Red BullのホームGPをマックスが完全制圧
まさに「最強シーズン」を象徴するかのような優勝劇。
決勝71周。マックス・フェルスタッペンがブレーキのワンタッチすらミスしないような最速ドライビングを披露すれば、Red Bull Racingは71周先にあるゴールラインまでの最速ルートを完全に読み切ったかのような戦略をピットから実行。
F1第10戦オーストリアGP。最強ドライバーと最強チームによる“完全犯罪”とも表現したくなるほどの圧巻なレース。
ポールポジションからスタートするフェルスタッペン。対して、予選2番手ルクレール、3番手サインツという布陣で、戦略的になにかと有利な2台で狩りに挑むフェラーリ勢。
レース序盤。1台のHAASがトラブルでコース脇にマシンを止めたときに大きくレースが動いた。ヴァーチャル セーフティ カーで全車スローダウンする中、タイヤ交換のため2台をピットに呼び戻したフェラーリ勢。
そして。あえて動かないRed Bull Racingとフェルスタッペン。
スローダウンラップ中のピットインで「一時的に稼げる秒数」には目もくれなかった。外的要因に惑わされることなく、自身の最速ドライバーと最速マシンがレース全体を通じて出すことができるラップタイムにただ集中。
そうして、序盤のミディアム、中盤のハードと、それぞれのタイヤの美味しい部分を“一滴”たりともも残すことなくタイムに変換していくフェルスタッペンの走りも、圧巻。
気がつけば。
金曜日予選、土曜日スプリントシュートアウト、土曜日スプリントレース、日曜日決勝レース。すべてで1位を総なめにした完璧なる週末。Red Bull Racing今季9戦全戦優勝。フェルスタッペン今季7勝目。
「こんな一方的レースはつまらない」と、そんな声も聞こえてきそうなシーズン。
いやいや……。断じてそんなことはなく。
規格外の若き天才が、新たなF1王朝時代を築きあげるこの瞬間。その歴史の目撃者になる。これもF1大河ドラマの大きな喜びのひとつであって。
というわけで。
次戦は伝統のイギリスGP。もしもRed Bull Racingが勝利を飾れば史上最多タイとなる11連勝に。そう、挑むのは1988年にマクラーレン・ホンダ王朝がセナとプロストと共に打ち立てた、あの「伝説の11連勝」だ。