【後編】北米ホンダの旗艦SUV「パイロット」とは? 筆者がアメリカ1300kmを走って解説!これは日本にも欲しい!

日本では発売されず、海外市場のみで販売されている魅力的なモデルを現地試乗取材で徹底レポート! 第3回目はホンダのSUV「パイロット」を前後編に渡って紹介する。後編はパイロットの試乗インプレッションや燃費などをレポート!

REPORT:小林秀雄(KOBAYASHI Hideo) PHOTO:平野 陽(HIRANO Akio)

都市と自然を繋ぐ、北米ホンダの最上級SUV

ホンダ・パイロット

前編で大まかな成り立ちをお伝えしたホンダのミッドサイズSUV、パイロット。ボディはモノコック、サスペンション形式はフロントがマクファーソンストラット、リヤがマルチリンクと、構造はいたって一般的な都市型SUVである。

ただし、今回取材した「TrailSport(トレイルスポーツ)」はオフロード色の強いキャラクターを主張するだけあって、サスペンションのチューニングも専用設定となっている。その乗り味は、かなり意図的と表現できるほどフワフワしたソフトタッチ。凹凸の激しい悪路に照準を合わせているため、オンロードで走ると少し腰砕けな不安感も感じるほどだ。

トレイルスポーツは、サスペンションのチューニングも専用設定となっていて、悪路を意識したフワフワとソフトな味付け。

また、前編でも少し触れたが、標準装備のオールテレインタイヤはゴツゴツしたブロックが、よく整備された路面を走る上ではボディに微振動を伝える原因にもなっている。もし実際に舗装路しか走らないユーザーであれば、ユサユサとよく動くし、なんだか賑やかなクルマだなという印象に終始してしまうだろう。

だが、その特徴は路面状態が悪くなるほどアドバンテージへと変わり、光りを放ち始める。ネバダの乾燥した荒地を走ると、タイヤのブロックがしっかりと路面を噛むのが伝わり、安心感は絶大だ。大きくアンジュレーションのついた轍を走る際にも、ゆったりストロークするサスペンションのおかげでフラットな姿勢でズバッと直進することができる。

オンロードでは、標準装備のオールテレインタイヤのゴツゴツしたブロックパターンが振動の原因ともなっている。

エンジンのレスポンスについても同じことが言え、オンロードで走る分には少し鈍感に感じるほど、加速感は穏やかだ。だが、いつタイヤが空転するともわからない路面状況では、その穏やかさが逆に安心感に直結。そもそも最高出力289psのV6が遅いわけもなく、少し機敏なレスポンスが欲しければドライブモードをスポーツに切り替えれば、それでいい。

ホンダ・パイロット

アウトドア・アクティビティの相棒に相応しいクルマ

広大な自然を誇るアメリカは、もともとアウトドアのアクティビティが盛ん。普段は都市で生活しつつ、週末はクルマで郊外に出かけ、ハイキングやトレッキングを楽しむといったライフスタイルを送る人も多い。この「都会と自然をシームレスに繋ぐ」という価値は、われわれ日本人がイメージする以上にニーズが高いようだ。

ホンダ・パイロット

それもあってか、トレイルスポーツにはクラス3(1〜5まで分類され数字が大きいほど牽引能力も高い)のトレーラーヒッチが標準装備されている。トーイングキャパシティ(牽引可能な上限重量)は5000ポンド(約2.27t)で、トレーラーを引くのはもちろん、バイクや自転車を運ぶためのキャリアを接続することも可能だ。

アメリカでは、トレーラーを牽引したりキャリアを接続する車両が多い。

ラゲッジルームはキャンプ道具を妥協なく積み込めそうなほど広大。3列目シート使用時こそ奥行きは約460mmと限られるが、3列目シート格納時は1230mmに拡大。さらに2列目シートには前後スライド機構が備わるので、前にスライドさせると約1390mmまで延長できる。さらに2列目シートも前倒しした場合の最大奥行きは約2170mmだ。

3列目シート使用時は奥行きは約460mm。
3列目シート格納時は1230mm。2列目シートを一番前にスライドさせると約1390mmまで延長できる。さらに2列目シートも前倒しした場合の最大奥行きは約2170mmだ。

ホイールハウス間の最小幅は約1130mm、フロア手前側の最大幅は1450mmと、かなり余裕がある。高さは約795mmだが、フロアのデッキボードを一段低い位置にセットすると、床が低くなる分、高さも約975mmに拡大する。

フロアのデッキボードを一段低い位置にセットした状態。

運転支援システムは「Honda SENSING」を採用

また、先進の予防安全機能も充実しており、日本のホンダ車でもお馴染みの運転支援システムHonda SENSINGが採用されている。ハイウェイでアダプティブ・クルーズ・コントロールを使用すると、車線を認識するフロントカメラの精度の高さを実感できた。アメリカのハイウェイは車線がはっきりしないケースが多い上に、平均速度も高い。

そのため日本の高速道路を走る時以上に神経を集中させる必要があるのだが、その点、パイロットのアダプティブ・クルーズ・コントロールは車線の検知機能が正確。左右の車線から別のクルマが割り込んでくるケースでも、的確な減速制御で怖さを感じずに済んだ。

車線の検知機能が高いHonda SENSINGなら、日本ほど道路の状態がよくないアメリカのハイウェイでも安心して運転ができる。
操作系はお馴染みのものとなっている。

そして燃費はカタログ値が、市街地18mpg(約7.65km/L)、高速23mpg(約9.77km/L)、混合20mpg(約8.50km/L)。それに対して実際に850マイル(約1368km)以上走った結果の平均燃費計の値は19.1mpg(約8.12km/L)を表示。実燃費がカタログ燃費に近いところに信頼感を覚えるが、ハイウェイ主体でアダプティブ・クルーズ・コントロールも多用しての走行だっただけに、決して「燃費良好」とは言い難い。

意外と細かい装備も充実しており、スマホのワイヤレス充電、リヤ用のエアコン送風口と操作パネル、USBとAC115V 150Wの電源、スマホが入るシートバックポケット、日除けになるリヤロールサンシェードなどを装備。

センターコンソールにはスマホのワイヤレス充電などが備わる。
2列目後席には、リヤ用のエアコン送風口と操作パネル、USBとAC115V 150Wの電源と充実している。

3列目シート用にもドリンクホルダーとエアコン送風口、USB電源が設けられている。

3列目シートのサイドの肘掛け部分。

トレイルスポーツは電動ムーンルーフやパワーテールゲートも標準装備。

乗用車ベースのSUVでありながら、オフでの使い勝手にも優れるトレイルスポーツをメインフィーチャーしているところが、アメリカにおける「旬」も物語るパイロット。もし空前のキャンプブームに沸く日本でも展開されれば、魅力的な選択肢になり得るはずだ。

ホンダ・パイロット

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著者プロフィール

小林秀雄 近影

小林秀雄

大正から昭和初期の文豪の如き不健康な風貌ながら、趣味は草野球とサーフィンというわかりにくい男。編集…