アルファロメオの最新SUV「トナーレ」とボルボ「XC40」が1クラス上のメルセデス・ベンツ「GLC」に挑戦

「メルセデス・ベンツGLC」「アルファロメオ トナーレ」「ボルボXC40」500万〜800万円の最新SUVを比較試乗

横置き1.5リッター直4ガソリンのトナーレ、縦置き2.0リッター直4ディーゼルのGLC、横置き2.0リッター直4ガソリンのXC40。3台ともマイルドハイブリッドを搭載しているのが意外な共通点。
横置き1.5リッター直4ガソリンのトナーレ、縦置き2.0リッター直4ディーゼルのGLC、横置き2.0リッター直4ガソリンのXC40。3台ともマイルドハイブリッドを搭載しているのが意外な共通点。
人気のSUVの中でも、今最も人気を集めているのが全長4500mm前後のミドルクラスだ。各ブランドもこぞってこのクラスに魅力的なモデルを投入している。ドイツ、イタリア、そしてスウェーデンを代表する最新の人気モデルを集めて、その個性を比較してみよう。

Mercedes-Benz GLC 220 d 4Matic
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Alfa Romeo Tonale TI
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Volvo XC40 Ultimate B4 AWD

ボルボXC40をベンチマークとして

噂のニューモデル“アルファロメオ・トナーレ”、それにフルモデルチェンジを受けた“メルセデスベンツGLC”と、最新SUVが2台立て続けに日本上陸を果たした。そこで、このカテゴリーの定番モデルともいうべきボルボXC40を一種のベンチマークに見立てて、比較テストを行ったというのが本企画の主旨である。

もっとも、トナーレとXC40がCセグメントであるのに対し、DセグメントとなるGLCはほかの2台に比べて全長が20~30cmほど長いから、直接のライバルにはなりえないかもしれない。事実、GLCの後席は他の2台よりいくぶん広い。ただし、だからといってトナーレとXC40が窮屈かといえば、そんなことはなかった。

エンジンは、トナーレが横置き1.5リッター4気筒ガソリン、GLCが縦置き2.0リッター4気筒ディーゼル、XC40が横置き2.0リッター4気筒ガソリンとバラバラだが、最高出力が160~197PSの範囲に収まっているほか、3台ともマイルドハイブリッドを搭載しているのが意外な共通点。駆動方式はトナーレのみ前輪駆動で、残る2台は4WDとなる。価格はトナーレとXC40が500万円台で手に入るのに対し、GLCは800万円オーバーと、かなり開きがある。

そんな違いがあることを念頭に置きつつ、3台を順に試乗することにしよう。まずはトナーレから。

印象に残ったトナーレの動的質感

せっかく“ジョルジョ”という優れたアーキテクチャーを得て縦置き/後輪駆動ベースに格上げされたのも束の間、またたく間に横置き/前輪駆動ベースに“後退”したことをやや残念に思っていたアルファロメオだが、そんな経緯を忘れさせてくれるくらい、トナーレのボディはしっかりとしていた。それもただ剛性感が高いだけでなく減衰特性も優れているから、足まわりに大きなショックが加わってもイヤな振動が残らない。このボディのおかげで、トナーレの動的質感はひときわ高く感じられたほどだ。

しかも段差を乗り越えたときの衝撃をたくみに吸収し、路面の大きなうねりもスムーズに乗り越えるなど、乗り心地のまとめ方もなかなかうまい。それでいてロールやピッチングが効果的に抑え込まれているので、アルファらしい軽快なハンドリングも楽しめる。

ただし、残念な部分もあった。まず、ドライビングモードのN(ナチュラル)を選ぶと2000rpm以下でややトルクが細く、シフトダウン時にギクシャクすることがあった。もっとも、これらはD(ダイナミック)を選んだ途端に解消。とりわけシフトダウン時には、まるでブリップングのような動作をしてエンジン回転数をあわせてくれるので、むしろスムーズに感じられる。やはりアルファは、元気に走らせたほうが魅力的になるようだ。

ただし、ステアリング・フィールだけはドライビングモード切り替えでもどうにもできなかった。そもそも操舵力が軽すぎるうえに、路面の不整で進路が乱されがちになるほか、反力感も乏しい。おかげで直進時には常に意識してステアリングをホールドしなければならず、コーナリング時の接地感も物足りない。いずれも電動パワステのソフトウェアを見直すだけでかなり改善できそうだが、走りを売り物にするアルファとしては見過ごすことのできない弱点といえるだろう。

どっしりとしたGLCと俊敏なXC40

対するGLCは高級感に溢れていた。巨大なディスプレイが鎮座するキャビンは、細いストライプが入ったウッド調のフェイシアを含め、Sクラスと見紛うほどプレミアム感が強い。マイルドハイブリッドを得たディーゼルエンジンは始動時も加速時もバイブレーションとはほぼ無縁で、静粛性も良好。ロールやピッチの動きはやや大きめだから、ワインディングロードで俊敏なハンドリングを味わえるタイプではないものの、高速道路ではフラットでどっしりとした乗り心地を堪能できる。いい意味で、昔ながらのメルセデス・ベンツの味わいが復活したような気がしたくらいだ。

