【新型モデルは“買い”か?】N-BOXフルモデルチェンジ、旧型オーナーは買い替えるべきか?

日本一売れているクルマ「N-BOX」が3代目へとフルモデルチェンジ、10月6日より発売開始となった。売れているクルマのモデルチェンジは難しいといわれるが、はたして新型N-BOXのスタイリングはキープコンセプト、パワートレインも基本はそのままに洗練させるという内容になった。フル液晶メーターやコネクテッド機能など進化している面もあるが、非常に手堅いモデルチェンジになったといえる。では、旧型N-BOXのオーナーは新型への乗り換えを検討する必要はないのか? 気になるファクターに絞って、考察してみよう。

REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:本田技研工業(Honda)

スタイリングはキープコンセプト、ハードウェアはキャリーオーバー

新型のN-BOXカスタムは、押し出しの強さから品格へとキャラを変えてきた

ホンダの国内販売において屋台骨を支える存在「N-BOX/N-BOXカスタム」がフルモデルチェンジを果たした。すでに夏にはスタイリングを公開していたが、従来モデルのセールスが勢いを失うことはなく、2023年度上半期(4月~9月)だけで10万409台もの新車販売という実績を残した。言うまでもなく、これは同時期における国内新車販売のトップである。

フルモデルチェンジ直前でも高い人気を維持するほど従来型N-BOXの人気は高かった。逆にいえば、新型N-BOXのスタイリングを見て、あえて旧型を選んだオーナーも存在していたのかもしれない。事実、筆者は新型N-BOX関係の動画を10本近く公開しているが、そこには「旧型のほうがいい」、「新型はコストダウンしているように見える」といったコメントもついている。もちろん、全体にソフィスティケートされた新型を評価する声もあるが、クルマ業界でおなじみの「最新こそ最良」という風にすべてのユーザーが捉えているわけではなさそうだ。

おそらく、その理由のひとつにはN-BOXカスタムのイメージチェンジがあるだろう。

軽スーパーハイトワゴンに限らず、いわゆる「カスタム」系モデルにはメッキがギラギラとしていて押し出しの強いマスクが求められる傾向は強い。新型N-BOXカスタムは、そうしたトレンドへのチャレンジとしてメッキを最小限に押さえ、品格を表現するという新しいカスタム像を提案している。筆者は、こうした提案は時代の少し先を行っているもので、数年後には評価されると感じているが、いまを見ているユーザーからすると物足りないというのも理解できる。

また、メカニズム的にいえばプラットフォーム、パワートレインとも基本的にキャリーオーバーというのも物足りない印象を生んでいるかもしれない。2023年にフルモデルチェンジするクルマであれば、軽自動車であってもマイルドハイブリッドなどの電動化は期待したいものだが、新型N-BOXについては全体的なブラッシュアップにとどまっている。それでも、NAエンジン車(FF)のWLTCモード燃費は、従来型の21.2km/Lから21.6km/Lへと向上している。

ちなみに、N-BOXのNAエンジンには従来型からホンダ伝統のVTECテクノロジーが採用されているが、そうした部分は新型でもしっかり受け継がれている。

標準車「ファッションスタイル」は実質的な値下げに見える

ファッションスタイルの価格はFFで174万7900円。専用ボディカラーも追加コストなしとなっているのはうれしい。

とはいえ、2代目N-BOXをデビュー当初に購入したようなオーナーで、N-BOXのパッケージングが気に入っているのであれば、新型への買い替えを検討するのは十分にアリだろう。というのも、2代目N-BOXが電子パーキングブレーキを採用したのはモデルライフが後半になってから、2021年12月に実施されたマイナーチェンジであり、それ以前のモデルについては足踏み式パーキングブレーキだからだ。新型への買い替えで利便性が上がるのは確実といえる。

また、新型N-BOXではフロアカーペットやルーフライニングの防音性能を向上させているという。新型の開発テーマとして、ニッポンのファーストカーを目指すという思いがあったという話も聞くが、まさに軽自動車の常識を超えた快適で静かなキャビンが期待できるというわけだ。リヤシートの座り心地の改善も含めて、従来型オーナーが乗り比べても進化が感じられるのではないだろうか。

