ジムニーを街中で1週間ほど試乗して、「かっこいいな」「でも、きっとオフロードにはいかないな」と思いつつも、「そういえば、オフロードでジムニーを試させてもらったことがあった!」と思い出した。
舞台はジムニーの走破性能を体感できるようにコースが設定された富士ヶ嶺オフロードだった。筆者は、オフロードのドライブは、メディア向けの試乗コースで体験させていただく以外は、ほぼなし、というオフロード素人である。
試乗車は、ジムニーXCの5速MTだ。
最初に見せてもらったのは、現行型で初めて装備された「ブレーキLSDトラクションコントロール」だ。
ジムニーは、前輪と後輪を直結したパートタイム4WDであるのが、ウリ。その直結式パートタイム4WDも、左右輪どちらががぬかるみや岩場などで空転してしまったら、もう一方の車輪(接地している車輪)の駆動力も失われてしまう。それを避けるために、フロント/リヤデファレンシャルにLSD(リミテッドスリップデフ)を装着して駆動力を確保する方法はもちろんあるが、悪路でない場面での走りやメインテナンスに難があった。
現行型ジムニーは、「ブレーキLSDトラクションコントロール」を装備した。これは「4L」モードのときに作動するシステムで、ESC(電子制御ブレーキ:Electronic Stability Control=メーカーによってはESP、VDCなど呼び方が違う)を使って空転したタイヤにブレーキをかけることで、もう一方の写真の駆動力を確実に確保する仕掛けだ。しかも、エンジントルクを落とすことがないため、極めて高い脱出性能を実現する。
実際のデモを見た。
すごい! これ、すごい。
「先代では、こういう場面ではどうしていたんですか?」と聞くと、「先代では、こういう場面は脱出できませんでした」という答だった。
正確には、テクニシャンの4WD遣いだと、右足でアクセルとコントロールしながら左足でブレーキペダルを踏みながら脱出することできるそうだが、4WD素人には無理な相談だ。
これが現行型ジムニーでは、いともやすやすとできるのだ。
登れない! 擦っちゃう! 打っちゃう!も……
こりゃ、登れないよ!
こりゃ、お腹擦っちゃうよ!
こりゃ、顎を打っちゃうよ!
という場面でも、優れたアプローチアングル、デパーチャーアングル、制定地上高のおかげで、何ごともなく走破できてしまうのだ。
このアプローチアングル/デパーチャーアングル/最低地上高の高さが、走破性の源泉だ
伝統のリジッドアクスルのおかげで、大きな対地クリアランスを確保できる。さらに強靱になったフレーム&ボディのおかげで、車室内は平和そのもの。
急な下りでは「ヒルディセントコントロール」のおかげで、安心してステアリング操作に集中できるし、「ヒルホールドコントロール」がついているので、急な登り坂での発進も楽々だ。MTでブレーキからアクセルに踏み替える際も、最長2秒自動的にブレーキをかけてくれるから、慌てる必要がない。
オフロードでの試乗で印象的だったのは、その強靱なフレーム&ボディだ。外から見ていると、「うわー、これ、走りきれないよ。中に乗っていたら酔ってしまいそうだよ」という場面でも、車室内は、至って平和。自信を持ってドライブできるのだ。絶対的にコンパクトなボディサイズと相まって、「ジムニーなら、どこへでも行ける!」と思わせてくれる。
世界中で高い支持を受けるジムニー。ジムニーでなければ行かれないし、ジムニーでなければ戻ってこられない場所が世界にはたくさんある。現行型ジムニーは、その走破能力に磨きをかけた。4WD素人でも、「どこへでも行ける!」気にさせてくれるのは、おそらく、このクルマだけだろう。