逸

BMW iX xドライブ50のインテリア
12.3インチのメーターパネルと14.9インチのインフォメーションディスプレイが湾曲して配置される。六角形のステアリングも特徴的だ。オプションのファーストクラスパッケージ(63万5000円)を選択すると、電動シートのスイッチやiDriveコントローラーがクリスタル製となる。

エアサス特有の当たりの柔らかい乗り心地は快適。EVのメリットである高い静粛性と相まって、リビングでくつろぎながら移動しているような感覚でいられる。ただiXは静かなだけではない。スタートボタンを押した時の効果音やドライブモードごとに変わるアクセル操作と連動したサウンドなどが凝っている。なんかワクワクさせられるサウンドだなと思って資料を見ると、手掛けたのは数々の映画音楽を手掛けるハンス・ジマーだそう。道理でカッコいいわけだ。つい先日も『007/ノータイム・トゥ・ダイ』のクライマックスで彼の音楽に泣かされた。

バッテリーの総電力量は111.5kWhで、一充電走行距離は650km(WLTC)。車両側は最大150kWでの急速充電に対応する。これなら残量がなくなった状態からでも40分で80%まで回復させらせ、約500km走行できる。10分の充電で100km走行可能。ただし残念ながらそこまでの性能をもつ充電器が日本にほとんどない。次世代型CHAdeMOが普及すれば、真価を発揮するだろう。自宅や公共の普通充電の設備では最大11‌kWでの充電が可能となっている。

REPORT/塩見 智(Satoshi SHIOMI)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
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【SPECIFICATIONS】
BMW iX xドライブ50
ボディサイズ:全長4955 全幅1965 全高1695mm
ホイールベース:3000mm
車両重量:2530kg
モーター:交流同期発電機
最高出力:385kW(523ps)/8000rpm
最大トルク:765Nm(78.0kgm)/5000rpm
総電力量:111.5kWh
トランスミッション:1速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後255/50R21
最高速度:200km/h
0→100km/h加速:4.6秒
電力消費率:190Wh/km(WLTC)
航続距離:650km(WLTC)
車両本体価格(税込):1116万円

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437

【関連リンク】
・BMW 公式サイト
http://www.bmw.co.jp/

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著者プロフィール

塩見 智 近影

塩見 智

1972年岡山県生まれ。1995年に山陽新聞社入社、2000年に『ベストカー』編集部へ。2004年に二玄社『NAVI』…