さて、新型N-BOXの価格帯は標準系が164万8900円~188万1000円、カスタム系が184万9100円~236万2800円となっている。純正アクセサリーで9インチ画面の専用ナビをつけると250万円をゆうに超えてしまうような価格になっている。エントリーグレードが廃されたこともあって、全般的に価格が上昇したように見えるが、じつはお買い得に感じるグレードもある。

それは標準系に設定される「ファッションスタイル」だ。

オフホワイトのドアミラーやアウターハンドル、専用の3トーンホイールキャップを与えられ、さらにイメージカラーのオータムイエロー・パールをはじめ3つの専用色を用意するファッションスタイルの価格は、FFで174万7900円、4WDは188万1000円となっている。

装備内容が異なるので単純比較はできないのだが、従来型の標準系・NAエンジンに設定されていた「コーディネートスタイル」の価格は、FFで181万9400円、4WDは195万2500円だった。商品企画としては同等といえるグレードを比較すると、じつは新型N-BOXのほうが手ごろになっているのだ。軽スーパーハイトワゴンで180万円前後という価格は、絶対的には安いとはいえないかもしれないが、ファッショナブルなN-BOXとしては十分に魅力的でリーズナブルといえる。

2代目N-BOXの標準系モデル。あらためて見ても完成度は高い。

まとめ:スタイリングの狙い「シンプルで上質なたたずまい」が気に入れば買ってもよし!

N-BOXの特徴である「塊感」を強めつつ、バンパー形状によりスタンスも強めたスタイリングだ。

旧型N-BOXのオーナーが新型への乗り換えを検討すべきかどうか、あらためて整理してみよう。

シャシーやエンジンといったハードウェアは基本的にキャリーオーバーとなっている。全体にブラッシュアップされているが、圧倒的に燃費が良くなっているなどの改善があるわけではない。2代目の走りに不満がないのであれば、新型への乗り換えを検討しなくてもよさそうだ。

とはいえ、静粛性や走行フィールなどの進化をしていないわけではない。もう一段上のN-BOXに乗りたいという思いがあるならば新型への乗り換えを考えるというのはアリだろう。

値段については事前のウワサほど上がっていないという印象を受ける。旧型となった2代目N-BOXも相変わらず高いリセールバリューを維持しているので、それを活かしてはやめに新型に乗り換えるというのは満足度を考えると経済合理性の高い判断となるかもしれない。

またグレードによっては従来よりお買い得に見える部分もある。純正アクセサリーとして8インチ画面のディスプレイオーディオが新設定されたこともあり、トータルでの乗り出し価格は従来型よりも抑えることが期待できる部分があるのも新型N-BOXの特徴だ。

最後にスタイリングについて。

世間的には新旧N-BOXのフォルムはほとんど変わっていないという評価が多いようだが、スタイリングの作り方はまったく違うと感じる。2代目N-BOXはボディをワイドに見せるような演出だったが、新型N-BOXでは踏ん張り感を強く表現しているように見える。新旧を並べてみれば、まったく違う印象を受けるであろうし、おそらく新型のほうがボディがスラっと長くなっているように見えるはずだ。

その点において、旧型オーナーであれば新型N-BOXが展示されている販売店に愛車を乗っていけば並べて見比べることができる。その上で、新型のスタイリングに魅力ありと感じたならば、納得の買い替えとなるのではないだろうか。

「いいね、この感触」と思わせるフィール|ホンダ新型N-BOXが発表

ホンダは3代目にあたるN-BOX(エヌボックス)を10月5日に発表した(発売は10月6日)。発表に先立ち、ホンダのテストコースでノーマルとカスタムの新旧4台を乗り比べる機会を得た。ひと目でN-BOXとわかるデザインを採用しながらも「新しく」なり、中身も大きな進化を遂げた新型N-BOXを、モータージャーナリスト・世良耕太はどう見たか。 TEXT&PHOTO:世良 耕太(SERA Kota) PHOTO:HONDA

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…