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■トヨタとダイハツの共同開発、2代目パッソ/ブーン
2010(平成22)年2月15日、プチトヨタのキャッチコピーで人気を獲得したトヨタ「パッソ」とダイハツ「ブーン」が初めてのモデルチェンジで2代目に移行した。初代同様、トヨタとダイハツの共同開発車だが、開発段階から女性スタッフの意見を反映して主に女性向けのモデルとなった。


トヨタとダイハツが共同開発した初代
トヨタは、1997年にダイハツへの出資比率を引き上げ、ダイハツはトヨタの連結子会社になった。これを機に、両社は共同でリッターカー「パッソ/ブーン」の開発に着手。開発に際しては、トヨタが企画とマーケティングを、小型車の開発ノウハウに長けているダイハツが開発と生産を担当した。

パッソは、トヨタがダイハツに新型小型車を委託するという形でブーンとともに2004年にデビュー。一般的なOEM車でなく共同開発の兄弟車という位置付けだった。

パッソは、“トヨタ最小、プチトヨタ”のキャッチコピーとともに、丸みのある面構成にエッジの効いたキュートなスタイリングを採用。パワートレインは、1.0L直3 DOHCと1.3L直4 DOHCの2機種エンジンと電子制御4ATの組み合わせ、駆動方式はFFとフルタイム4WDが選べた。

使いやすくて運転しやすいパッソ/ブーンは、リッターカーとして存在感をアピールして大ヒットした。
女性目線で女性をメインターゲットにした2代目

2010年2月のこの日、初代と同様に共同開発された2代目パッソ/ブーンがデビューした。好評だった初代のイメージを継承し、開発段階から女性スタッフの意見に耳を傾け、女性目線を重視してメインターゲットは女性に設定された。
初代のプラットフォームを使って全長を40mm伸ばし、フロントピラーの形状を工夫するなどして、より良好な視界を確保。さらに、リバース連動助手席ドアミラーやバックモニターも設定し、女性にも運転しやすいコンパクトカーに仕上げられた。

パワートレインは、先代から受け継いだ1.0L直3 DOHC と、デュアルVVT-iを搭載した1.3L直4 DOHCの新エンジンの2機種に全車CVTを組み合わせ燃費向上が図られた。駆動方式は、初代同様FFとフルタイム4WDが選べた。また安全性を高めるVSC(車両安定制御)&TRC(トラクションコントロール)もオプションで用意された。
車両価格は、FFの1.0L仕様で標準タイプのパッソが100万~120万円、専用のフロントバンパー、ドアミラーなどを採用して上質感を持たせた「パッソ+Hana(プラスハナ)」が118.5万~129.5万円で、初代の人気を引き継いで販売は順調に滑り出した。
3代目パッソはブーンのOEMモデルへ、しかし生産終了
2010年にデビューした2代目も、トヨタとダイハツの共同開発車だったが、3代目はダイハツ主導で企画から開発、生産まで担当し、パッソはダイハツブーンのOEMモデルとなった。

そのため、3代目はダイハツの軽開発で培った低燃費技術が積極的に採用された。デュアルインジェクターを装着した高圧縮比の1.0L直3 DOHCエンジンやコーストストップ機能付きアイドルストップ、回生充電制御などのダイハツ独自の低燃費技術“e:Sテクノロジー”を採用することによって、ハイブリッドと軽を除くガソリン車でトップの燃費を達成した。

しかし、パッソの人気も2代目後半から登録車販売ベスト10に食い込むことが難しくなり、右肩下がりの状況が続いて結局2023年に生産を終了。2016年に登場したコンパクトハイトワゴンの「ルーミー/トール」と2020年デビューの「ヤリス」の影響を大きく受けたことが予想される。ルーミーは室内空間が広く居住性に優れている実用的なファミリカーとして、またヤリスはエントリーモデルとしての役割を担って大ヒットしており、パッソの一部のユーザーがルーミーとヤリスに流れたと思われる。
また市場の動きとして、軽スーパーハイトワゴンがコンパクトカークラスの市場を争奪していることも忘れてはならない。
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2代目パッソは、女性をメインターゲットにしたクルマづくりが行なわれたが、販売が低迷し始めたためか、3代目はベーシックに性別や年齢にこだわらないようなクルマづくりに変更された。ターゲットを絞るのは重要だが、絞りすぎると敬遠されることがある。そのあたりのさじ加減が難しいのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。