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■最高級のミニバンを目指し誕生した日産のフラグシップがエルグランド
1997年(平成9)年5月19日、日産自動車から高級ミニバン「エルグランド」が発売。目指したのは、まだ存在していなかったファーストクラスのミニバンであり、高級感と快適性を追求した室内と高級装備を満載した高級ミニバンのパイオニアとして大ヒットした。
●新世代ミニバンブームを巻き起こしたエスティマとオデッセイ
1990年、“天才タマゴ”のキャッチコピーを掲げてトヨタから「エスティマ」、1994年には低い車高の乗用車感覚を強調したホンダ「オデッセイ」と、従来のミニバンとは全く異なる新世代ミニバンが登場した。
エスティマは、それまでの商用車ベースのボクシーなミニバンではなく、乗用車ベースのスタイリッシュなフォルムと、広い3列シートおよびラウンディッシュなコクピットを配した近未来的なインテリアが特徴だった。
オッデセイは、乗用車のシャシーを使い車高を可能な限り低くしながらも、3列シートの広い室内空間を実現。後席ドアをスライド式ではなく、あえてヒンジ式にすることで、乗用車感覚のミニバンをアピールした。
2台のミニバンは、アウトドア派やレジャー派のファミリー層から爆発的な人気を獲得し、従来のミニバンとは全く異なる新世代ミニバンブームを巻き起こしたのだ。
●高級感と快適性を追求した高級ミニバンのエルグランド登場
エスティマとオデッセイの大ヒットを受け、日産がターゲットにしたのはファーストクラスの高級ミニバンだった。
フロントマスクは、グリルおよびヘッドライトを上下2分割し、メッキ枠や厚みのあるバンパーで堂々たる風格を漂わせた。高級感と快適性を追求した室内は、2列目は回転対座シート、3列目は横に跳ね上げる方式とし、7人/8人乗りに対応できる様々なシートアレンジが用意された。
パワートレインは、150psを発生する3.2L 直4ディーゼルターボおよび170psの3.3L V6ガソリンエンジンンと4速ATの組み合わせ、駆動方式はFRと4WDを用意。さらに装備についても、ナビとTVが楽しめるツインナビゲーションやスーパーサウンドシステム、オゾンセーフフル・オートデュアルエアコンなど、高級感を演出したのだ。
高級ミニバンという新しいジャンルを開拓したエルグランドは、最も安価な2WD(FR)が268.1万円、最も高価な4WDが389.8万円の設定で、発売開始から19ヵ月で累計台数10万台を突破する大ヒットを記録した。
ちなみに、当時の大卒初任給は19.5万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で安価な2WDモデルが316万円に相当する。
●ライバルとして立ちはだかったアルファード/ヴェルファイア
ところが、2002年にトヨタからライバル「アルファード/ヴェルファイア」が発売されると、エルグランドは徐々に失速することに。
アルファード/ヴェルファイアは、落ち着いた気品あるデザインと木目やメッキパーツなどを多用したゴージャスなインテリア、さらに豊富なシートアレンジの3列シートにより、快適性と高級感を実現。パワートレーンは、2.4L直4DOHCと4速AT、および3.0L V6 DOHCエンジンと5速ATの組み合わせが用意された。
エルグランドとの大きな違いは、FRベースのエルグランドに対してFFベースであること。FFプラットフォームを利用した圧倒的な室内空間と豪華な装備により発売直後から大ヒット、あっという間に高級ミニバン、トップの座をエルグランドから奪取したのだ。
エルグランドは、挽回のために2010年に登場した3代目でFFに変更し堅調な販売を続けたが、結局ライバルのアル/ヴェルの勢いを止めることができず、その後もアル/ヴェルの後塵を拝することになった。
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高級ミニバンのパイオニアとして大ヒットしたエルグランドだが、その勢いも徐々に減速し最近は苦戦している。そんな中、いよいよフルモデルチェンジか?とウワサが絶えない日産エルグランド。進化した4代目では、打倒アルファード/ヴェルファイアなるか、注目だ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。