「新型シエンタ」に27インチ級ロードバイクを積んでみた 【スポーツ自転車積載チャレンジ:第6回 トヨタ・シエンタ編】

自転車好きジャーナリストの安藤眞が、さまざまなクルマにあの手この手で「愛車」を載せて積載性をチェックする「スポーツ自転車積載チャレンジ!」 第6回目は、人気の最新コンパクトミニバン「シエンタ」。全長の短いコンパクトミニバンでの積載性はどうなのか? 全国の自転車愛好家の皆さん、ぜひ参考にしてください。
REPORT:安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO:中野幸次(Nakano Koji)

トヨタ シエンタ Z(ガソリン 5人乗り・FF) 

全長4260mm 全幅1695mm 全高1695mm 車両価格2,520,000円

2022年8月に三代目へと生まれ変わったのが最新型のシエンタだ。新たにGA-Bプラットフォームを採用しながらもボディサイズはほぼ踏襲されており、全長4260mm、全幅5ナンバーサイズのコンパクトさが何より使いやすさにつながっている。コンパクトかつ広々した室内は子育てファミリーの大きな味方だ。

まさか、ロードバイクを丸ごと飲み込む?

まず前輪を外して積載。問題なく積めただけでなく、前席背もたれを使った固定も簡単。「これでいいじゃん」と思って全体を見回すと、上と後ろにけっこうな余裕が……。
前席背もたれの幅と、ロードバイクのハンドル幅は、けっこう相性が良い。特に僕のバイクはハンドル幅が420mm(中心間)と広めなので、たいていのクルマの背もたれは挟める。固定はヘッドレストのステーからできるので、簡単かつ安定感も高い。

以前、シエンタの兄貴分であるヴォクシーにロードバイクを積もうとしたが、僕のドラポジの後ろにまっすぐ載せると130mmぐらいはみ出てしまい、前輪を外さなければならなくなった。ヴォクシーの2列目ベンチシートは、座面を跳ね上げてから前にスライドさせてラゲッジを拡大する方式なので、折り畳んだシートがけっこう厚く、ラゲッジの前後長がそれほど大きく取れないからだ。

フロントフォークの下は何かで養生したほうが良さそうだが、ハンドルが前席背もたれに引っかかっているので、実際にはフォークの先にはほとんど荷重はかかっていない。フォークエンドサポートを使うなら、前席背もたれは利用せずに、もう少し後ろに積むほうが良さそう。

今回のシエンタは、そのヴォクシーより全長が435mm短いから、丸ごと載せるのは端から諦め、前輪を外すパターンからトライ。N-BOXのときのように、前席背もたれをハンドルで挟んだら、余裕で載ったし、安定感も高い。フロントフォークの固定具を使ってもいいし、前後を逆にしても積めそうだ。

「タイヤが付いたままじゃ無理だよなぁ」と思ったら、ほぼピッタリ収まった。バックドアも閉まるし、サドルの高さも問題ない。前席スライドとリクライニングを調整すれば、バイクは前後に動かなくなる。左右方向はアシストグリップとトップテザーアンカーからストラップで引ける。

ロードバイク積載適正は十分、高いな、と思いつつ、後ろと天井に余っている空間を見たら、意外と広い。もしかして、前輪は外さずに丸ごと積める? いやいや、さすがにバックドアが閉まらなくて、ハンドルを切らないと積めないんじゃないかと思って試してみたら、なんとピッタリ積めてしまったではないか!

5人乗り仕様は後席がダイブダウン格納できるため、ラゲッジフロアは低く平らにできる。まるで自転車を積むための仕様のようだ。

しかも、壁側に寄せればサドルが天井に当たるし、後席アシストグリップの位置がハンドルステムの位置とピッタリ。ここを縛ってしまえば固定も完璧だ。もう少しサイズが小さいと、サドルは天井に当たらないし、アシストグリップも遠くなってしまうが、壁側に立てかけることはできるし、2列目シートの背もたれ裏についているチャイルドシートのトップテザーアンカーが、うまいことロープフックに使用できる。

僕のバイクのサイズなら、アシストグリップにハンドルステムを縛るだけで固定できる。小さいサイズでも、コレと後席背もたれに付いているトップテザーアンカーを使えば固定は簡単。

いやいや、これは素晴らしい。5人乗り仕様限定とはいえ、こんな小さいボディでロードバイクが丸ごと入ってしまうとは! うまくレイアウトすれば、3台+3名も可能かもしれない。マジでちょっと欲しくなったゾ。

1台、積んだ程度では、まだまだ余裕あり。3台+3人でもイケるのではないか? こりゃ真剣に購入を考えたほうがいいかも!?

積載自転車の寸法図

■第1形態 完成車状態 長さ1680mm 高さ1000mm 幅445mm

車載時に最大のネックとなるのが、サドルの高さ。全長はフレームサイズが変わってもそれほど大きく変化しないのがロードバイクの特徴。身長150cmぐらいのライダーのサイズでも、短くなるのは40mm程度だ。

■第2形態 前輪を外してホルダーに固定 長さ1510mm 高さ965mm 幅445mm

前輪を外せば全長は170mm短くなるが、サドルの高さは35mmしか低くならない。サドルを外せば高さは760mmまで下がるのだが、ロードはミリ単位でセッティングを出すし、真直度を合わせるのも面倒なので、サドルはなるべく触りたくない。

■第3形態 前後輪を外し、後輪はリヤエンドサポートで保持 長さ1230mm 高さ880mm 幅445mm

前後輪を外せば全長は450mm短くなるが、高さを下げるのは前ギヤ(46t)が限界を決めるので、120mmしか低くならない。サドルを外すとハンドルステムがいちばん高くなり、710mmとなるため、車載可能なモデルは増えそう。

■第4形態 前後輪外して倒立 長さ1115mm 高さ870mm 幅445mm

このサイズなら、セダンのリヤシートにも積めてしまう。大きめのセダンなら、トランクにも入れることができるだろう。実際、僕の仲間は、ランエボやアテンザ、フィアット500にこうして積んでやってくる。自転車乗りは、運転が楽しいクルマ好きが多いのだ。

著者と自転車のプロフィール

メカニズムを得意とするジャーナリストの安藤 眞氏は、40年以上も自転車を趣味とし、カングーに愛車を積んでサイクリングを楽しんでいる。身長181cm。フレームを購入して自分で組み上げた写真のロードバイクはサドル高が1mあるから、この自転車が載るクルマなら、アナタの自転車も積載できる可能性が高いはず。


ブリヂストンサイクルのNEO-COTというフレームを購入して、自分で組み上げた。92年発売のスチール製(CrMo鋼)だが、当時としては画期的なもので、ハイドロフォーミング製法で接合部の形状が最適化されている。それを見た僕は「スチールフレームの最高到達点」と直感して即購入。部品を交換しながら30年間、乗り続けている。その後、アルミフレームやカーボンフレームに押され、2021年を最後に絶版となってしまった。ホイール径は700C。


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著者プロフィール

安藤 眞 近影

安藤 眞

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェク…