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Renault Emblème
ルノー傘下のアンペア社が開発を担当
ルノー・グループは、欧州においては2040年までに、全世界では2050年までに、カーボンニュートラルの実現を目標に掲げている。この厳しい目標達成の鍵となるのが、ルノー・グループにおいてフル電動モデルの開発・研究を担当する「アンペア(Ampere)」社だ。
パリ・モーターショーでは、アンペアが開発した、水素燃料電池システム搭載コンセプトカー「エンブレム」が初公開された。エンブレムは30kWの燃料電池に、40kWhのニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーを組み合わせ、日常域においてはバッテリー駆動、長距離走行時は燃料電池を使用。車両ライフサイクル全体でのCO2排出量を、従来のICE比で90%、BEV比で80%も削減することを目指している。
エンブレムは、自動車業界の変革に対応するため、従来とは異なる取り組みが導入された。ルノー、アンペアを含む傘下企業、関連会社、そのパートナー企業などが包括的に協力し、新たな開発アプローチを採用。開発の中心を担ったアンペアは、技術革新こそが持続可能な未来への鍵になると考え、新たな試みを数多く採り入れている。
脱炭素化へと取り組みは、単独で実施できるものではなく、自動車の場合、ライフサイクル全体を5つの分野に分ける必要がある。エコを意識した「車両開発」を行い、適切な「資源の選択」「製造工程」「使用環境」を経た上で、「廃棄」までを含めて、カーボンニュートラルを達成できるという訳である。
使用素材のほぼすべてがリサイクル可能
アンペアとルノーは、2022年に発表したコンセプトカー「セニック ヴィジョン(Scénic Vision)」から新たな開発指針を掲げており、その成果の一部はエンブレムにも導入。あらゆる可能性が検討されており、脱炭素化を新たなレベルに引き上げながら、同時に広々とした室内空間を持つファミリーカーとして、将来的な実用化を目指している。
エンブレムでは、特に資源の生産・使用・廃棄後の回収の観点から、インテリジェントで信頼性が高く、実現可能な素材の組み合わせが追求された。これにより、パーツのカーボンフットプリントは70%も削減され、全体の50%がリサイクル素材で構成。使用素材のほぼすべてが、耐用年数経過後にリサイクルが可能となっている。
内外装のデザインは、エンジニアとデザイナーが協力し、エアロダイナミクスと効率性を最重視。美しいスタイリングと広大な室内空間を両立した、美しいシューティングブレークが完成した。アンペア社のルカ・デメオCEOは、エンブレムについて次のように説明を加えた。
「エンブレムは技術革新を通じて持続可能な未来を築くという、私たちが掲げる姿勢を体現しています。自動車が今も進化を続け、情熱を忘れないという強い想いを表現しているのです。そして、エンブレムでは、ルノー・ブランドの未来のデザイン言語、『ラ・ヌーベル・バーグ(La Nouvelle Vague:新しい波)』が表現されました。平均的な内燃機関車両はライフサイクル全体で50tの環境負荷を発生させますが、エンブレムはライフサイクル全体でわずか5tです。まさにブレークスルーと言える存在だと言えるでしょう」