【2024年大予言】輸入車に限らずクルマの価格は上がっていく?

「2024年クルマの価格が上がる?」輸入車に限らず価格は上がっていく、その理由

2021年4月に発表されたA6 e-tronコンセプト。
2021年4月に発表されたA6 e-tronコンセプト。
いまだに2025年、つまり来年の完全電動化を謳う自動車メーカーは多い。それを翻意するというのが昨年の予想だったが、実際はどうなった? そして2024年は自動車業界に激震が走る? モータージャーナリスト大谷達也が大胆に予想する。

内燃機関はこのまま残るか?

電動化を進める欧州自動車メーカー。だがその選択肢は多い方がいい。
電動化を進める欧州自動車メーカー。だがその選択肢は多い方がいい。

昨年のこのコラムでは、全面EV化を宣言した自動車メーカーが「やっぱり計画を見直します!」と言い出すのではないかと予想した私。残念ながら、そこまで旗色を鮮明にするメーカーは現れなかったものの、EU議会が「2035年以降もeフューエルを用いる場合は内燃機関搭載の新車販売を認める」との方針を表明したことで、自動車メーカーにとっては必ずしも「EV一本足打法」に頼らなくてもいい道筋ができあがりました。

興味深いのは、この発表を待っていたかのように内燃機関への期待を熱く語る自動車メーカーが登場したこと。私自身が取材した範囲でも、メルセデス・ベンツのチーフテクニカルオフィサーであるマーカス・シェーファーは「現時点でEVを選ぶ顧客はEVにしか関心がなく、エンジン車を選ぶ顧客はエンジン車にしか関心がない」と言明したり、BMWグループのオリバー・ツィプセ会長は私の質問に「われわれが内燃機関の開発を止めると言ったことは一度もない」と語気を強めたりと、それぞれの立場で内燃機関への期待を口にしていました。

このままでいけば、たとえ方針転換を明確に宣言しなかったとしても、なし崩し的に2035年以降も内燃機関を製造する自動車メーカーが現れそうな気配です。

年々上昇するコストの理由

規制によって高まる生産コスト。当然その負担はユーザーに転嫁される。
規制によって高まる生産コスト。当然その負担はユーザーに転嫁される。

さて、今年はどんな予想をしましょうか? 2023年12月20日、ダイハツは自社開発したすべての製品を一時出荷停止にすると発表しました。これは、安全性能・環境性能の試験内容について不正があったことが判明したために採られた措置ですが、自動車メーカーが一時的にせよ製品出荷を全面停止するという深刻な事態は、寡聞にして知りません。これは、安全性という自動車にとってもっとも大切な性能をないがしろにした結果といえます。

現代社会に生きる個人や団体が法令を遵守しなければいけないのはもちろんですが、そのいっぽうで、現在は、製品を開発する過程で自動車メーカーが守らなければいけない規制の数が驚くほど多くなっていることも事実です。その是非は別としても、規制をクリアする過程で発生したコストが、結果的にユーザーの負担となることは明らかです。言い換えれば、規制が厳しくなればなるほど、自動車のコストは上昇することになります。

その端的な例が、小排気量ディーゼルエンジンが市場からほぼ消えたことにあります。ディーゼルエンジンの排ガス規制が急速に厳しくなっていくなかで、各自動車メーカーは規制をクリアするために様々な後処理装置を装備せざるを得なくなりました。結果として、このコスト増を車両価格として転嫁できる高額車にだけディーゼルエンジンは生き残り、一部の例外を除いてBセグメントからディーゼルモデルは消滅してしまいました。

こうした過程で起きたのが、フォルクスワーゲン・アウディのディーゼルゲートだったといえなくもありません。この件に関して彼らを擁護するつもりはありませんが、開発陣は優れた製品を少しでも廉価で販売するために、違反に手を染めたという経緯があったようです。

サーマル・ウィンドウは違法か

自動車の価格が上昇する要因は多い。すでに多くに自動車メーカーが値上げしている。

実は、第2のディーゼルゲートとでもいうべき一大スキャンダルが、いまヨーロッパで耳目を集めています。これは「サーマル・ウィンドウ」と呼ばれているもので、ディーゼルエンジンの排ガス浄化装置を一時的に停止するソフトウェアの存在が問題視されているものです。

なぜ、このようなソフトウェアが組み込まれたのでしょうか? 外気温が極端に高かったり低かったりするとき、もしくは標高が著しく高い環境で排ガス浄化装置を作動させるとディーゼルエンジンがダメージを受ける恐れがあったため、これを防ぐ目的で、この種のソフトウェアが組み込まれたそうです。具体的には、気温が15℃未満ないしは33℃以上、もしくは標高で1000m以上とされているので、実際にこのソフトウェアが作動するケースはかなり多いように思えます。それでも、ドイツ連邦司法裁判所は「サーマル・ウィンドウはエンジンを守るために必要」との判断を2021年9月に下し、メルセデス・ベンツなどはこの判断を歓迎する意向を示していたのですが、2023年10月に欧州司法裁判所がサーマル・ウィンドウを違法と見なしたため、その対応に自動車メーカーも追われる状況となりつつあります。これを受けて、ヨーロッパでは早くも10万台単位のリコールが届けられるとの見通しが出ています。

いずれも私がなにかの判断を下すことはできませんが、自動車に対する法規制がここまで複雑化すると、その対処に必要となったコストは必ずユーザーが負担することになります。つまり、法規制によっても、今後、自動車の価格はどんどん高騰すると予想されるのです。それ以外にも原材料の不足や人件費の上昇、そして日本の場合は為替の問題などにより、自動車の価格が上昇する要因は数多く存在しており、2022年から2023年にかけても多くに自動車メーカーが値上げに踏み切りました。そして私は、この傾向が今後も続くと予想しています。というわけで、もはや予言ともいえない当たり前の現象ですが、2024年も自動車の価格はどんどん値上がりするでしょうと予想しておきます。

PHOTO/Audi AG

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…