40周年記念! Z31型フェアレディZ300ZXの全日本ラリー選手権チャンピオンマシンはニスモ初の競技車両? ニスモフェスティバルに向けてレストア開始!!

市販車からコンペティションマシンまで、日産のさまざまなな歴史的名車を収蔵する「日産へリテージコレクション」(神奈川県座間市)。その車両をレストアする日産社内の有志クラブが「日産名車再生クラブ」だ。2006年の発足以来、2023年まで16台の名車をレストアしてきたが、その2024年のレストア車として選んだのがZ31型フェアレディZ300ZX。その、1985年全日本ラリー選手権チャンピオンマシンだ。2024年6月22日(土)、日産テクニカルセンターでそのキックオフ式が行われた。
日産名車再生クラブのクラブ員が一堂に介した2023年完了式と2024年キックオフ式。

日産名車再生クラブは、日産の車内クラブとして2006年の発足以降、日産へリテージコレクションに収蔵される車両のレストアを行ってきた。
その最新の成果が2023年の再生対象車であるパルサーGTI-RのWRC参戦車両だった。そして、その完了式では同時に2024年のキックオフ式が行われ、その対象車であるZ31型フェアレディZ300ZXもあわせて展示された。

【画像50枚】日産最後のワークスラリーマシン・パルサーGTI-RグループAのレストアが完了! 1992年WRC最終戦RACラリーを走った姿が甦る!!

日産は国産自動車メーカーの中でも古くから"ヘリテージ"に力を入れてきた方だ。「日産ヘリテージコレクション」(神奈川県座間市)には市販車からコンペティションマシンまで、実に様々なクルマが数多く収蔵されている。いずれも素晴らしいコンディションを維持しているが、その陰には「日産名車再生クラブ」の活動がある。その最新成果が、日産がワークスチームとして最後にWRCに投入したラリーマシン・パルサーGTI-R(グループA)である。2024年6月22日、日産テクニカルセンターで、その完了式が行われ完成車が披露された。

なぜフェアレディZがラリーマシンに選ばれたのか?

ドライバー:神岡政夫/コドライバー:中原祥雅は1980年代から1990年の日本を代表するラリースト。全日本だけでなくWRCにもその足跡を残す。

このZ31型フェアレディZ300ZXは神岡政夫/中原祥雅組が1985年に全日本ラリー選手権のトップカテゴリー(Cクラス)に参戦しチャンピオンを獲得したマシン。当時はAE86型カローラ(主にレビン)やA175型ランサーといったコンパクトなマシンが多かったなか、大柄なフェアレディZが選ばれたのは何故だろうか?

日産ワークスのトリコロールカラーをまとう2台のラリーカー。

当時、1985年シーズンの全日本ラリー選手権用マシンを開発するにあたり、ニスモは神岡選手にこのフェアレディZかS12型のシルビアを提案したという。その結果、神岡選手の「ホイールベースの短い方」というリクエストからフェアレディZに決まったそうだ。

S30から続くロングノーズショートデッキのハッチバッククーペスタイルは踏襲されるが、鋭角的なデザインにセミリトララクタブルライトの採用はフェアレディZの新時代到来を感じさせた。

Z31型フェアレディZ300ZX(2シーター)のホイールベースは2320mm。一方、S12型シルビアのホイールベースは2425mmと100mmも長い。

ホイールベースだけでなく全長も意外に短いフェアレディZの2シーターモデル。オーバーハングこそ長いが、実はかなりスクエアなサイズ構成なのだ。

さらに、全長でもフェアレディZの4335mmに対し、シルビアは4430mmとこちらも100mm近く長く、GTカー的なオーバーハングさえ気にしなければ実は意外とコンパクトなのだ。しかも全幅は1725mmとシルビアの1660mmよりも広くスクエアなディメンジョンとなっている。

ちなみにボディサイズを含むスペックの違いは以下リストを参照してほしい。比べてみると、重量的なハンデはあれどすでに参戦中で実績もあり熟成された他車を超えるためにフェアレディZという選択肢は”あり”だったのだろう。

