自衛隊の裏側に迫る! 四輪ダブルウィッシュボーンサスペンションにインボードブレーキってどんなスポーツカー? それは高機動車です!!【モーターファンフェスタ 2023】

2023年4月23日(日)、静岡県の富士スピードウェイで開催された「モーターファンフェスタ 2023」は、国内外の自動車メーカーはもちろんパーツメーカーやショップなども出展し、さまざまなコンテンツが用意され2万6000人以上の来場者が訪れた。モーターファンフェスタおなじみの陸上自衛隊による車両展示は、今回7種類の車両が展示され大いに注目を集めた。今回はその自衛隊車両の足回りに注目してみたい。

2万6000人の来場者を集め盛況のうちに幕を閉じた「モーターファンフェスタ 2023」。会場となる富士スピードウェイは陸上自衛隊の演習場や駐屯地が近くにあることから、広報活動の一環としてモーターファンフェスタで車両展示を行っており、今年も7車種が用意された。

高機動車と並ぶGR86のD1車両。どちらもトヨタのクルマというのが共通項だ。自衛隊車両とD1マシンがサーキットのグリッドに並ぶのはモーターファンフェスタならではの光景と言えるだろう。

自衛隊車両は大柄で重量のある装輪装甲車を除き、展示だけでなくモーターファンフェスタの目玉コンテンツの1つ「スーパーグリッドウォーク」で富士スピードウェイを1周し他のクルマと並んでグリッドに着いた。カスタムマシンと肩を並べる自衛隊車両というのはなかなか見ることができないシーンだ。

高機動車ってどんなクルマ?

そんな自衛隊車両のうちの1台が「高機動車」である。主に陸上自衛隊が人員輸送用に装備する車両で、一般道路の高速走行性能とオフロード性能を兼ね備えた機動力に富んだ車両だ。CH-47JAヘリコプターによる空輸も可能で、迅速に自衛隊員を展開できる。災害派遣でも自衛隊員の足となり活躍していることから、テレビや現地で見かけた人も多いだろう。
防衛省での略称は「HMV(High Mobility Veheicle)」、広報用愛称は「疾風」だが、部隊内では「コーキ」と呼ばれて親しまれている。

幌もドア外し、フロントウインドウも倒してフルオープンで走る高機動車。車両から素早く展開するための状態だ。(PHOTO:陸上自衛隊)

高機動車はトヨタが開発し、製造は日野自動車が行っており、現在まで3000両以上が納入されているという。陸上自衛隊で人員輸送はもちろん牽引や武装型、通信型、レーダー搭載など派生型も多く、海上自衛隊でも使用されていたりするほど。
基本モデルの定員10名は小銃小隊1個小隊を収容する仕様だ。

高機動車
定員:10名
サイズ(全長×全幅×全高):4910mm×2150mm×2350mm
重量:2.61t
最高速度:125km/h
開発:トヨタ
製造:日野自動車

高機動車の詳細については、自衛隊に詳しい軍事ジャーナリスト・貝方士英樹氏による記事を参照するとよいだろう。

使えるヨンク! 非装甲の「高機動車」は人員等輸送用4WD【自衛隊新戦力図鑑|陸上自衛隊】

人員等輸送用の「高機動車」後部には約1.5トンの資機材を積載可能なほか、人員なら前後席合わせて8名を乗せることもできる。戦闘単位での移動に加え、火砲やトレーラーの牽引にも使われ、荷台に装備ユニットごと載せた派生車もある。高速道路や一般道路の走行性能は高く、オフロードでも優れた走破性・機動性を発揮する。使い勝手の良い4WDだ。 TEXT&PHOTO:貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

“高機動”を支える足回り

オンロードもオフロードもイケる高機動車の足回りがどうなっているのかが気になって、車体の下側を覗き込んでみた。幸い、車高が高くホイールハウスも広いので足回りがよく見えたのだが、なんとフロントもリヤもサスペンション形式はダブルウィッシュボーン! 四輪ダブルウィッシュボーンといえばスポーツカーや”走り”にこだわるクルマが採用するサスペンション形式だ。

高機動車の右フロントサスペンションを車両の前側から見たもの。

車体側からタイヤ側に伸びる上下のウィッシュボーン。ショックアブソーバーは上はサブフレームに固定され、上側のウィッシュボーンの間を通して下側のウィッシュボーンの前側に固定されているのがわかる。しかし、この向きで見る限りスプリングが見当たらない。

高機動車の右フロントサスペンションをホイールハウス、タイヤの上側から見る。

タイヤで全体は見えないが、ホイールハウスを覗き込むと上側のアームがちゃんとウィッシュボーンになっているのがわかる。そしてそのウィッシュボーンの後ろのアームから後方に向かって棒状のモノが伸びているが、これがスプリング……トーションバーのようだ。

左リヤサスペンションを車両後方から覗く。

リヤサスペンションはフロントと同じくダブルウィッシュボーン形式だが、スプリングはショックアブソーバーとセットになったコイルスプリングとなっており、見慣れた形になっている。
なお、ウィッシュボーンのアームやハブは前後共通で互換性があるという。整備性や部品調達に優れる自衛隊の装備らしい仕様だ。

インボードブレーキ採用でバネ下重量を軽減?

