アルファロメオらしさ満載のコンパクトSUV「トナーレ」に試乗

最新アルファロメオの「トナーレ」に試乗してアルファスッドTiを思い出すいくつかの理由

最新アルファロメオたるコンパクトSUV「トナーレ」。パワートレインはすべて新開発の1.5リッター4気筒直噴ターボに48V駆動のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドで、7速DCTのFWDとなる。
最新アルファロメオたるコンパクトSUV「トナーレ」。パワートレインはすべて新開発の1.5リッター4気筒直噴ターボに48V駆動のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドで、7速DCTのFWDとなる。
ステルヴィオに続くアルファロメオのSUV第二弾、トナーレが上陸した。Cセグメントのコンパクトなボディにアルファらしさを詰め込み、「オジサン世代はクラクラする」とレポーターに言わしめたトナーレは、マイルドハイブリッドを採用したエンジンなど新機軸もたっぷりの意欲作だ。

Alfa Romeo Tonale

「こういうのがアルファだ」と唸らせる要素

梅鉢紋のようなテレフォンダイヤル・ホイールデザインが特徴的。昔日の栄光に思いを馳せずにはいられない。
梅鉢紋のようなテレフォンダイヤル・ホイールデザインが特徴的。昔日の栄光に思いを馳せずにはいられない。

歴史が長いということは、それだけ蔵から引っ張り出せるアイテムが多いということだ。アルファロメオの新型コンパクトSUVであるトナーレには、オジサン世代以上のクルマ好きなら感涙にむせぶであろう、そんな“お約束”モチーフが散りばめられているとアルファは言う。

確かに、3連ヘッドライト風のシグネチャーライトはかつてのSZ(ジュリアではなくES30の方)を彷彿とさせるし、梅鉢紋のような例のテレフォンダイヤル・ホイールデザインなど、そうそうアルファってこうだったよなあ、と昔日の栄光に思いを馳せずにはいられない。それに比べて現在のアルファはすっかり影が薄くなってしまったが、そんな低調ぶりを打開する期待の星が、ステルヴィオより小さいCセグメントのSUVたるトナーレである。アルファロメオのSUV第2弾にして初の電動化モデルだ。

予定より遅れて今年1月に国内発売された日本仕様は導入記念モデルたる「エディツィオーネ・スペチアーレ」とエントリーモデルの「TI」、さらに電制ダンパーや20インチホイールなどを装備する上級グレードの「ヴェローチェ」もつい先日追加発表されたが、パワートレインはすべて新開発の1.5リッター4気筒直噴ターボに48V駆動のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドで、7速DCTのFWDとなる。

ターボチャージャーにVGTを採用

新開発の1.5リッター4気筒ターボエンジンは新機軸満載である。エンジン単体では117kW(160PS)/5750rpmと240Nm(24.5kgm)/1700rpmを発生、それにトランスミッションケースに内蔵された15‌kW(20‌PS)と55‌Nmを生み出すモーター(P2モーターと称する)が加えられており、さらに12VのBSG(ベルト駆動スターター・ジェネレーター)も搭載されている。一般的なマイルドハイブリッドシステムはこのBSGだけを積むものがほとんどで、電動モーターだけの走行はできないが、トナーレの場合は20km/hぐらいまでの低速ならばモーター走行が可能である。

いわゆるダウンサイジングターボの1.5リッター4気筒のもうひとつの大きな特徴は、ターボチャージャーに可変ジオメトリータービン(VGT)を採用していること。タービンのベーンを制御して排気流路を変化させ、低速側のトルクとレスポンス、および高速側の出力を両立させようというVGTは現代のディーゼルターボユニットでは常識化しつつあるが、ガソリンエンジンでの採用例はまだ少ない(ポルシェ911ターボや718シリーズの2.5リッターターボぐらい)。というのも、排気温度が比較的低いディーゼルに対してガソリンエンジンは排気温度が高く(800度に対して1000度以上)、当然それに耐える素材やメカニズムを使用する必要があるからだ。

トナーレの場合は高膨張比サイクルのミラーサイクルを採用することで(排気温度が低くなる)それに対応しているようだ。加えて350barの高圧噴射システム、12.5対1の圧縮比など、エンジンそのものも非常に力の入った最新仕様である。ちなみに1.5リッターターボには130PS仕様もあるが、そちらはVGTを採用していない。VGTは通常のターボに比べれば当然コスト増になるからだ。

ストップ&ゴーの続く街中ではたまにDCTのかすかな変速ショックを感じることもあるが、目くじらを立てるほどではない。それよりもVGTターボとモーターアシストによる実用域での力強さと軽快感が嬉しい。軽くスロットルペダルを踏んでもスルスルッと俊敏にスピードに乗るので、街中でも大変扱いやすい。一方で、ダウンサイジングターボにありがちなことだが、全開加速はそれほど目覚ましくはない。0-100km/h加速8.8秒というデータもその体感に一致する。フルデジタルになったメーターはなぜか5500rpmからレッドゾーンが始まるが、それを超えるほど勢いよく回るものの、アルファロメオと聞いて多くの人が期待するほどの駿足ではない。

それなりにある姿勢変化と、つかみやすい接地感

もっとも、一部の高性能モデルを別にすれば、アルファはそもそも大パワーによる怒涛の加速を売りにするのではなく、爽快なレスポンスとドライバーの気持ちにフィットする軽快なハンドリングを美点にしてきた。そういう点で新しいトナーレはなかなか好印象であり、正直なところ私のようなオジサン世代は、昔のアルファスッドTiをちょっと思い出して、これこれこういうのがアルファだよ、と頬が緩んだ。例によってステアリングはクイックだが、締め上げた足まわりでパキパキ、ピーキーに向きを変えるというタイプではなく、それなりに姿勢変化もあり、接地感もつかみやすい。軽くてフィットするスニーカーのように、リニアにさりげなく、しかも正確にコーナリングする感覚だ(おそらくブレーキによるトルクベクタリング機能も備わるはず)。

トナーレのプラットフォームはジープ・レネゲードやフィアット500Xと同じものを基本としており、サスペンションは4輪ストラットにFSDと呼ばれる周波数感応式ダンパーを装備している(ヴェローチェは電子制御可変ダンパー)。乗り心地はまずまず穏当で、インフォテインメントシステムもADAS系アシスタンスも一気に最新レベルとなり、他のブランドと比べても遜色ない。唯一、TIにはシフトパドルが備わらないのが残念だが、使い切れるパワーを目いっぱい引き出して操る楽しさ(と実用性)がある。TIは524万円。もう一度、と思い悩む微妙な値付けである。

REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/森山良雄(Yoshio MORIYAMA)
MAGAZINE/GENROQ 2023年4月号

SPECIFICATIONS

アルファロメオ・トナーレ TI

ボディサイズ:全長4530 全幅1835 全高1600mm
ホイールベース:2635mm
車両重量:1630kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1468cc
最高出力:117kW(160PS)/5750rpm
最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1700rpm
モーター最高出力:15kW(20PS)/6000rpm
モーター最大トルク:55Nm(5.6kgm)/2000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション:前後マクファーソンストラット
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後235/45R19
燃料消費率:16.7km/L(WLTCモード)
車両本体価格:524万円

【問い合わせ】
Alfa Contact
TEL 0120-779-159
https://www.alfaromeo-jp.com/

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高平高輝

モータージャーナリスト。カーグラフィック(CG)編集部に所属し、CG副編集長、NAVI編集長、カーグラフィ…