車両フェアレディZ300ZX(2シーター)シルビアハッチバックターボRS-X
型式HZ31S12
年式19851983-1988
全長4334mm4430mm
全幅1725mm1660mm
全高1295mm1330mm
ホイールベース2320mm2424mm
トレッド前1415mm/1435mm前1400mm/1425mm
車両重量1325kg1140kg
エンジンVG30ET
2960cc V型6気筒SOHCターボ
FJ20ET
1990cc 直列4気筒DOHCターボ
最大出力(※)230ps/5200rpm190ps/6400rpm
最大トルク(※)34.0kgm/3600rpm23.0kgm/4800rpm
サスペンション前:ストラット
後:セミトレーリングアーム
前:ストラット
後:セミトレーリングアーム
ブレーキ前:ベンチレーテッドディスク
後:ディスク
前:ベンチレーテッドディスク
後:ディスク
タイヤ・ホイール215/60R15195/60R15
※いずれもグロス値
フェアレディZ300ZX(2シーター)
シルビアハッチバックターボRS-X

“ニスモ”ブランド初のコンペティションマシンの再生は前途多難?

1984年9月に設立されたニスモ。これまで部署や事業所ごとに分かれていた活動していた日産ワークス(いわゆる追浜や大森など)が、ニスモのブランド名で活動することになる。その最初のマシンがこの全日本ラリー用のフェアレディZ300ZXだったのではないか、とのことだ。

ボンネットの内側にもNISMOのロゴ。このロゴは1984年の設立から使用され、1997年に小文字ロゴに切り替わる。ゼッケンも日産ワークスの伝統である「23」をまとう。
リヤゲートの「SCCN」は1964年に設立されたかつてのワークスチーム「日産スポーツカークラブ」のもの。現在はモータースポーツクラブに転身している。

当時の全日本ラリーは基本的にノーマルを前提としており、改造には厳しい制限が設けられていた。そのため、この車両もロールケージやバケットシート、マッドフラップ、アンダーガード、ライトポッドといった最低限のラリー装備以外はほぼノーマルといった印象だ。

カーペットなどの一部内装が剥がされている以外ほぼノーマルのコックピット。センターコンソールのエアコンとオーディオの操作パネルは撤去され、トグルスイッチが設置されているが、メーターの両サイドやシフトレバー手前のスイッチ類はそのまま。
ステアリングもニスモのもののようだが、ホーンボタンのロゴは他であまり見ないタイプ。
張り出しの少ないフルバケットシートは時代を感じさせる。ハーネスはサベルトのカムロックタイプの4点式。

Z31型フェアレディZのモデルライフが1983年から1989年だが、前期型は1986年のビッグマイナーチェンジまで。すでに40年が経過している”旧車”だ。日産ヘリテージコレクション収蔵車ではあるが、内装まわりは”当時感”溢れる状態だった。

助手席のダッシュボードにはおそらくラリーコンピューターを装着したであろうスペースが残るほか、ナビゲーターが使用したと思われるポケットがセンターコンソールに追加されている。
左右ともにドアの内張もそのまま残る。
左右それぞれボックスが追加されている。
2シーターなので深さはないがラゲッジスペースは広い。中央はスペアタイヤを設置する場所。固定具はシートベルトを流用したものか。クロスレンチのボックスや運転席後方に消火器が設置される。それにしても、国内選手権とはいえロールケージがあまりに少ない。

そして国内戦とはいえラリーを戦ってきた車両だけにボディへのダメージも計り知れない。特にボディ底面についてはすでに多くの錆が見受けられ、前途多難を予感させる状態だ。さらに、スペアタイヤを搭載するのか、ラリーコンピューターは装着するのかなど、どこまで当時の状態に近づけるのかも気になるところ。

フェアレディZ300ZXの底面を後から見る。アンダーガードやタイコ部分はマシだが、マフラーのエンドパイプには錆が見える。マッドフラップの長さは控えめだ。
ボディ全体にダメージやそれに起因すると思われる錆が出ている。ガード類が錆びていないのはアルミ製だからか。
マフラーのセンターパイプ、サスペンションアーム、ショックユニットも錆びているようだ。
タイヤはダンロップSP SPORT82-Rとパルサーと同銘柄。
サイズはフロントが185/70R15、リヤが225/60R15。
メッシュタイプのホイールはSSR製を装着。

とはいえ、スペシャルメイドのグループAマシンに比べれば厳しい改造制限によりノーマルに近い形で争われた全日本選手権のマシンだけに前年のパルサーGTI-Rに比べれば再生は容易だろうか? 気になるのはボディの痛みや錆だが、これまでもこのフェアレディZ300ZXより古いラリーカーを再生してきた日産名車再生クラブなら対処は可能だろう。

