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Goodwood Revival Meeting 2023
グッドウッド・リバイバル開始から25年にあたる記念年
Long time no See.(久しぶり)──会場のあちこちでいろんな人と再会するたびに、そう声をかけられた。
思えばコロナ前最後にイギリスに行ったのは2020年2月のこと。グッドウッドには2019年のリバイバル・ミーティング以来、4年も行くことができなかった。しかしながら、目の前に広がる光景は以前のまま。変わったのは自分を含め、皆が少し歳をとったくらいだ。
実は今年は、第9代フレディ・リッチモンド侯爵が第2次大戦のエース・パイロット、トニー・ゲイズから「飛行場の外周路をブルックランズのようなサーキットにしたら面白い」と進言を受け、グッドウッド・サーキットを開設してから75年、その孫である第11代の現リッチモンド侯爵が放置されていたサーキットをレストアし、グッドウッド・リバイバルを始めてから25年にあたる記念すべき年である。
さらにポルシェの75周年、ロータスの75周年、マクラーレンの60周年、911の60周年、ジム・クラークのF1王座獲得60周年、ジャッキー・スチュアートの最後のF1王座獲得&引退から50周年など多くのアニバーサリー・イヤーを迎える当たり年でもある。
ヒストリックカー・レース史上初の代替燃料使用
そのため“フォードウォーター・トロフィー”が1968年までのショートホイールベース・モデルのみを対象とした911のワンメイク・レースとして開催されたほか、マーク1からタイプ92F1までが揃ったロータスのパレード、御年84歳のジャッキー・スチュアートによるティレル006のデモランなど、スペシャル・プログラムが用意され、いつも以上の盛り上がりをみせていた。
一方で新たな変化もある。
それはフォードウォーター・トロフィーに参加するすべての911に、ヒストリックカー・レースとして史上初めて代替燃料が使用されたことだ。以前からグッドウッドは自生の広葉樹の植林、リサイクル食用油やソーラー・ハイブリッド・パワーの利用、3.5mwのバイオマス廃棄物発電施設の設置、水のリサイクルなど、環境対策に積極的な姿勢をみせてきた。また7月のフェスティバル・オブ・スピードではセバスチャン・ベッテルが自身のウィリアムズFW14Bにサステナブル・フューエルを使用し、デモランを行っている。
ヒストリックカーを維持して走らせることこそサステナブル
今回使われたのはFIAの要件を満たした持続可能成分を70%以上含む合成燃料で、ドライバーとして参戦したチャーリー・マーチ卿(リッチモンド侯爵の息子)はこう話す。
「このような重要なレースに参加できて感激しています。ヒストリック・モーター・レースの未来を促進する上で、このレースは重要な役割を担っています。グッドウッドは、今後も代替エネルギーの使用を支持し、提唱していきます」
その言葉の通り、フォードウォーター以外でも、1920年代のマシンを対象としたラッジ・ウォットワース・トロフィーに参加したW.O.時代のベントレーの数台がシンセティック・フューエルという合成燃料を使用していたほか、来年以降はさらに多くのカテゴリー、マシンでの使用が計画されているという。
そこにあるのは、ヒストリックカーを残し、維持して走らせることこそが“サステナブル”であるという、彼らの強い意志だ。
これぞ新たなヒストリックカーのスタンダード
確かに今回、映画『フェラーリ』公開を記念して1960年代の250シリーズだけ(!)18台で競われたラヴァント・カップ、そしてACコブラやジャガーEタイプに混じり、日本からポルシェ906も参戦した恒例のRAC.TTレースなどを見ていて、エンジンが発するエキゾーストノート、振動、そして匂いが自動車を味わい、感じるうえで、欠くことのできない重要な要素のひとつであることを改めて実感した。
だからこそ、この内燃機を残そうという試みを通じて、新たなヒストリックカーのスタンダードができることを期待せずにはいられない。
REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/藤原功三(Kozo FUJIWARA)、藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
MAGAZINE/GENROQ 2023年12月号