“ランクル人気”を背景に「日産 パトロール」日本導入なるか!?

「“知る人ぞ知る”日産のクロカン4WD」新型「パトロール」に4WDの聖地中東で試乗した

日産の新型パトロールにサウジアラビアで試乗。
日産の新型パトロールにサウジアラビアで試乗。
「日産 パトロール」といえば、かつて警察や消防など、おもに公官庁へ納入されたコンパクトなオフロードモデルのこと。その後「サファリ」へと発展したのだが、日本では2000年代後半に姿を消した。だが、海外では販売が続けられており、このたび7世代目となる新型がデビュー。SUV人気の波に乗り、日本でも販売再開なるか!?(GENROQ 2025年3月号より転載・再構成)

Nissan Patrol

あの「サファリ」の後継車

ボディサイズは全長5350×全幅2030×全高1945mmで、これはトヨタ・ランドクルーザー300に比べ全長+365mm、全幅+50mm、全高+20mmという堂々たる大きさ。
ボディサイズは全長5350×全幅2030×全高1945mmで、これはトヨタ・ランドクルーザー300に比べ全長+365mm、全幅+50mm、全高+20mmという堂々たる大きさ。

近頃は車両本体以外の話題に何かと目が向いてしまう日産にあって、「パトロール」は最も古い歴史を紡ぎ続けてきた銘柄だ。その出発点は1951年に遡る。

現在の陸上自衛隊にあたる警察予備隊の発足に伴う四輪駆動車の競争入札向けに開発した車両を民生向けに調整し、公共機関や企業向けに販売、後に一般ユーザーも購入するようになったという経緯は、トヨタの「ランドクルーザー」とよく似ている。ちなみにその入札で勝利したのはウイリスのライセンス生産を提案した三菱のジープだった。

パトロールはその後、日本でもサファリとして1980〜2000年代にかけて発売されていたが、カルロス・ゴーン下の経営判断において2007年に販売を終了した。が、その後2010年からはフルモデルチェンジに伴い北米向けのアルマーダ、インフィニティブランドのQX80とアーキテクチャーを共有するモデルとして、パトロールは中東や豪州、南ア、フィリピンなど多地域で販売が継続している。ちなみにこれら3つのモデルは、全量が九州工場で生産されるメイド・イン・ジャパン銘柄だ。

そのパトロールが、昨秋14年ぶりのフルモデルチェンジを迎えて7代目となった。大々的な発表イベントが行われたのはアブダビだ。ランドクルーザーの天下かと思われる中東の主要地域では思いのほか、パトロールを見掛ける頻度が高い。開発者の面々も絶対に負けられないフィールドだという砂漠での走破性に対する信任が想像以上に高いのだろう。

砂漠での圧倒的な存在感

インテリアは日本の「間」の概念を意識してデザインされた。直線基調のインパネには14.3インチのモニターが左右に2つ並ぶ。センターコンソールには「since 1951」のレタリングが。
インテリアは日本の「間」の概念を意識してデザインされた。直線基調のインパネには14.3インチのモニターが左右に2つ並ぶ。センターコンソールには「since 1951」のレタリングが。

そんな新型パトロールの国際試乗会に一部の日本のメディア関係者が呼ばれた理由は、このクルマを日本で売ることになったからではない。導入はまったく白紙ながら、日産の社内でもエンジニアや営業、事務職問わず、このクルマの国内販売を望む声が少なからずあるがゆえだと察している。メディアを通じて存在を知ってもらうことでユーザーの反応を伺えれば……と、そんな観測気球的な意味合いがあったのだと思う。

その試乗会が行われたのはサウジアラビアの西部、紅海沿岸の一帯だ。首都リヤドから2時間ほどのフライトで到着するそこは、手つかずの自然を呼び水に、新たなリゾートエリアとして開発が始まっている。

空港に降り立ったところから、道以外の人工物がほとんど見当たらない。一面に広がる砂地にあっても、新型パトロールは頼り甲斐のある存在感をみせていた。サイズは全長5350×全幅2030×全高1945mm。寸法的には300系のランドクルーザーよりひと回り大きく、エスカレードやカリナンに比肩する。

エンジンも、ラダーフレームも一新

「日産パトロール」といえば、かつて警察や消防など、おもに公官庁へ納入されたコンパクトなオフロードモデルのこと。その後「サファリ」へと発展したのだが、日本では2000年代後半に姿を消した。だが、海外では販売が続けられており、このたび7世代目となる新型がデビュー。SUV人気の波に乗り、日本でも販売再開なるか!?
ラダーフレームに組み付けられる足まわりは四輪独立懸架、「プラチナム」グレードにはエアサスが奢られる。

