マツダ・ロードスターSと初代・ロードスター 30年経っても楽しさの本質は変わらない

マツダ・ロードスター 初代(ユーノスNA)とND型を比べてみる。パワーは10%UP! 価格は1.5倍 楽しさの本質は変わらない

マツダ・ロードスター(ND型)と初代ユーノス・ロードスター(NA型)の間には、デビュー年で四半世紀の時間の流れがある。2021年夏に続けてNAとNDに載ってみた。あらためてNAとND、乗り比べてみよう。

NA型初代ロードスター(ユーノス・ロードスター)がデビューしたのは、1989年。ライトウェイト・オープンスポーツカーの復活は世界中で歓迎され大ヒットを記録した。
筆者は、1.6ℓから1.8ℓに排気量をアップしたNA型〔NA8C型)を20代の頃新車で購入し、数年間ともに過ごした経験がある。

デビューは1989年。NAロードスター(ユーノス・ロードスター)は、今見ても魅力的だ。当時のベースグレードの車両価格は170万円だった。
2021年型NDロードスター S 車両本体価格:263万4500円(特別塗装色代3万3000円含む)

マツダは歴代ロードスターを現在も所有していて、今回試乗させてもらったのも、マツダの広報車両である。程度は極上といっていい1.6ℓモデルである。マツダとミズノの共同開発によるドライビングシューズの取材時にNAロードスターを短時間ドライブしてみた。

今さら言うのもなんだが、NAロードスターは乗り込んで、クラッチミートして動き出した瞬間から、顔がニヤけてしまう。無条件に楽しい。あぁ、こんなクルマだったな。全然速くないし、豪華でも静かでも広く使い勝手がいいわけでもないが、もうとにかく楽しい。こんなクルマ、いまはもうないな、と思う。

NAロードスター そうそう、こんな感じだった。すべてがしっくりくる。
現行NDロードスター Sグレード。こちらも、しっくりくる。ステアリングのチルト調整ができるのがいい。

リトラクタブルヘッドライトを上げた時のユーモラスな顔つきも、キュートだ。NAロードスターを手放すとき(プジョー306Styleに買い換えたのだが)、「いつか必ずロードスターをもう一度買おう」と密かに誓ったものだ。

リトラクタブルヘッドライトがNAの特徴。ライトを点けなくても上げることがでた。

NAロードスターに試乗した1週間後、今度は現行(ND型)ロードスターを借りだした。グレードはもっともベーシックな「S」である。
Sは、ベーシックグレードなので6MTのみの設定だ。

運転してすぐに「NAロードスターの乗り味にもっとも近いのは、NDロードスターのSだな」と再確認した。

Sグレードは、それ以上のグレードに付く(AT車にはつかない)リヤのスタビライザーとトルクセンシング式スーパーLSDを装着していない。

ちなみに、トルクセンシング式スーパーLSDは、GKNドライブラインジャパンのLSDだ。ここでいう「スーパー」は「すごい・超」の意味ではなく、差動制限性能は限定されるが、コストパフォーマンスが高いのが特徴。ここでいう「スーパー」は「スーパーマーケットに行くように気軽さ」のスーパーだ。

NDロードスターのペダル配置。NDのアクセルペダルはオルガン式。NAのアクセルは吊り下げ式だ。

話がちょっと脱線したが、現行ロードスターの好みは、筆者のように「S」の乗り味を好む人と、「RS」を好む人にわかれるのだそうだ。「Sが一番いいですよね」という人の多くは、かつてNAロードスターに乗っていた人が多いとも聞いた。

では(あまり意味はないけれど)比べてみよう。

NA vs ND サイズ比較 ボディサイズはほぼ同じ

全長×全幅×全高:3970mm×1675mm×1235mm ホイールベース:2265mm
全長×全幅×全高:3915mm×1735mm×1245mm ホイールベース:2310mm
トレッド:F1405mm/R1420mm
車重:940kg
トレッド:F1495mm/R1505mm
車重:990kg

ボディサイズは、なんと現行NDの方が全長は短い! だから、ドライバーズシートに座った感じがとても似ている。車重はともにベースグレード比較で、NAが940kg、NDが990kg。どちらも1トン切りだ。2020年代の現在、1トンを切る軽量さは本当に大きな魅力である。