写真中央で反射している半円形のものがフロントのブレーキディスク。

下回りを覗いているとタイヤにブレーキが無いことに気が付く。合わせて、前後のデフとドライブシャフトの間にベンチレーテッドディスクが見える。これはつまりインボードブレーキということだ。
インボードブレーキの利点はバネ下重量の軽減によるフットワークの向上で、国産車では古くはスバル1000が採用していたり、やはり昔のレーシングカーで採用されているケースがあったが、整備性やコストの面から今では採用されるケースはほぼない。

リヤデフとドライブシャフトの間にブレーキディスクを配したインボードブレーキ。

高機動車の場合はバネ下重量の軽減というわけではなく、ハブリダクション機構でドライブシャフトからタイヤセンターを下方にオフセットすることで車高(最低地上高)を稼いでいる。

自衛隊の車両に詳しい人からすればこの仕様は何を今更な話なのかもしれないが、ヘビーデューティの極地である高機動車のようなクルマの足回りがスポーツカーと仕様上とはいえ同じ形式であり、それを目の当たりにしたのはなかなか新鮮な発見に感じられた。ちょっと違った視点から自衛隊車両を見てみるのも面白い。

高機動車が買えた? トヨタ・メガクルーザー

基本的に高機動車は自衛隊専用の車両である。しかし、高機動車を民生用に仕立て直したメガクルーザーが1996年に発売された。新車販売価格は962万円(後期型は980万円)で、同時期のトヨタ・センチュリーやホンダNSXのエントリーグレードより高価なクルマであった。

高機動車の民生版であるトヨタ・メガクルーザーで作られたJAF災害対策指揮車。

2001年まで販売され、1999年にはエンジンを変更するなどのマイナーチェンジも実施されている。とはいえ、乗用車としてはあまりに大きく高価なため、法人や官公庁(主に警察)がメインの購入先で、新車登録台数は130台くらいと言われている。

トミカなら高機動車が550円で手に入る!

自衛隊の装備である高機動車はもちろん手にいれることはできないし、トヨタ・メガクルーザーもすでに生産終了から20年以上経っている上に、新車登録台数で130台程度では中古車が流通することも極めて稀。たまに中古車情報サイトに掲載されることもあるが、価格は”ASK”となっていることが多く相場はあって無いようなもの。どちらにせよ実車を手に入れるのは現実的な話ではないだろう。

でも、トミカなら手のひらサイズの高機動車が550円で手に入る。トミカを眺めながら実車に思いを馳せるのもまた一興だ。

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ちなみに軽装甲機動車「LAV」の足回りは?

軽装甲機動車「LAV」

高機動車と同じく自衛隊員のアシとなる軽装甲機動車の足回りはどのようなものなのだろうか? ちょっと車両の下を覗き込んでみた。

フロントはなんとダブルウィッシュボーンサスペンションが採用されており、ショックアブソーバーにコイルスプリングを組み合わせていた。
リヤサスペンションはフロントほどよく見えなかったが、セミトレーリングアームとなっており、フロントと同じくバネはコイルスプリングだ。トーションバースプリングが多い走行車両にあっては珍しく感じられる。
なおブレーキホースはステンメッシュのように見える。

フロントサスペンション
フロントサスペンションとブレーキ
リヤサスペンション

実際の仕様はともかくとして、形式だけ見ればこちらもちょっと昔のスポーティカーのようだ。装輪装甲車とはいえいえ、このサイズだとまだ乗用車的な片鱗が感じられる。

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2023年4月23日(日)、静岡県の富士スピードウェイで開催された「モーターファンフェスタ 2023」は、国内外の自動車メーカーはもちろんパーツメーカーやショップなども出展し、さまざまなコンテンツが用意され2万6000人以上の来場者で大いに盛り上がった。そんなモーターファンフェスタの見どころのひとつが陸上自衛隊による車両展示だ。今回も7種類の車両が展示され、大いに注目を集めた。中でも経装甲機動車にはちょっとした遊び心も……。

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