ちょうど8年前の2013年9月、カリフォルニアで行なわれた日産のグローバル試乗会「NISSAN 360」にJUKE-Rはいた。もちろん、短時間だが試乗もできた。欧州日産が主導して開発したJUKE-Rについては写真や映像で見聞きはしていたが、実際にこの眼で見るのは初めてだった。
このJUKE-Rは、2011年から日産が開発したモンスターSUVだ。モータースポーツ界をリードするRML(レイ・マロック)社が、欧州日産テクニカルセンター(NTC-E)のアドバイスを受けながら、英国で製作した。22週間かけて、右ハンドルと左ハンドルの2台が作れた。
ロールケージを組み込んで剛性をアップしたボディにGT-Rの3.8ℓV6ツインターボ、VR38DETT型を詰め込んだ。パワースペックは492ps。GT-Rと同じくトランスアクスルで、6速ギヤボックスはトランクフロアの下。もちろん、4WDである。最高速度257km/h、0-100km/h加速は3.7秒という「クレージー」なSUVだった。なんといっても、オリジナルのジュークは1.6ℓ直4ターボで214ps/250Nmなのだから、デビュー当初のスペックとはいえ、GT-Rのエンジンは、2倍以上パワフルなのだ。
ボディサイズは、全長4135mm、全高1575mm、ホイールベース2530mmは市販モデルと同じだったが、全幅は1765mmから1910mmまで拡大されていた。フレア状のホイールアーチには20インチのRAYS製鍛造アルミホイールを組み込まれていた。
もちろん、市販モデルではなかったが、どうやら3台製作されたようで、5800万円以上で販売されたという。
というわけで、2013年9月にこのJUKE-Rに試乗したことを思い出した。見るからにワイドで、ごっついロールケージ(FIAの安全基準を満たしたもの)がタダ者ではない雰囲気が醸し出していたJUKE-R。恐る恐るコックピットに収まって、エンジンをかけたら、もうエンジンのフィーリングはGT-Rそのものだった。広い試乗会場(たしか飛行場跡だったような)だったので、遠慮なくアクセルを踏んでみた。ホイールベースが短いこともあってか、GT-Rよりも豪快な加速感があった。重心が高いからというのもあったのかもしれない。
その後、2015年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードに出るために、エンジンパワー600psまで上げた「JUKE-R2.0」製作された。欧州日産主導のまさにクレージーな企画だったJUKE-R。環境規制が厳しくなり、電動化へ大きく舵を切らなければならなくなった自動車産業の現状を考えると、こんな企画は、もう出てこないかもしれない。