タイヤは、
NA:185/60R14
ND:195/50R16

ここは四半世紀の時の流れを感じる部分だ。

パワートレーンは100ccダウンで10%パワーup

エンジンは、ともに直列4気筒DOHC、もちろん自然吸気エンジンだ。

NAロードスター 1.6ℓ直4DOHC

ヘッドカバーがスポーツカーらしさを演出していた。スロットルはアクセルペダルとスロットルワイヤーで繋がっている。
NAロードスターエンジン
 形式:直列4気筒DOHC
 型式:B6-ZE[RS]
 排気量:1597cc
 ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm
 圧縮比:9.5
 最高出力:120ps(88kW)/6500pm
 最大トルク:137.3Nm/5500rpm
 燃料供給:PFI
 燃料:無鉛レギュラー
 燃料タンク:45ℓ

NDロードスター 1.5ℓ直4DOHC

圧縮比13.0! 燃料供給はDI(燃料筒内燃料直接噴射)である。
NDロードスターエンジン
 形式:直列4気筒DOHC
 型式:P5-VP[RS](SKYACTIV-G1.5)
 排気量:1496cc
 ボア×ストローク:74.5mm×85.8mm
 圧縮比:13.0
 最高出力:132ps(97kW)/7000pm
 最大トルク:152Nm/4500rpm
 燃料供給:DI
 燃料:無鉛プレミアム
 燃料タンク:40ℓ

NDの1.5ℓ直4SKYACTIV-G1.5は、高回転型のエンジンだ。NAのB6エンジンが上までは回りたがらない印象だったのに対して、G1.5は気持ちよく回る。とはいえ、ものすごいパワーがあるわけでもないし、トルキーなわけでもない。

S/B比(ボア/ストローク比)は
NA:1.071
ND:1.151
と現代のエンジンらしくNDの方がロングストローク型だ。

パワーウェイトレシオは
NA:7.833kg/ps
ND:7.5kg/ps
である。

燃費は
NAが10モードで12.2km/ℓ
NDがWLTCモードで16.8km/ℓ

モードが違うから直接比較できないが、遠い記憶ではNAロードスターの実燃費は10km/ℓほどだった気がする。今回、NDロードスターを283.6km走って14.0km/ℓだったから、乱暴に言ってパワーは10%アップしたうえで燃費が40%アップしたわけだ。

NDロードスターの6速MT。操作性もいいし、なにより変速操作が楽しい。

トランスミッションは、NAは5速MT、NDは6速MTである。ギヤ比を見てみると

NA:4速が1.000 5速0.814
ND:6速が1.000

である。現行ロードスター(6MT)の走りは、この6速=1.000(直結)というのが大きな特徴になっている。このギヤ比のおかげで、1から6速まで街中でも使いこなせるのだ。変速操作が楽しいのは、NAもNDも同じだ。

NAのリヤウィンドウはビニール製。雨の日は曇るし、これは正直、NAの弱点だった。

ちなみに、価格は

NAロードスター ベースグレード(1989年)170万円
NDロードスター S(2021年)260万1500円

である。税制が違うから価格を比べるのはナンセンスかもしれない(1989年は消費税が3%だった。その代わり自動車取得税があった)。

これまた、ちなみに
大卒初任給は
1989年:16万900円
2021年:21万3003円
だった。

NDになって質感は大きく向上しているが、醸し出す雰囲気はNAと変わらない。
NDのリヤウィンドウはガラス製、しかも熱線入り!である。エアコンも効くし、快適だ。

「いつかは再びロードスター」といまでも思っている。

選ぶとしたら、やはりNAともっとも走り味が似ている(そしてもっとも安い)Sグレードだ。

Sは、エアコンがマニュアルで、ナビはOPでも付かないし、AppleCarPlay/AndroidAutoも付かない。でも、2020年代に、こんなに楽しい、こんなにピュアなクルマが新車で買える。次期ロードスターは電動化、なんて声も聞こえる。「電動化、いる?」と思っている人(筆者も含めて)、NDロードスター「S」、一度試乗しておいたほうがいいかもしれない。

著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…