え、鉄道車両みたいなクルマって何? 鉄道の安全運行を守るアイツも『トミカ』に! トミカ × リアルカー オールカタログ / No.17 いすゞ エルフ 軌陸車

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?

No.17 いすゞ エルフ 軌陸車 (サスペンション可動/ブーム伸縮・上下・旋回//鉄輪可動・希望小売価格550円・税込

2023年10月の第三土曜日に、それまでの『トミカ』の『No.17 フェラーリ ローマ』に代わって登場したのが『No.17 いすゞ エルフ 軌陸車』です。軌陸車(きりくしゃ)とは、軌道(きどう)=(主に列車が通る)レールと陸地の両方を走ることができる自動車のことで、軌道の「軌」と陸地の「陸」をとって名付けられた車種名です。

大雑把に言えば、近年話題の軌道と道路の両方を走ることができるバス、デュアル・モード・ビークルも軌陸車ということになりますが、一般に軌陸車は鉄道保線や電線工事に使用される保守用車のことを指します。デュアル・モード・ビークルは主に人を運ぶ車両なので「乗り物」という意味合いの英語である「ビークル(Vehicle)」を用いて区別しているというわけです。

No.17 いすゞ エルフ 軌陸車 箱絵

さて、鉄道の線路は重量のある列車が走行するうちにレールのズレや摩耗が生じてしまいます。これを放置しておくと、最悪、脱線事故につながりかねません。そこで定期的に検査や補修、修繕を行ない、線路の安全性を保ち続ける必要があります。また、電車を走らせている路線では、空中に張り渡された電線――架線――が切れていないか、信号設備が壊れていないかなどを点検し、必要があれば修理します。このような作業を保線と呼びますが、そのために必要になるのが軌陸車なのです。

軌陸車(軌陸車テックの三転ダンプ)が鉄輪をおろして軌道に乗る様子。(PHOTO:軌陸車テック)

保線用作業車としては、まず、保線用鉄道車両があります。しかし、保線用鉄道車両は終電が通過してから車庫を出発して保守点検の編場へ向かうため、どうしてもこの間の移動時間がかかってしまいます。保線作業が行なえるのは終電から始発までの間の限られた時間しか無いため、1分1秒も無駄にはできません。そこで軌陸車の出番です。軌陸車は自動車として道路を移動してあらかじめ現場付近に待機します。終電が通過するとすぐさま、軌陸車は現場のもよりの保線部門敷地や踏切から、装備された鉄輪を下して鉄道車両となり、軌道に乗り入れて現場に急行するのです。

軌陸車は基本的にトラックやダンプカー、あるいはクレーン車などをベースに、軌道走行用の装置を付加する形で作られます。道路上はベースとなった車両同様にタイヤで移動する特種用途自動車あるいは大型特種用途自動車となります。軌道上では装備した鉄輪を展開してレールに合わせて鉄道車両のように走ります。この時の駆動方式には、レール上に乗った自動車の駆動輪でそのまま移動させる方式のものと、レールに合わせた鉄輪を油圧モーターなどで駆動させる方式のものがあります。

鉄道用平ボデートラック(RT型)(PHOTO:軌陸車テック)
軌陸ダンプカー(PHOTO:トノックス)

また、軌陸車と言っても様々な種類がありますが、代表的なところでは一般的なトラックをはじめ、ダンプカー、高所作業車、クレーン車、延線巻き取り車、穴堀建柱車(ポールセッター)があります。

トラックは主に保線作業機材の運搬に使われますが、同時に効率よく作業員も運びたいため、4枚ドアのダブルキャビン・タイプのものが多く用いられています。

ダンプカーは土木作業を要する保線現場での土砂運搬に用いられます。現場は狭いことが多いため、後ろだけでなく、左右にも荷台を傾けることが出来る三転ダンプカーが多く用いられています。

垂直式作業台型の高所作業車。(PHOTO:軌陸車テック)
鉄道用9.9mバケット式高所作業車。(PHOTO:軌陸車テック)

