コモ湖の情熱的イベント「フォーリ・コンコルソ2024」

初夏のコモ湖畔、もうひとつの情熱的イベント「フォーリ・コンコルソ2024」

2024年5月25〜26日、コモで開催された「フォーリコンコルソ」で。2つある会場のひとつ、ヴィラ・デル・グルメッロには、英国の歴代フォーミュラカーがスターティンググリッドを模して展示された。手前はR.パトレーゼが操縦したアロウズA1b。
2024年5月25〜26日、コモで開催された「フォーリコンコルソ」で。2つある会場のひとつ、ヴィラ・デル・グルメッロには、英国の歴代フォーミュラカーがスターティンググリッドを模して展示された。手前はR.パトレーゼが操縦したアロウズA1b。
もっとも有名なコンクール「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」と同じ週末に開催される、「世界中の自動車愛好家をつなぎ豊かにする、自動車文化の思い出に残る瞬間」を謳うイベント「フォーリ・コンコルソ」を取材した。コンクールが趣旨ではないというイベントの魅力をイタリア在住大矢アキオ ロレンツォが解説する。

FuoriConcorso

あるファッショニスタのパッションから

イタリア北部コモ湖畔で近年、存在感を増している初夏の催しといえば「フォーリ・コンコルソ」である。FuoriConcorsoとは、イタリア語で「コンクールの外(そと)」のことだ。これには2つの意味が託されている。ひとつは、イベントの趣旨がコンクールではないことである。公式リリースには「世界中の自動車愛好家をつなぎ豊かにする、自動車文化の思い出に残る瞬間」と趣旨が説明されている。

もうひとつは公式リリースでは触れられていないが、著名コンクール・デレガンス「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」と同じ週末、会場に近い城館を舞台としていることだ。物理的にもコンクールの外なのである。

創設者は1922年に創業を遡るミラノの高級メンズアパレル・ブランド「ラルスミアーニ」の3代目当主グリエルモ・ミアーニ氏である。生粋のカーエンスージアストである彼は、自動車ブランドとのパイプが太い。直近では2024年4月16日、ミラノ・モンテナポレオーネ通り近くにある自らのブティックに、発表後6日しかたっていない「アルファ・ロメオ・ジュニア(旧ミラノ)」がサプライズ展示されたのも、それを物語っている。

イベントのきっかけは2019年に「ベントレーの100年」の名のもと行われた「ベントレー・コンチネンタルGT」の走行会だった。翌年のターボチャージャー付き車両限定「ターボ・ラン」を経て、3年目の2021年から現在に近い形となった。2022年は「ポルシェのスペシャルエディション」、2023年は「空力的なスポーツ&レーシングカー」を特集した。

いきなりスターティンググリッド

会場である湖畔に建てられた2つの城館は、周囲に坂道が続く。ドレスコードには「スマートカジュアル」とともに「comfortable shoes」と記されているのは、そのためだ。

2024年のテーマは「ブリティッシュ・レーシンググリーン」と定められた。1960年代から2000年代まで、リリースの説明を借りれば「エリザベスⅡ世女王時代の」レーシング&スポーツモデル60台以上が集められた。最も壮観だった風景は2会場のひとつ、ヴィラ・グルメッロで、スターティング・グリッドのごとく歴代フォーミュラカーが並べられた。

フォーリサローネのもうひとつの魅力は、多彩な参加ブランドである。今回は「ザガート」「アストンマーティン」「マルク-フィリップ・ゲンバラ(注:ゲンバラGmbHとは別企業)」「ケーニグセグ」「ロータス」「パガーニ」そして「ポルシェ」が車両を展示した。コンコルソ・ヴィラ・デステは厳格・中立的であるものの、主催者がBMWのクラシック部門であることから、会場にはその存在感がどうしてもある。加えて、ヒストリックカー以外の参加枠は、コンセプトカーに限られる。そうしたなか、より自由度が高いフォーリサローネが年々評価されていることはたしかだ。超少量生産のハイパーカーを手掛けるコンストラクターにとっては、モンテカルロの「トップマーク」ショーに比肩する公開の場を得られたことになる。

初夏のコモをエンスージアスト垂涎の地に

思えば、ヴィラ・デステと比肩する格式を誇るペブルビーチ・コンクール・デレガンスでも、同じ開催時期に「コンコルソ・イタリアーノ」といったイベントが並行して行われてきた。対して、従来ヴィラ・デステにはRMサザビーズのオークションが隔年で開かれるのみだった。そうした意味で、フォーリコンコルソ双方は、初夏のコモがさらにエンスージアスト垂涎の地となることに寄与するはずだ。

REPORT/大矢アキオ ロレンツォ(Akio Lorenzo OYA)
PHOTO/大矢麻里(Mari OYA)、大矢アキオ ロレンツォ(Akio Lorenzo OYA)、FuoriConcorso

1976年ランボルギーニ・カウンタックLP400の現オーナー夫妻。車体色を意識したサイケデリックな装いでパレードに臨んだ。

世界で最も権威あるコンクール「コンコルソ・ヴィラ・デステ」で見つけたサウジアラビア王女のカウンタック

欧州を代表するコンクール・デレガンス「コンコルソ・ヴィラ・デステ」が、2024年5月24日から26日までイタリア北部コモ湖畔チェルノッビオで開催された。今年の見どころをイタリア在住ジャーナリストの大矢アキオ ロレンツォが解説する。

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著者プロフィール

大矢アキオ ロレンツォ (Akio Lorenzo OYA) 近影

大矢アキオ ロレンツォ (Akio Lorenzo OYA)

在イタリア・ジャーナリスト。国立音大ヴァイオリン専攻卒業。京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)大学院 …