スバル「XV」から「クロストレック」へ……インプレッサの派生モデルから始まる歴史と進化を振り返る! 「グラベルEX」って覚えてますか?

2022年の発売から話題のスバルの新型「クロストレック」は、先代「XV」から、フルモデルチェンジに合わせて車名を世界共通としたことは、すでに多くのメディアでも紹介されている。XV/クロストレックのシリーズは、ベースとなるのはもちろんインプレッサだがインプレッサの派生モデルではなく独立車種となってからすでに長い時間が経っている。そんなXV/クロストレックの歴史を、自他ともに認めるスバルマニア“いもっち”こと井元貴幸氏が振り返る!

2022年にワールドプレミアされたスバルのニューモデル「クロストレック」は、国内でもここ最近着々と納車が進んでおり、街中でもちらほら見かけるようになった。現時点では、スバル車の中でも人気の高いモデルとして、受注が多いモデルとなっているそうだ。

SUBARU クロストレック Limited 車両本体価格:332万2000円(メーカーオプション39万0500円)計371万2500円

そんなクロストレックだが、ルーツはインプレッサをベースとした「XV」が始祖にあたるのだが、そんなクロストレックの歴史を振り返ってみよう。

インプレッサの派生グレードとして登場した「XV」

XVを名乗った最初のモデル、は2010年に三代目インプレッサをベースにしたモデルとして「インプレッサ XV」の名前で登場。サイドクラッディングや専用フロントグリル、ルーフレールなどを装備し、内外装を専用のSUVテイストとしたモデルだった。
パワーユニットは、1.5Lと2.0LのDOHC自然吸気エンジンに、2.0Lは4AT、1.5Lには4ATと5MTを設定。さらに各モデルにFFとAWDを設定する充実のラインアップとなっていた。

GH型インプレッサに追加されたSUVテイストグレード「インプレッサXV」。

”テイスト”と記したのはこのGH型インプレッサXVは最低地上高が155mmと、ベースのインプレッサと同一だったためである。ちなみに輸出仕様では一部の仕向け地に最低地上高を160mとしたモデルも存在したが、こちらは該当国の道路事情などを反映したもの。
エンジンは1.5Lが国内専用で、輸出仕様には2.0L DOHC自然吸気に加え、EE20型ボクサーディーゼルターボ搭載車も存在したため、ボンネットダクトを有する仕様も海外では見受けられた。

ボンネットにWRXのような大型のインテークダクトを備えた海外仕様のインプレッサXV。EE20型ボクサーディーゼルターボを搭載することからダクト付きのボンネットが採用されている。

しかし、ここまでは良く語られるインプレッサXVの”なんちゃってSUV”という要素だが、実はこのモデルは、もっと奥深い意味合いを持っていた。
車高こそベースモデルと同一ながら、サスペンションは専用セッティングでリヤスタビライザーを追加している点に注目したい。クロスオーバーモデルというコンセプトながら、サスペンションのセッティングは硬めでスポーティな仕様としており、走りも楽しめるモデルという要素があったのだ。

インプレッサ「1.5i-Sリミテッド」(GH型)
インプレッサ「2.0i-Sリミテッド」(GH型)

このサスペンションはGH型インプレッサの最終仕様に設定された特別仕様車「1.5i-S リミテッド」「2.0i-Sリミテッド」にスポーツサスペンションとして装備されるほどの実力を持つセッティングとなっていた。

“走り”も楽しめるクロスオーバーがクロストレックのルーツ

走りも楽しめるクロスオーバーというコンセプトは、初代インプレッサスポーツワゴンに設定されていた「グラベルEX(エックス)」にも通じる世界観で、スバルらしいモデルと言えるだろう。
グラベルEXはWRX系に搭載されていたEJ20型DOHCインタークーラーターボのエンジンを組み合わせることで、ラリーで鍛えたオフロード性能をハイパフォーマンスエンジンで満喫できる性能を備えていた。

インプレッサWRXによるWRCでの活躍もあり、これまで日本ではあまりなじみのなかった「グラベル(砂利道、未舗装路)」という言葉をモデル名としている。「GRAVEL EXPRESS」。

コンセプトや狙いこそ違えど、スバルのコンパクトクロスオーバーという点では、クロストレックの最初のルーツともいえるだろう。

インプレッサの派生グレードから独立モデルへ

XVのベースとなるインプレッサがフルモデルチェンジを受け、XVも2012年にフルモデルチェンジ。GP型へと進化すると同時に、車名もグローバルでは「インプレッサXV」から「SUBARU XV」へと変更された。それだけにXVの初代モデルはGP型からという見方もある。ただし、日本ではGP型でも変わらず「インプレッサXV」の車名で販売された。
フルモデルチェンジにより最低地上高は200mmとし、全車がAWD、2.0L DOHC自然吸気エンジン、リニアトロニックCVTのみの設定で、非常にシンプルでわかりやすいラインアップとなった。