VG30ET 3.0L V型6気筒SOHCターボを縦置きするエンジンルーム。ストラットタワーバー以外はノーマルのように見える。WRCのグループAマシンに比べれば、ほぼ市販車と変わりないと考えれば多少古くともパルサーGTI-Rより再生は容易か?
VG型自体がコンパクトなエンジンではないが、意外にエンジンルームは窮屈に見える。
ストラットタワーバーの太さも後の時代と比べるとかなり控えめだ。

全日本ラリー選手権最後のFRチャンピオン

斯くしてフェレディZは1985年シーズンの全日本ラリー選手権に第3戦(KANSAI-RALLY)から出場。デビュー戦を5位で飾ると、第4戦をスキップして第5戦から最終戦(第11戦)まで戦い、第6戦、第7戦と連勝。2勝と2回の3位に加え上手くポイントを重ね参戦初年度にチャンピオン獲得に成功している。
なお、これが全日本ラリー選手権のおける、FR車が獲得した最後のチャンピオンになる。

このZ31型フェアレディZ300ZXの活躍と当時の全日本ラリーの状況についてはこちらの記事も参照。

キックオフ式の会場には、このフェアレディZの活躍が載った当時の雑誌や、ニスモブランドをアピールするステッカーやミニカーなど、貴重なグッズも展示された。

モータースポーツ専門誌「プレイドライブ」や「オートスポーツ」に活躍が掲載された。
チャンピオン獲得記念ミニカー。
雑誌に加え、ニスモスポーツパーツのカタログやカレンダー、ステッカーなどのグッズも展示。

国内モータースポーツにあって、レースに比べて地味な感は否めない全日本ラリー選手権ではあるが、ニスモの活動としてアピールしていこうという姿勢が強く感じられる。実際、国内ラリーにおいてはこの後、ブルーバードSSS-R(U12)やマーチ(K10)の競技ベース車両にはトリコロールカラーまで設定し、競技用のパーツも展開。日産によるモータースポーツ活動を大いに盛り上げていくことになる。

U12ブルーバードに設定された競技ベース車両SSS-R。
ロールバーや4点式ハーネスなどが用意された。
K10マーチにも競技ベース車両としてマーチRが設定された。

ニスモは2024年で40周年!ニスモフェスティバル展示を目指す!!

NISMO(ニスモ)とはニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社のこと。日産社内のワークスチームを母体とし、モータースポーツ活動やパーツなどの設計販売を行っていた。2022年にオーテックジャパンと統合し、現在は日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社となっている。
その設立が1984年であり、2024年は設立40周年の節目にあたるのだ。

キックオフ式で2024年再生車を紹介するクラブ代表の木賀新一氏。

そのため、ニスモが手がけた最初のコンペティションマシンであるこのフェアレディZ300ZXを、例年12月に開催される「ニスモフェスティバル」に展示することを目指して再生作業が進められることになる。
同車はこれまでのニスモフェスティバルなどで展示されてきているが、クラブの再生活動は動態保存が前提とされており、2024年のニスモフェスバルでは走行が披露されるのではないかと期待せざるを得ない。

【画像で見る】S54から最新モデルまで! 歴代スカイラインが富士スピードウェイに大集合&レーシングコースを走る!!『ニスモフェスティバル2023』

2023年12月3日(日)静岡県御殿場市の富士スピードウェイで開催された『ニスモフェスティバル2023』。例年、日産のレーシングカーや歴史を彩る名車が展示されるこのイベントだが、今年は「スカイライン」が特にフィーチャーされていた。プリンス、そして日産の代表車種としてブランドイメージ、レーシングイメージを印象づける稀代の名車の歴代モデルが展示されたばかりか、サーキットで活躍したレーシングスカイラインのデモ走行も披露され、富士スピードウェイに集まったファンをその姿とエキゾーストノートで魅了した。

GTマシンが! ラリーカーが! 西部警察が!「NISMO FESTIVAL at FUJI SPEEDWAY 2022」で歴代フェアレディZが夢の共演!

2022年12月4日に富士スピードウェイで開催されたNISMO FESTIVAL at FUJI SPEEDWAY 2022は好天にも恵まれ、3万人の来場者が訪れる大盛況となった。パレードランやレーシングカーの展示とデモラン、クラシックカーレース、さらに多数の出展社がブースを出すなど見どころが盛りだくさん。日産ファンはもちろん、レースファンも大満足のイベントだ。

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