ランボルギーニ ウラカン STO、富士スピードウェイを駆ける!

ランボルギーニ最速の遺伝子“STO”。最後!?のピュアエンジン搭載モデルをサーキットで味わう

ランボルギーニ ウラカン STOの走行シーン
ランボルギーニ ウラカン STOの走行シーン。
モータースポーツ用マシンのノウハウを注入したというウラカン STOが日本に上陸。その性能を富士スピードウェイで確かめる機会を得た。ウラカンの最後を飾ると言われるこの最強仕様の実力を世界有数の高速サーキットで試す。

Lamborghini Huracan STO

ウラカンの最終進化モデルは伝統の“STO”

ランボルギーニ ウラカン STOのサイドビュー
熟成が極まったランボルギーニ ウラカンに、「STO=スーパートロフェオ・オモロガータ」」の名称を冠したモデルが追加された。そのパフォーマンスをサーキットで確認する。

スーパースポーツカーのトップブランドとして君臨するランボルギーニ。その商品戦略の特徴は、ひとつのモデルに対して進化・発展させたバージョンを定期的に投入することだろう。フラッグシップであるアヴェンタドールは2011年のLP700-4に始まりLP720、LP750スーパーヴェローチェ、S、SVJといった進化を遂げてきた。そしてウラカンは2014年のLP610-4でスタートしてLP580-2、ペルフォルマンテ、EVOなど、多くの新規モデルが投入された。

その副産物と言うべきか、ランボルギーニのモデルは概して寿命が長い。それでも決して古さを感じさせないのは、元々のデザインが優れているということもあるが、このように絶え間ない進化を続けてきたからだろう。これには商品価値の維持というマーケティング的側面もあるのは否定できないが、それよりもその時その時の最高のテクノロジーを注入して、最高のスーパースポーツであり続ける、というエンジニアのプライドと良心を強く感じてしまう。もちろんそれは、そうやって生み出されたランボルギーニの最新のクルマたちが、文句のつけようもないほど素晴らしいからだ。

磨き込まれたエアロダイナミクスと徹底した軽量化を果たす

そして、ウラカンにまた新たな1台が加えられた。STOと名付けられたこのクルマは、見るからに戦闘的なルックスで、今までのウラカンとは異なるオーラが漂う。それもそのはず、STOとは「スーパートロフェオ・オモロガータ」の意味で、モータースポーツ部門のスクアドラ・コルセが、ワンメイクレースモデルのスーパートロフェオとデイトナ24時間で三連覇を果たしたGT3 EVOのノウハウを投入して造り上げたクルマだという。つまりすべてが本物なのである。オーラが違うのもさもありなん、だ。

最大の変更点はエアロダイナミクスと軽量化だ。エアロダイナミクスは専用のフロントスプリッターにボンネットのエアダクト、リヤの垂直のシャークフィンと大型のリヤウイングなど徹底的に煮詰められている。

軽量化については、多くのパーツを軽量素材に置換。ボディパネルはほぼすべてがカーボン製となり、20%軽いウインドスクリーン、マグネシウムホイールなどの軽量パーツが惜しげもなく導入されている。ボンネットはフェンダーとバンパーが一体のカーボン製となっており、通常モデルより75%の軽量化が図られているという。開閉は前ヒンジで跳ね上がるスタイルで、メンテナンスがやりやすいというメリットも生まれている。またその姿がミウラを思わせるのも、ファンにはたまらないポイントだ。

EVO未満、EVO RWD以上のトルクフルなV10エンジンを搭載

ランボルギーニ ウラカン STOのエンジン
V10NAエンジンはEVOと同じ640ps。565NmのトルクはEVOより35Nm低いがEVO RWDよりも5Nm大きい。

エンジンはEVOと同じ640ps、トルクは565NmでEVO RWDを5Nmだけ上回る。そうそう、このSTOは後輪駆動。それはもちろんスーパートロフェオやGT3 EVOが後輪駆動であるからだ。

ヘルメットを被りフルハーネスのシートベルトを締め上げ、富士スピードウェイのコースへと乗り入れる。インテリアの風景はEVOとあまり変わらないが、容赦なく侵入してくるエンジンサウンドと、ほぼゼロの後方視界がこのクルマが特別であることを知らせてくれる。徐々にスピードをアップしていくと、驚くのは速さよりも抜群のスタビリティだ。このクラスのクルマで100Rや300Rを走るといつもは恐怖が先に立つが、STOは不安定な挙動を示すこともないので、全開とは行かなくてもそれなりに安心してスロットルを踏んでいける。

乗る前は身構えてしまったがSTOは実にドライバーフレンドリーだ

ランボルギーニ ウラカン STOの走行シーン。
ウラカン STOはカタログスペックに最高速度310km/hを刻むが、富士スピードウェイのストレートで280km/hオーバーを記録したことからもその数値に偽りはない。さらにRWDであるにも関わらずAWD同様の安定感を披露した。

細かなコーナーが連続する第3セクターでは、ブレーキの後にステアリングを切り込むと驚くほどスッと軽くノーズが入っていく。抜群のエンジンレスポンスとパワーで立ち上がりの加速も気持ち良いことこの上ない。ストレートでは280km/hをオーバーしたが、どっしりとステアリングも落ちついているので不安感はまるでない。以前にFSWで体験したペルフォルマンテも相当だったが、STOのエアロダイナミクスはそれを上回っている。その後のフルブレーキからクリッピングポイントに向かうまで、一連の動きがスムーズで淀みない。これもタイヤが路面をしっかりと捉えてくれるからであり、まるでAWDであるかのような安定感は驚くほどだ。

ほぼレーシングマシンのルックスから乗る前は身構えてしまったが、STOは実にドライバーフレンドリーなクルマだった。登場から7年、着実な進化を遂げてきたウラカンも、ついにこのSTOでファイナル。それはすなわちNA純エンジンスーパースポーツ時代の終焉を意味する。その寂しさと、ウラカンが最後に到達した高みを体感できた悦びで、クルマを降りた時はちょっと感傷的な気分になっている自分がいた。

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2021年 12月号

【SPECIFICATIONS】
ランボルギーニ ウラカン STO
ボディサイズ:全長4547 全幅1945 全高1220mm
ホイールベース:2620mm
乾燥重量:1339kg
エンジン:V型10気筒DOHC
総排気量:5204cc
最高出力:470kW(640ps)/8000rpm
最大トルク:565Nm(57.6kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ:前245/30R20 後305/30R20
0-100km/h加速:3.0秒
最高速度:310km/h
車両本体価格(税込):4125万円

【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889

【関連リンク】
・ランボルギーニ 公式サイト
http://www.lamborghini.com/jp

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。愛車は993型ポルシェ911。