新型パトロールは、持ち前のラダーフレームを筆頭にほぼすべてのコンポーネンツが完全刷新された、完全なるフルモデルチェンジを受けている。そのフレームはクロスメンバーがサイドメンバーを貫通するかたちで溶接するなどの新しい工法を採用し、曲げ側で57%、ねじり側で40%も単体剛性を向上させた。一方で3075mmのホイールベースは前型と同じだ。悪路を走破するためのアングルにも直接関わってくる性能領域ゆえ、思慮なく動かさないということだろう。ただし、フレーム形状やその上に載るボディ開口部形状などに工夫が加えられたおかげで、3列シートの最後列への乗降性や掛け心地は大幅に向上している。乗せるに特化したミニバン同然とはいわずとも、それに準ずる空間を有している辺りは、日本市場への親和性を検討する上でも効く話かもしれない。

エンジンは3.8リッターV6自然吸気と3.5リッターV6ツインターボの2種を用意。後者には急峻な砂丘などでも安定したオイル潤滑を実現すべく、GT-Rにも採用されている「スカベンジャーオイルポンプ」が搭載されている。
エンジンは3.8リッターV6自然吸気と3.5リッターV6ツインターボの2種を用意。後者には急峻な砂丘などでも安定したオイル潤滑を実現すべく、GT-Rにも採用されている「スカベンジャーオイルポンプ」が搭載されている。

搭載するエンジンは従来の5.6リッターV8の代替となる新開発の3.5リッターV6ツインターボだ。パワーもトルクも前世代を上回るダウンサイジング的なトレンドに則ったものだが、悪環境の中で低速で全開を繰り返すという高負荷にも対応すべく、油圧系統にはスカベンジポンプを採用するなど、GT-Rで培ったノウハウも活かしながらサーマルマネジメントを強固なものとしている。

驚きの動的質感

試乗車はトップグレードのプラチナムということもあり、内装の装備や加飾も奢られていた。ドアインナーパネルやダッシュボードにまでレザーを巻くほどの贅沢さはないが、ヘビーデューティ系四駆とみれば十分な豪華さといえるだろう。

パトロールはすでに先代でラダーフレームに四輪独立懸架という組み合わせを実現していたが、新型ではプラチナムのみにエアサスが採用されている。極限環境での耐久性なども十分に検討されたというそれは、パトロールのオンロードでの振る舞いをひときわ洗練されたものとしていた。凹凸を綺麗にいなしながらバウンドによる上屋の伸びをしっかり抑えた乗り心地のフラット感は、ラダーフレームのクルマであることをすっかり忘れさせてくれる。加えて静粛性の高さも印象的だ。新開発のエンジンは高速燃焼ながら、爆発に伴うガチャガチャした打音はしっかり抑えられており低回転域では至って静か、そして中〜高回転域ではすっきりしたサウンドを聴かせてくれる。また、燃費もリッチで扱いやすいトルクに加えてワイドレシオの9速ATにも支えられ、平均値の推移をみるに100km/h巡航時は10km/Lに迫るところが期待できそうだ。

この、オンロートでの洗練されたマナーや素直なコーナリングをみるにつけ、アップダウンが延々と続く砂丘での骨太な走りと強力な走破性はにわかに想像がつかない。駆動配分は通常でほぼ0対100、駆動状況に応じて最大50対50となるフルタイム4WDだが、砂を掻き出しながら全開で斜面を駆け上がる際にも前後輪のトラクションの推移は操縦の実感としてしっかりとドライバーに伝わってくる。丘越えのたびに加わる大きなショックにもまるで動じない頼り甲斐のある走り味はボディ別体のラダーフレームならではの強靭さがもたらすものだろう。

正直、新型パトロールの静的・動的な商品力の高さにはちょっと驚かされた。日本でも選択肢に加わって欲しい、そんな魅力を備えた1台だ。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/日産自動車
MAGAZINE/GENROQ 2025年3月号

2025 Nissan Patril

SPECIFICATIONS

日産パトロール LE プラチナム・シティ

ボディサイズ:全長5350 全幅2030 全高1945mm
ホイールベース:3075mm
車両重量:2813kg
エンジン:V型6気筒DOHC ツインターボ
総排気量:3492cc
最高出力:313kW(425PS)/5600rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/3600rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後275/50R22

【問い合わせ】
日産自動車お客さま相談センター
TEL 0120-315-232
https://www.nissan.co.jp

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