XC40は内外装のデザインが相変わらず魅力的。とりわけ明るいカラーが選べるインテリアは、造形のセンスがいいうえに素材の質感も高く、文字どおり北欧家具さながらの魅力を味わえる。シンプルでありながらプロポーションがよく吟味されたエクステリアデザインもまったく色あせていない。

エンジンは2500rpmを越えたあたりからモリモリと力が湧き起こるタイプ。徹頭徹尾フラットなトルク特性の最新マイルドハイブリッド・パワートレインとはやや異なる味付けだ。足まわりは、ロールやピッチがはっきり抑え込まれているのでハンドリングは俊敏。これはアーキテクチャーがSPA/CMAに切り替わって以降のボルボに共通した傾向である。

アルファロメオの復権は近い

ただし、その代償として乗り心地が快適とは言いがたい。まず、路面の段差ではゴツゴツとした印象がはっきりと伝わるし、ダンパーよりもスプリングが優っているように感じられる乗り心地は落ち着きに欠けていて、なんだかせわしない。したがって若いドライバーには喜ばれるかもしれないが、ベテランドライバーには、まず一度、試乗されることをお勧めしておく。

GLCがいいのはある意味で予想の範囲内だったが、個人的にはトナーレの健闘が印象に残った。アルファロメオには、ここを新たな出発点として、今度こそ堅実にブランドの再構築を図って欲しいものだ。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2023年6月号

SPECIFICATIONS

アルファロメオ・トナーレTI

ボディサイズ:全長4530 全幅1835 全高1600mm
ホイールベース:2635mm
乾燥重量:1630kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
排気量:1468cc
最高出力:117kW(160PS)/5750rpm
最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1700rpm
トランスミッション:7速AT
駆動方式:FWD
サスペンション:前後マクファーソンストラット
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後235/40R20
燃料消費率:16.7km/L(WLTC)
車両本体価格:524万円

メルセデス・ベンツGLC 220 d 4マティック

ボディサイズ:全長4725 全幅1890 全高1640mm
ホイールベース:2890mm
乾燥重量:2020kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
排気量:1992cc
最高出力:145kW(197PS)/3600rpm
最大トルク:440Nm(44.9kgm)/1800-2800rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後235/55R19
燃料消費率:18.9km/L(WLTC)
車両本体価格:820万円

ボルボXC40 アルティメット B4 AWD

ボディサイズ:全長4440 全幅1875 全高1655mm
ホイールベース:2700mm
乾燥重量:1750kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
排気量:1968cc
最高出力:145kW(197PS)/4750-5250rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1500-4500rpm
トランスミッション:7速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後235/50R19
燃料消費率:14.2km/L(WLTC)
車両本体価格:569万円

【問い合わせ】

メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

ボルボお客様相談室
TEL 0120-922-662
https://www.volvocars.com

アルファ・コンタクト
TEL 0120-779-159
https://www.alfaromeo-jp.com

最新アルファロメオたるコンパクトSUV「トナーレ」。パワートレインはすべて新開発の1.5リッター4気筒直噴ターボに48V駆動のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドで、7速DCTのFWDとなる。

最新アルファロメオの「トナーレ」に試乗してアルファスッドTiを思い出すいくつかの理由

ステルヴィオに続くアルファロメオのSUV第二弾、トナーレが上陸した。Cセグメントのコンパクトなボディにアルファらしさを詰め込み、「オジサン世代はクラクラする」とレポーターに言わしめたトナーレは、マイルドハイブリッドを採用したエンジンなど新機軸もたっぷりの意欲作だ。

ジャガー Eペイス Rダイナミック SE P300eとボルボ XC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5 インスクリプションのツーショット

非公開: PHVを得た2台のCセグメントSUV、ジャガー Eペイスとボルボ XC40。「草食系の好敵手」を徹底検証

ジャガー初となるPHVがMY22のEペイスにラインナップされた。1.5リッター直3ガソリンエンジンにリヤモーターを組み合わせた先進のパワートレインだ。迎え撃つライバルは既にPHVをラインナップしているボルボ XC40。たっぷり乗り比べることで2台の走行性能や個性が顕になった。

先代比で全長が50mm、ホイールベースが15mm伸びた。1890mmという全幅は変わりないが、5mm低くなった全高によって、初代より低重心に見える。

ミドルサイズSUVの雄「メルセデス・ベンツGLCクラス」のプレミアム感はどこから生まれるのか試乗で確かめた

2015年のデビュー以来、世界で大ヒットを記録したメルセデス・ベンツGLCが初のフルモデルチェンジ。質感の高いインテリアやマイルドハイブリッドならではのスムーズな走りを備えた新型はまたしてもプレミアムミドルサイズSUVクラスにおいて寵児となるに違いない。

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…