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【新型スペーシアの◯】アイディア満載の後席オットマン機能と先進安全装備のアップデート
新型スペーシア/スペーシアカスタムに限らず、サイズに制約のある軽自動車の場合、規格が改定されない限り、パッケージングの面で大きな進化は期待できないのが実情だ。つまり、各社ともに限界まで室内や荷室の広さを煮詰めている。そこで、スズキは、新型スペーシア/スペーシアカスタムの開発にあたって、後席をはじめとした快適性の向上に注力した。
その目玉は、「マルチユースフラップ」と呼ぶ後席のアイディア装備で、ふくらはぎを支える「オットマンモード」、座面を延長する感覚で脚裏を支える「レッグサポートモード」、「荷物ストッパーモード」という1人3役をこなせる装備を初めて用意。
同装備の発想は、リヤシートに荷物を置きたい、床には置きたくないという、ユーザーの声からだったという。ダイハツは、ムーヴキャンバスで「置きラクボックス」を設定していて、こうした荷物置き場を検討したそうだ。誰しも床に荷物は置きたくないはずで、後席に置くと走行時やブレーキング時に荷物が転がり落ちてしまうことがある。そこでストッパーの役割を与え、それだけでは装備としては物足らないという判断から、軽初のオットマン、脚裏を支えるレッグサポートモードも備えたという。
操作は慣れてしまえば容易で、フラップは座面横にあるボタンを押すと引き出すことができる。シートのヘッドレストを延長させる時のような操作感だ。フラップの前後位置は4段階、上方向には2段階調整できる。フラップを上向きにすればストッパーモードになる。
身長171cmの筆者が座ってみると、フラップの好みに前後位置と角度を何度か探る必要があったが、後席の背もたれを少し寝かせて、センターアームレストを使うことで快適なポジションを得ることができた。オットマンモードは、停車時、休憩時など向けのモードで、「レッグサポート」は走行中での後席乗員の疲れを抑制してくれそう。もちろん、高級車のようなオットマン付シートには遠く及ばないものの、ファーストカーとしての需要も多い軽スーパーハイトワゴンでは今までにない試みを「○」としたい。
さらに、走りの面では、最新の先進安全装備である「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」の搭載が朗報だ。短時間の高速道路での試乗ではあったものの、アダプティブクルーズコントロールの加減速のコントロール、車線中央維持機能の違和感も少ない。新型ホンダN-BOXの「ホンダ・センシング」や定評ある日産(三菱含む)の「プロパイロット」と比べても遜色ないように感じられた。
【新型スペーシアの△】新型N-BOXに及ばない乗り心地、静粛性、NAエンジンの力感
「△」をあえて挙げると、乗り心地や静粛性が最大のライバルにわずかに差をつけられていること。新型スペーシアは、プラットフォームの「ハーテクト」を先代から流用しつつも、ボディ重量の軽量化、環状用骨格や構造用接着剤の採用、アンダーボディの接合面への減衰接着剤、リヤまわりへの遮音バッフルの配置、後席リヤバンプストッパーの特性変更など入念な乗り心地、静粛性向上策を盛り込んでいる。こうした恩恵により、先代で散見された40〜50km/h程度でのこもり音やドラミングなどはかなり抑えられている。
一方で、新型N-BOXと比べると路面の小さな入力の遮断が少し甘いように感じられた。筆者は、新型N-BOXのNAエンジン車でスペーシアのプレス試乗会に向かったが、前席、後席ともにNVHの面では若干王者に及ばない印象を受けた。ただし、新型N-BOXの乗り味や静かさは、軽スーパーハイトワゴンでも先頭を独走していて、タントやルークス/デリカミニなどと比べると、差は極わずかだ。
また、スペーシアはマイルドハイブリッド(ISG)を採用しているが、その恩恵は平坦な街中などに限られる。なお、モーターによるアシスト力や作動時間などは先代と変わらないようだ。あくまで発進時やエンジンの再始動、そして燃費をサポートするのがマイルドハイブリッドの主な役割であることは、重々承知だが、NAエンジンの力感をサポートするほどの加勢は得られない。
NAは新たに「R06D」型を積み、軽ハイトワゴンクラストップの25.1km/L(WLTCモード)を実現したという利点があり、街中で流れに乗る程度であれば不足はない一方で、坂の多い地域や高速道路を使ってキャンプやスキー、マリンスポーツなどを楽しむのであれば、明らかに余力のあるターボ車を指名したい。なお、ライバルのN-BOXは、NAエンジンでも数値以上に「よく走る」ように進化し、スペーシアは燃費重視という性格になっている。
【新型スペーシアの×】CVT特有のラバーバンドフィール
乗り心地や静粛性も新型N-BOXと乗り比べれば……という視点で、新型スペーシアに大きな課題は見つからなかった。「△」の流れから「×」もあえて探すと、CVTのいわゆる「ラバーバンドフィール」とは無縁ではないこと。登り坂や急加速するシーンでは、音に対して加速がついてこない感覚がある。ライバルメーカーと同様に、ひと昔前のCVTと比べると着実に進化しているが、走りの楽しさをスポイルすることはあっても燃費以外はありがたみを感じさせないのも正直なところだ。
しかし、新型スペーシア/スペーシアカスタムは、電動パーキングブレーキの採用も含めて、後席の快適性を高めるなど、キープコンセプトといえるエクステリアデザインから想像する以上に中身は大きく進化している。値付けも絶妙で、N-BOXと比べると、価格帯は10万円〜15万円ほど抑えている。新型スペーシア ギアの開発も進んでいるとのことで、N-BOX、タントを追う体制はかなり整ったといえるだろう。