なにもかもが完璧すぎる最強の豪華サルーン「アウディ S8」にやっぱり死角はなかった

通常はローダウン姿勢のS8だが、オプションでプレディクティブアクティブサスペンションを装備すると、ドアを開けた瞬間、音もなく車高を上げてちょうどよいヒップポイントとして乗降性をアシストする。
通常はローダウン姿勢のS8だが、オプションでプレディクティブアクティブサスペンションを装備すると、ドアを開けた瞬間、音もなく車高を上げてちょうどよいヒップポイントとして乗降性をアシストする。
アウディのフラッグシップモデル、S8がマイナーチェンジを受けた。スポーツサルーンの頂点として君臨するハイパフォーマンスサルーンの進化の度合いは如何ほどか? 佐野弘宗が確かめた。

Audi S8

最新の最強サルーン

プレディクティブアクティブサスペンションのおかげで、まさに“浮遊感”のある乗り心地はS8の真骨頂だ。
プレディクティブアクティブサスペンションのおかげで、まさに“浮遊感”のある乗り心地はS8の真骨頂だ。

現行のアウディA8は2018年10月に国内発売されて、2019年後半に「プレディクティブ アクティブ サスペンション(以下、PDAS)」をオプション設定。さらに2020年8月にはより高性能な4.0リッターV8ツインターボエンジンを搭載して、21インチタイヤやPDASを標準装備した「S8」を追加した。

というわけで、この夏にマイナーチェンジを受けたA8シリーズは4年弱ぶりのアップデートとなるが、今回連れ出したS8に限れば、発売から2年弱という短期間での手直しである。その主な内容は、エクステリアの化粧直しと内装調度類の手直しで、パワートレインやサスペンションなどのクルマの基礎部分には、基本的に手は入っていない。

今回の新しさを強調するのはフロントエンドだ。底辺が広がったシングルフレームグリルに合わせてヘッドランプもL字型となって、最新アウディらしい顔つきになった。リヤランプは新たにマトリクスOLEDとなり、走行モードによって表情を変えるほか、後続車が2m以内に近づくと、全光源点灯して後続に危険を知らせる。試乗したS8はグリル内部も新しいブラックハニカムパターンで、さらに表情が新しい。

真のアクティブサス

通常はローダウン姿勢のS8だが、ドアを開けると、瞬時に音もなく車高を上げてちょうどよいヒップポイントとして乗降性をアシストする。このまるで生き物のような振る舞いが、PDASの真骨頂である。

PDASは4輪のスタビライザーリンクに備えられた電動モーターがホイールストロークや車高を個別コントロールする。その強力なモーターは駆動用マイルドハイブリッド(MHEV)と同じ48V電源で作動する。頭につく「プレディクティブ」の言葉どおり、PDASはカメラとミリ波レーダーに加えて、自動運転にも使われるレーザースキャナーも駆使して、路面や周辺環境を検知しながらエアスプリングやダンパーを制御する・・・という真の意味でのアクティブサスである。ボディは常にほぼ水平に保たれて、不整路面では自動的に車高を高めてストロークを確保。側面衝突の危険を検知すると、そっち側の車高を80mm引き上げ、強固なサイドシルで衝撃を受け止める準備をする。

浮遊感ある乗り味

・・・と、まさに人工知能サスペンションともいうべきシャシーはマイチェン前と基本的に変わっておらず、それに支えられるS8の走りは相変わらず“異次元”というほかない。どのドライブモードを選んでも、路面から数cm浮いている?・・・と錯覚しそうな乗り心地である。いかに路面が荒れていても、路面を舐めるかのようなフラットライドで、交差点での右左折から高速ジャンクション、箱根の山坂道でもロールをほとんど感じさせない。実際、旋回中のS8を外から見ていると、アウト側のアシは踏ん張るどころか、逆に伸びているのが分かる。

なかでも「コンフォートプラス」モードを選ぶと、全体の所作は鷹揚でゆったりしたものになるだが、ボディの上下動は一発でスルリと収束する。そして「ダイナミック」では乗り心地が引き締まり、身のこなしも一段と俊敏になるのだが、一般的なエアサスや電子制御ダンパーのようなコツコツ感はまるでない。クイックなのに路面から浮いている(?)独特の感覚は他では味わえない。

ラグ皆無の超絶レスポンス

571ps/800Nmをうたう4.0リッターV8ツインターボは、同じA8の「60」より111ps/140Nmも上回るハイチューンだが、まるでNAかのようにラグ皆無のレスポンスは、エンジン本体のデキに加えてMHEVの恩恵だろう。そして、ダイナミックモードにしたときの甲高い咆哮は快感というほかない。

しかも4輪操舵のおかげで、高速では絶大に安定しているのに、低速ではグリグリと小回りがきいて・・・と、S8はもはや、速い遅い、かっこいい悪いを超越した(いや、実際のS8は速くて、かっこいいが)なにもかも完璧すぎる乗用車だ。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 9月号

【SPECIFICATIONS】

アウディS8
ボディサイズ:全長5190 全幅1945 全高1475mm
ホイールベース:3000mm
車両重量:2260kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
圧縮比:10.1
最高出力:420kW(571ps)/6000rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/2050-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
装着タイヤサイズ:前後265/35R21
環境性能(WLTC)
燃料消費率:8.2km/L
車両本体価格:2050万円

【問い合わせ】
アウディ コミュニケーションセンター
TEL 0120-598-106
https://www.audi.co.jp/

著者プロフィール

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佐野弘宗