天候やトラブルに翻弄されたものの、質の高い走りを見せた野村と14位入賞のチーム・ドルーピー石川がDUNLOP DIREZZA β02のウエット性能にも手応え【D1GP OKUIBUKI DRIFT】

2024年5月「グランツーリスモD1グランプリシリーズ」が奥伊吹モーターパークで開幕した。土日で2連戦が行われたが、第1戦は快晴、第2戦は雨と、大きく変わるコンディションの中、D1GP復帰2年目となるチーム・ドルーピーと、初参戦の“のむけんJr.”野村圭市が、上位進出はならなかったものの、随所にいい走りを見せて印象を残した。

Photo:サンプロスD1事務局

4月のプレシーズンマッチ「ラウンドゼロ」では制御系トラブルのためにまともに走れなかったチーム・ドルーピーのGR86も原因がわかって復活。AE85とともに開幕戦に参戦した。そしてD1GP初参戦の野村は、4月のラウンドゼロでは間に合っていなかったラジエーターのリヤへの移設が完了。「トラクションもかかるし、振り子が重くなったような感じでスパッとリヤを振り出せるので乗りやすくなりました。特に悪いところはないのでメリットばっかりです」とのこと。

ラジエーターをリヤに移設してきた野村のスカイライン。前後の重量配分が改善できるので、D1GPでは定番のモディファイだ。

しかし、最初の公式練習でアクシデントが発生した。ヘアピンコーナーのアウト側に滑る場所があり、クラッシュする車両が続出。松川和也が乗るチーム・ドルーピーのHT・DUNLOP・85(AE85)も、それによってコンクリートウォール先端に右リヤをヒットしてしまった。車両はほぼ修復できたが、ドライバーの松川が身体にダメージを負い、無理ができない状態になってしまった。

HT・DUNLOP・86(GR86)に乗る石川隼也は、練習走行の得点もよく、走りは順調。いっぽうURAS RACINGのDUNLOP CUSCO SKYLINE(ER34)に乗る野村圭市はちょっと悩んでいた。D1GPのなかではマシンのパワーが現状まだ低いため、一気に大きな角度をつける高得点狙いの走りをするのが難しい。それよりは、メリハリを抑えて、高得点はのぞめないが再現性は高く、ボーダーラインは越えられそうな点を狙っていったほうがいいかもしれないからだ。

そして第1戦の単走本番がスタート。松川は2本とも走りをまとめられず点が伸びない。デビュー戦となった野村の1本目はやや車速が低く、ヘアピンでの安定性に欠けるところがあり、96.8点。もう少し得点を伸ばしておきたいところだ。ところが2本目の走行直前にバッテリーのブレーカーにトラブルが発生。スタートはしたものの気が気じゃなかった野村は走りに集中できず点を落としてしまう。また、石川は走行直前にパワ−ステアリングのフルード漏れで走行できず。結局3台とも追走進出はならずに開幕戦を終えることになった。

練習走行のクラッシュ後、AE85はほぼ修復できたが、どちらかというとドライバーの松川にダメージが残ってしまった。

第2戦は第1戦の翌日、同じコースで開催された。天候は朝から小雨。競技開始の時点ではまだドライ路面だったが、降雨が予想される予報だった。しかし野村は「D1ライツのときにもDUNLOP DIREZZA β02を使っていたけど、雨でもよかったので信頼していけます」とのこと。ウエットになればパワー不足のハンデは関係なくなるので、より高得点を狙う走りができるかもしれない。また、石川も「ウエットでも、路面温度が低いのも、ぜんぜん気にならない」とのこと。石川は朝のチェック走行では99点台というトップクラスの得点を出していて、大いに期待できる状況だ。

しかし、路面の変化が走行を難しくさせた。D1GPではウエット宣言が出ると、全体の得点順位ではなく、走行グループごとに上位4名が追走進出となる。この日の単走も早々にウエット宣言が出された。Bグループの野村は非常に滑る路面で見事にコントロールし、その状況では高い得点を獲得した。ところがBグループ後半には路面状況が改善したようで野村の得点を上まわる選手が続出し、野村は追走進出を逃してしまった。野村は単走決勝後にこう話してくれた。

「僕的には『行けただろう』って出来だったんですけど。Bグループの前半と後半でけっこう天候に大きな差があったから、車速も全然違ったし、後半はそりゃ点数出るやろっていう路面コンディションだったので、けっこう悔しいですね。でも、初めてD1GPで走って手応えはありました。DOSS(機械審査システム)も初めてつけて、最初手探りだったんですけど、スポッターもDOSSの知識があるひとにお願いしてるんで、こうしたらこんな感じで点数が出るんだっていうのがだいぶ反映されてきて、朝の練習走行はドライだったけど、全体のなかでもまあまあそこそこ点が出ていました。本番はいきなりの雨で、いまの車両とタイヤでウエットを走ったことがなかったんですけど、DIREZZA β02はウエットでもかなりいいですね。タイヤにも助けられて、やりきった感はあったんですごく悔しいです。次戦の筑波までにはパワーアップもしたいなと思ってるんで、いい走りができるように頑張ります」。

まだパワー的には劣勢な面もあるが、D1GPに通用する手応えを得た野村。

チーム・ドルーピーの松川は1本目の振り出しがうまくいかず、2本目も2コーナーで角度がつかないなどして単走通過はならなかったものの、石川は2本目に、審査区間後半の角度などで点を稼ぎ、追走進出を決めた。ただ、路面コンディションがグループによって異なったこともあり、ドライ時のような高順位はとれなかった。

そして追走トーナメント。シルビアに乗る横井と対戦した石川は少し姿勢を乱した場面もあったが後追いから1コーナーで距離を詰める。その後もついていったがヘアピンを抜けたところで加速せず、ドリフトが維持できなくなってしまう。

デフのサイドフランジの破損だった。これで石川は走行不能になり、2本目はリタイヤ。ベスト16敗退の14位に終わった。

第2戦の追走ベスト16。石川は横井と対戦したが、1本目の走行中に駆動系トラブルに見舞われてしまった。

大会後、チーム・ドルーピーの松岡監督に話を聞いた。

「朝チェック走行のドライのときにはすげえ高得点が入ってるし、最後は壊れたけど、ウエットの状況でも十分戦えるっていうのは証明できたし、ドライバー本人もその感触は掴んでるみたいだから。うん、 まあまあ。結果だけ見れば残念だけどけっこう得るものあったなって思います。次回に向けてっていう意味では、ワクワクできるかな」

「DIREZZA β02は雨の中で思っていたよりもぜんぜんグリップしてくれた。今日の追走のときはまあまあのヘビーウェットで、ああいう路面状況だと排水性とか、そういう心配も少しあったんだけど、あの走行でその心配も払拭された感じでした。ウエットでも十分戦えるのがわかったから、これはもう路面コンディションが変わっても、ほんとに武器だと思ってます。次はいけます!」

結果は出せなかったが、内容的には手応えを感じているという広島トヨタ team DROO-Pの松岡歩監督。

奥伊吹で開催されたD1GPファーストラウンドは、マシントラブルのタイミングや天候の変化など、不運に翻弄されたダンロップ勢だが、内容的にはルーキーの野村も含めて高い戦闘力があることが確認できた。次戦は高速サーキットで競技区間も長い筑波サーキットで6月の開催。DUNLOP DIREZZA β02のポテンシャルをいかんなく発揮できるコースで、結果を残したい。

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