車名をインプレッサXVからスバルXVへと変更。インプレッサ派生グレードから独立車種となった。

走破性も最低地上高がアップしたことで本格的なSUV性能を有し、その実力はスバルの冬季イベントとしてお馴染みだった「ゲレンデ・タクシー」でも、来場者を乗せて雪の登り傾斜を余裕で駆け上るほどだった。
GP型XVでは専用オーバーフェンダーや前後バンパーなど、SUVらしさを追求し、独特のデザインの専用ホイールや、多彩なボディカラーを設定したエクステリアと、イメージカラーであるオレンジのステッチなどを使用したオシャレなインテリアにより人気を集めた。

独特のホイールデザインでSUVらしさを強調。
スバルの安全イメージを牽引するアイサイトはVer.2を搭載。

さらに登場時からスバル独自の運転支援システム「アイサイト(Ver.2)」(後期型はVer.3)を搭載したグレードを設定したことも人気を加速させた。

専用セッティングの上級モデルとしてハイブリッドも初登場!

スバルXV登場の翌年の2013年にはスバル初のハイブリッドモデルとして「XV HYBRID」を追加設定。XVシリーズの最上級モデルという位置づけで、質感の高い専用内装に加え、ハイブリッド車でも走りを楽しめるモデルとして、クイックステアリングギアレシオや専用のサスペンションなどが与えられた。

このXV HYBRIDをベースにSTIがてがけたコンプリートカー「XV HYBRID tS」が2016年に追加された。フレキシブルタワーバーをはじめSTIならではのアイテムを装備。専用セッティングのサスペンションは静粛性向上にも一役かっている。また、内外装はXVのPOPな印象をより強調した専用カラーやデザインを採用。

XV HYBRID tS
XV HYBRID tSのインテリア
XV HYBRID tSのインテリア

STIコンプリートカーの持つスポーティなイメージをいい意味で裏切る斬新な手法が特徴だ。まさにGP型XVの最強モデルといえるだろう。

新プラットフォーム採用でクラスを超える走りクオリティを実現

2017年にベースとなるインプレッサのフルモデルチェンジに続きXVもGT型へ進化。最大のトピックともいえる「Subaru Global Platform=SGP」を採用することで、操安性や静粛性などを含めた動的質感が飛躍的に向上したこと。SGP採用によりクラスを超えたフィーリングを手に入れたことでGP型を超える人気を博した。

XVのSubaru Global Platform=SGP

アイサイトは従来のVer.2から操舵支援機能などを追加したVer.3を搭載。電動パーキングブレーキの採用により停止保持機能も追加され、より扱いやすくなっている点も特徴だ。
パワーユニットはFB16型1.6L DOHCエンジン搭載車を新たに設定したことで、リーズナブルさも加わりより幅広いユーザーから支持された。

2017年、インプレッサに続きXVもフルモデルチェンジ。

2018年にはハイブリッドモデルの「Advance」を追加。先代のXV HYBRIDのパワートレーンをベースに制御の見直しやバッテリーをニッケル水素からリチウムイオンへ変更。新たに「e-BOXER」の愛称が与えられた。また、SUV性能も1.6Lモデルを除き「X-MODE」が搭載されるなど、兄貴分のフォレスターにも引けを取らない本格的な走行性能にも、磨きをかけた。

「Advance」に搭載された「e-BOXER」。
「e-BOXER」によるシンメトリカルAWD。

ちなみに北米では同年にプラグインタイプのストロングハイブリッドモデル「クロストレック・ハイブリッド」を発売。国内仕様のマイルドハイブリッド方式のe-BOXERとは全く異なるシステムで、いわゆるトヨタ式と言われるTHS2をベースとしたものだが、水平対向縦置きエンジンのAWD専用に新開発されたもの。現時点では未導入だが国内展開を熱望する声も多い。

北米で販売されたクロストレック・ハイブリッド。

2019年の改良モデルではアイサイトをVer.3からツーリングアシストへ進化させ、X-MODEもSNOW/DIRTとDEEP SNOW/MUDを切り替えできる2モードとなった。
2020年には大幅改良モデルを発売。ホイールやフロントグリルなどの意匠が変更されたほか、サスペンションセッティングを変更。2.0Lモデルには「e-Active shift control」と呼ばれるCVTの新制御を採用したことでSUVでも気持ちの良い走りに磨きをかけた。

2020年の大幅改良モデル
「e-Active shift control」

そして「クロストレック」へフルモデルチェンジ

2022年に登場したクロストレックは実質XVの後継モデルでありながら、フルインナーフレーム構造の採用や、3眼カメラによる新世代アイサイトの搭載、完全新設計のシート構造など全面刷新に相応しい充実した内容となっている。クロストレックへと車名を変更しながらも、これまでのXVが磨いてきた進化の歴史があるからこその完成度の高さといえるだろう。

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著者プロフィール

井元 貴幸 近影

井元 貴幸

母親いわくママと発した次の言葉はパパではなくブーブだったという生まれながらのクルマ好き。中学生の時…