【ハイパフォーマンスBEV比較】ポルシェ タイカン GTS対アウディ RS e-tron GT

プラットフォームを共用する「ポルシェ タイカン GTS」と「アウディ RS e-tron GT」のハイパフォーマンスBEV比較

「ポルシェ タイカン GTS」と「アウディRS e-tron GT」。ともにJ1と呼ばれる専用プラットフォームを強要するBEVだ。
「ポルシェ タイカン GTS」と「アウディRS e-tron GT」。ともにJ1と呼ばれる専用プラットフォームを強要するBEVだ。
EVでポルシェの世界観を見せてくれる「タイカン」。911同様豊富なラインナップを誇るが、中でもGTSはターボ系以外のトップグレードであり、硬派なスポーツグレードである。基本コンポーネンツを共有する「アウディ RS e-tron GT」とその資質を比較してみよう。(GENROQ 2023年11月号より転載・再構成)

Porsche Taycan GTS
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Audi RS e-tron GT

遅れて加わったGTS

タイカン GTSは最高出力は598PS、最大トルク850Nm。車重2.3t以上もあるが、0-100km/h加速3.7秒、最高速250km/hを誇る。

ポルシェのGTSはもともとシリーズ最強の自然吸気エンジンを積む最上級グレードという位置づけだったが、911を含めてほぼすべてのモデルがターボエンジンを搭載するようになってからはいささかポジショニングが曖昧になった。今ではターボ系に次ぐ高性能グレードで、ラインナップの最後に追加されるのがお約束である。BEVのタイカンでも同様で、トップモデルのターボS、それに続くのがターボと4S、それにベーシックな後輪駆動のタイカンというラインナップの真ん中に遅れてGTSが加わった。

ベースモデルのタイカンは後輪駆動だが、4S以上のモデルは前後アクスルにそれぞれ一基のモーターを搭載する4WDで、さらにGTSより上のモデルにはパフォーマンスバッテリープラスという容量93.4kWhのバッテリー(標準は79.2kWh)が搭載される。2基のモーターを合わせたGTSの最高出力は598PS、同じく最大トルクは850Nmにも達する。走行距離は504kmという。パナメーラよりもひと回りスリークなボディながら車重は約2.3tもあるが、強力なモーター2基と4WDの利点を活かして0-100km/h加速は3.7秒、最高速はリヤのみ2段ギヤボックスを持つせいでEVとしては異例の250km/hを誇る。ちなみにモデルに応じた順列に厳しいポルシェらしく、ターボS(761PS)は0-100km/h加速2.8秒で最高速260km/h、ターボ(680PS)は3.2秒と260km/hという具合にきっちり差が付けてある。

しなやかな走りと洗練されたブレーキ

タイカンGTSは当たり前だが静かに、滑走するように走り、曲がる。常にベクタリングが効いているような切れ味抜群のハンドリングには若干の違和感がないとはいえないが、追い込んでもまったく音を上げずただただ速い(オプションのリヤアクスルステアリングも装備)。EVはバッテリーの重さのせいか、荒れた路面ではブルブルとした振動が残ったり、ピッチングが気になるクルマもあるが、3チャンバー式エアスプリングと可変ダンパーを備えるタイカンGTSは、路面を問わずほぼ完璧にしなやかでフラットな姿勢を保つ。

タイカンはアウディRS e-tron GTと同じように(こちらはシフトパドル付き)コースティング優先で、アクセルペダルを戻しても前方から見えない手に引っ張られるようにスーッと惰性走行する。シフトパドルの備えはなく、回生レベルを上げたい場合はドライブモードをスポーツに切り替えるか、ステアリングホイールのボタンで回生モードを変えるしかない。

普通に考えれば、ポルシェこそシフトパドルを採用してもよさそうに思えるが、いわゆるワンペダルドライブには否定的で、しっかりフットブレーキを使う走り方を推奨するらしい。速いだけでなく、低速走行での微妙な加減速時や傾斜のついた駐車場などでのブレーキのフィーリングも気にならないレベルに洗練されているのがさすがである。そのブレーキは実際にはペダルを踏んでもその9割を回生ブレーキで賄っているという。

シャシーは共用でも異なる細部

一方のアウディRS e-tron GTは他のSUV系e-tronとは異なり、タイカンとともにJ1と呼ばれる専用プラットフォームを採用したBEVスポーツカーである。ほとんど5mの全長はタイカンよりわずかに長いが、2900mmのホイールベースはタイカンと同一だ。e-tron GTとその高性能版RS e-tron GTはどちらも前後2基のモーターによるクワトロである。RS e-tron GTは駆動用リチウムイオンバッテリーや800Vシステムをはじめとして、共同開発したポルシェのタイカンと基本的なランニングシャシーを共用するが、細部のスペックは当然ながら微妙に異なる。

e-tron GTはどちらの仕様も駆動用バッテリーの総電力量は93.4kWh、一充電当たりの航続距離は534kmと発表されている。2基のモーターを合わせた最高出力はRS e-tron GTで616PS、最大トルクは830Nm、車重は2330kgだが、0-100km/h加速は3.3秒、最高速は250km/hに達するという。

アダプティプエアサスペンションにオプションのオールホイールステアリングも備えるRS e-tron GTは、こちらもフラットな姿勢が特徴。山道でもまったく顎を出さないどころか、ぴたりと路面に張り付いて舗装面を削り取るように加速する。タイカンGTSほどではないけれど、4輪が個別に目一杯仕事をしているような、あるいは常にベクタリングが効いているようなシャープな切れ味はやはりEV独特である。これだけのタフなシャシーと緻密で洗練された制御を見せつけられると、BEVでもエンジン車でも自動車としての完成度は千差万別、と当たり前のことを改めて実感する。値段にはもちろん裏付けがあるのである。

REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/藤井元輔(Motosuke FUJII)
MAGAZINE/GENROQ 2023年11月号

SPECIFICATIONS

ポルシェ・タイカンGTS

ボディサイズ:全長4963 全幅1966 全高1381mm
ホイールベース:2900mm
乾燥重量:2295kg
タイプ:モーター
最高出力:440kW(598PS)
最大トルク:850Nm(57.6kgm)
トランスミッション:F1速/R2速
バッテリー容量:93.4kWh(パフォーマンスバッテリープラス)
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/45R20 後285/40ZR20
0-100km/h加速:3.7秒
最高速度:250km/h
車両本体価格:1913万円

アウディ RS e-tron GT

ボディサイズ:全長4990 全幅1965 全高1395mm
ホイールベース:2320mm
乾燥重量:2295kg
タイプ:モーター
最高出力:250kW(475PS)
最大トルク:830Nm(42.8kgm)
トランスミッション:F1速/R2速
バッテリー容量:93.4kWh(パフォーマンスバッテリープラス)
駆動方式:AWD
サスペンション:前後ウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/45R20 後285/40ZR20
0-100km/h加速:3.7秒
最高速度:250km/h
車両本体価格:1899万円

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

アウディ コミュニケーションセンター
TEL 0120-598-106
https://www.audi.co.jp/

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著者プロフィール

高平高輝 近影

高平高輝

モータージャーナリスト。カーグラフィック(CG)編集部に所属し、CG副編集長、NAVI編集長、カーグラフィ…