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TNGA「GA-B」じゃなくて「GA-BL」と言ってもいい
レクサスLBXは、コンパクトカー向けのプラットフォーム、TNGA GA-Bを使う。同じGA-Bのトヨタ・ヤリスクロスがベース、という表現はおそらく的外れだ。
レクサスのTAKUMI(匠)、尾崎修一さん(車両技術開発部)は「GA-Bプラットフォームは、コンパクトカー向けとして素性の良い優秀なプラットフォームだ」と前置きをした上で
「人によってはプラットフォームの名前を変えてもいいんじゃないかと、おっしゃっていただけるくらい違います。”TNGA GA-B+L”だとか、”BL”だとか、それくらい、実際に変えています。モノが全然違う」
と説明する。
開発初期には、操舵の気持ち良さの感覚と乗り心地の収まりのいい気持ち良さがどうしても出てこなくて、
「とりあえずできるできないはすっ飛ばしてやってみてくれ、となったときに、アンダーフロアにぶっといブロック、僕らはアングルと呼んでいますが、鉄のアングルを入れてみたらクルマがまったく変わって。これは現実には成立しません。でも、『これ(こういう剛性が)がほしい!』となったわけです。そうやって自分たちが体感すると『やっぱりここまでやらないといけないよね』となります。アンダーフロア系の剛性アップはLBXではかなり効いています。アンダーフロアの他にも、ドアの開口部のスポット溶接の打点数を増やす、構造用接着剤をしっかり入れるなどをしっかりやりこみました。本当にボディ剛性はしっかりとやりました」と尾崎さんは言う。
実際に乗り込んで街中を軽く流してみただけでも、静粛性、ボディのがっちり感がBセグコンパクトのレベルにないことが体感できる。
ドアを開けて見えるBピラーは、引張強度2.0GPa級のホットスタンプ材だ。Bピラーでの採用は世界初だ。
Bセグでこんなドアヒンジ、そうは見られない
筆者が注目したのは、ドアヒンジだ。Bセグメントのコンパクトカーとしては異例の見事な形鋼材のドアヒンジが付いていたのだ。Bセグとしては、ではなく、国産車のほとんどは板金プレスのドアヒンジを使っている。形鋼材、板金プレスそれぞれに採用理由があるから、形鋼材だから素晴らしいわけではない。とはいえ、ヤリスクロスは通常の板金プレス製だったから、レクサスLBXで「わざわざ」ドアヒンジを形鋼材に変更したわけだ。
尾崎さんに訊いてみた。
ドアヒンジがヤリスクロスと違います。通常、そういうこと、しないですよね?
「しないですね、ハイ。このクルマのボディを達成するためです。このクラスでは珍しいですよね」
こんな立派なBセグのドアヒンジ、見たことないです。
「そういう細かいところに気づいていただけて設計の人間としてすごくうれしいです。見ただけでもクラスが違うという感じがしますし、それは性能にも現れます。剛性も、ドアの開閉音も。とくに ドアを閉めたときの音、そういったところすべてに効いてきます。たぶん、お気づきかもしれませんが、レクサスLBXは、このクラスではドアの閉まり音、開閉の感覚がいいと思います」
確かにそうなのだ。レクサスLBXのドアの閉まり音や感触、ドライバーズシートに腰を下ろしてドアを閉めたときの、隔絶感。そこがいいのだ。
尾崎さんは続けて説明してくれた。
「ドアの閉まるフィーリング、音の検討をすごくしました。ドアパネルの剛性やヒンジ、ウェザーストリップ……最初の所作で安っぽく感じてしまったら、LBXとしてはダメなのです。しかし、そこをLSのようにあまり重厚になりすぎると、クルマとしての軽快さが損なわれます。LBXを見たときに、ドアの開閉で感覚的に引っかからず、すーっといけるのが調度良い。ここに、『んん?』というひっかかりがあると、人によってはネガな方向に行くこともあります。ドアの開閉、閉まり音、閉めたあとの静粛性……というところに引っかかりがないようにするのが一番バランスが良いのです」
じつに細かいチューニングをレクサスは行なっている。それは、もっともコンパクトなLBXにも貫かれている。「サイズのヒエラルキーを超えたクルマ」なのは、細部からも滲み出ているのだ。