高所作業車は主に架線の点検や補修に用いられますが、広く大きな作業台が垂直にジャッキアップされる構造の垂直広範囲作業台付きのものと、クレーンの先にバケット(かご)が付いたバケット式のものに大別されます。『トミカ』の『No.17 いすゞ エルフ 軌陸車』は、この高所作業車をモデルとしているようです。ただしクレーン・ブームの先に広範囲作業台(デッキ)を装着し、なおかつクレーンの回転台がトラックの荷台の前方部分に位置するという少し珍しい形の高所作業車となっています。

クレーン車は大きな資材の積み下ろしや架線工事の際に用いられますが、クレーン車と言っても自走式クレーンであるラフテレーンクレーンではなく、キャビンと荷台の間に小型のクレーンを装備したクレーン付きトラックが広く用いられています。

延線巻き取り車は架線などのケーブルを展開したり巻き取ったりする、大きな巻き取りリールやウインチを装備したトラックで、架線工事の際に用いられます。

穴堀建柱車は、電柱やトランス設置のための柱(ポール)を建てるために用いられる、掘削機の付いたクレーン車です。電柱を建てるために用いられると同時に、電柱そのものやトランスを吊り上げて運ぶ際にも用いられます。

『トミカ』の軌陸車のベース車両は、定評のある小型トラック、いすゞエルフの先代モデル(6代目)が選ばれている。

軌陸車は様々なメーカーで製作されていますが、基本形はあるものの、実際にはそれを使用する鉄道会社にとって使いやすい形が異なるため、実質的にはオーダーメイドの特殊作業車と言っても良いものとなっています。

いすゞエルフには、元から様々なバリエーション・モデルが用意されている。

『トミカ』の『No.17 いすゞ エルフ 軌陸車』も、そんな実情が反映されたものとなっており、車体には定評のあるいすゞの小型トラック、エルフの6代目モデルが用いられ、おそらく10m級のクレーンの先にデッキを装着した高所作業車となっています。『トミカ』の『No.17 いすゞ エルフ 軌陸車』はサスペンション可動、ブーム伸縮・上下・旋回、鉄輪可動と可動部も多く、軌陸車の特徴や魅力を余すところなく伝えてくれる楽しい1台になっています。ぜひコレクションに加えてみてください。

■いすゞ エルフ ディーゼル 2t ハイキャブ 高床ダブルタイヤ/ロングボディ/木製アオリ・ワンハンドゲート付 主要諸元(『トミカ』の規格と同一ではありません)

全長×全幅×全高(mm):6080×1930×2270

ホイールベース(mm):3360

トレッド(前/後・mm) :1395/1425

車両重量(kg):2530

エンジン:4JJ1-TCS型直列4気筒DOHCディーゼル インタークーラー付き2ステージターボ

排気量(cc):2999

最高出力: 110kW(150ps)/2800rpm

最大トルク:375Nm(38.2kgm)/1400-2800rpm

トランスミッション:6速AT

サスペンション(前/後):インデペンデント/リーフリジッド

ブレーキ(前/後) :ディスク/ドラム

タイヤ:(前後)185/85R16

■毎月第3土曜日はトミカの日!

No.117 日産 エクストレイル (サスペンション可動・希望小売価格550円・税込)

毎月第3土曜日は新しいトミカの発売日です。2023年10月の第3土曜日には、上でお伝えしているように、それまでの『No.17 フェラーリ ローマ』に代わって『No.17 いすゞ エルフ 軌陸車』が登場します。また、それまでの『No.117 トヨタ GR スープラ』に代わって『No.117 日産 エクストレイル』が登場します。なお、『No.117 日産 エクストレイル』には、初回出荷のみの特別仕様(特別色)もあります。

No.117 日産 エクストレイル(初回特別仕様) (サスペンション可動・希望小売価格550円・税込)*初回のみの特別仕様(特別色)です。

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