目次
D1GP初参戦の野村圭市が最初に姿を現したのはプレシーズンマッチである富士スピードウェイでのラウンド・ゼロだった。とはいえ、前年度D1ライツを戦ったマシンをD1GP仕様にモディファイして使う野村は、D1GPのレギュレーションに合わせてくるのが精一杯で、まだD1GPマシンとして予定していた完成形ではなかった。
いっぽうD1GP復帰2年目となるチーム・ドルーピーのGR86も、前年度とはエンジンを変更して登場した。前年度まではV6の2GRエンジンを使っていたが、パワーアップの限界に達したことから、現在のD1GPで主流派である直列6気筒の2JZエンジンに変更してきたのだ。
野村にとっては初体験のD1GP、そしてチーム・ドルーピーにとっても初めてのエンジンで2024年シーズンを戦うことになった。
第1戦・第2戦/奥伊吹モーターパーク
開幕戦は滋賀県の奥伊吹モーターパークで5月に行われた。スキー場の駐車場を使ったコンパクトな特設コースだ。しかし、第1戦は、チーム・ドルーピーのHT・DUNLOP・85(AE85)に乗る松川は練習走行でクラッシュしてしまった影響もありいい走りができず、デビュー戦となったURAS RACINGのDUNLOP CUSCO SKYLINE(ER34)の野村も走りを決めきれず、HT DUNLOP 86(GR86)の石川はマシントラブルで走行できず、追走進出はならなかった。
翌日の第2戦は雨。野村は滑る路面状況でいい走りを見せたが、後に走ったグループ後半の時間帯にはより路面が走りやすいコンディションになったことで、次々と得点が抜かれてしまい追走進出ならず。また松川も単走で敗退した。石川は、角度のある走りで高得点をとり、追走進出を決めた。
しかし、石川は追走のベスト16でシルビアに乗る横井と対戦した際、駆動系を破損して途中リタイヤ。14位に終わった。
第3戦・第4戦/筑波サーキット 第5戦・第6戦/エビスサーキット
続く第3戦、第4戦は6月に茨城県・筑波サーキットで開催された。この2連戦はダンロップ勢にとって受難のラウンドだった。エンジンのパワーアップを図ってきた野村だったが、トラブルもあって2戦とも単走で敗退。練習走行では高得点もとっていた石川だったが、通過指定ゾーンを外すなどして2戦とも敗退。松川も同様に追走には進出できず、ノーポイントに終わってしまった。
そしてサマーブレイク明けの9月に福島県・エビスサーキットで第5戦、第6戦が開催された。前戦でエンジンブローをしていた野村、エンジンの特性を試すために予定通りだという石川ともにエンジンを3.4L仕様から3.6L仕様のものに換装してきた。
第5戦、野村はステアリング系のトラブルに見舞われていたこともあって、2番目の通過指定ゾーンに届かず点を落としてしまい、惜しくも19位で追走進出を逃す。石川は問題なく単走を通過したが、追走ではGRスープラに乗る齋藤に敗れて総合12位となった。
第6戦では、松川が惜しくも19位で単走敗退となったほか、石川、野村ともに大きなミスをしてしまい、3選手とも追走進出を逃した。しかし、ここに来てチーム・ドルーピーはマシントラブルが減ってきて、課題が絞れてきた。また、野村も十分なスピードやリズムを見せて、D1GPに順応してきたことを感じさせるラウンドだった。
第7戦・第8戦/オートポリス
第7戦、第8戦は大分県のオートポリスで行われた。チーム・ドルーピーは、前戦でポイントを取りこぼした反省から、まず確実に成功する走りを固めてからより高得点を狙う走りを目指すという組み立てを練習から実行。ウエット路面で行われた単走決勝で、石川は一時トップに立つ高得点を出し、最終的には2位で通過。松川も追走進出を決めた。野村は残念ながら単走敗退となった。
追走では、石川はベスト16でシルビアに乗る田中と対戦。先行でミスをしたほか、後追いでも挽回できずに敗れ、総合10位に終わった。いっぽう松川は、ベスト16で対戦した植尾がハーフスピンをしたこともあって得点で上まわり、ベスト8に進出。ベスト8ではGRカローラに乗る松山に寄せることができず敗れたが、7位に入った。
翌日の第8戦。野村はいい振り返しを見せたものの、第3ゾーンを最後までとりきれずに減点され、20位で単走敗退。あと一歩という走りだった。また松川も追走進出はならなかった。
石川は追走進出を果たしたが、その追走トーナメントではベスト16でジャンプスタートを取られてしまい、それによる減点が大きく、GRスープラに乗る山中に敗北。大会は15位に終わった。
チーム・ドルーピーにしてみれば、上位進出はならなかったものの、コンスタントにポイントが取れるようになってきた手応えの大きいラウンドだった。
第9戦・第10戦/お台場 特設コース
2024年シリーズ最後の2連戦は、東京・お台場の特設コースで、11月に開催された。ふだんは駐車場として使われているスペースで、サーキットなどと比べると路面は荒れ気味。砂などが出ている場所もあり、けっしてグリップの高い路面ではない。
第9戦は、松川と野村は敗退してしまったものの、石川は鋭い振りからピタッと姿勢を決めて旋回に移行し、2位で単走を通過してみせた。追走に入っても石川は、RX-7の松井に対して後追いから距離をぐいぐい縮めて勝利。ベスト8に進出する。ベスト8ではGR86に乗る藤野に引き離されてしまい敗れたものの総合6位という今季最高成績を残した。
翌日の第10戦も松川は通過指定ゾーンを外すなどして単走敗退。いい勢いで走っていた野村も最後にコースリミットを超過して減点を受けるなどして敗退となってしまった。
いっぽう石川はこの日も好調。角度のある進入から、タイミングのいい角度増しで旋回を続け、高得点を獲得。一時はトップに立つ。その後シルビアに乗る中村に抜かれてしまったが単走は2位で通過した。
そして今季最後の追走。ベスト16での石川の対戦相手はシルビアに乗る田野だった。田野は近いドリフトで迫ってきたが、最終的に石川をプッシュしてしまう。これによる減点が大きく、石川も後追いから近いドリフトを見せたため、石川の勝ちが決まった。ベスト8での石川の対戦相手は横井。石川は先行となった1本目に100点のスコアを出す見事な走りを見せたが、接近ポイントは横井に取られてしまう。2本目の後追いでは後半で少し後ろにまわってしまったこともあって逆転はできず、ここで敗退。石川は2戦連続の6位となった。なお、シリーズ最終順位は、石川が15位、松川が25位となった。
2024年シリーズ「総括」
シーズン序盤は、まだマシンの戦闘力が低く、トラブルも多かったルーキーの野村だが、後半にかけて車両は信頼性を増し、追走進出まで“あと一歩”という場面が何度も見られるようになってきた。野村は「グリップが高くない路面でもDIREZZA β02は非常に安定してましたね。途中で引っかかるるとか、極端に滑るとか、そういうのがなく、安定してずっと高いクリップを保ってくれてました」とタイヤへの信頼を語り、「来年に向けて、このオフシーズンのあいだに、クルマもそうですけど、ドライバーもいっぱい練習して。来年『なんか変わったね、圭市』っていわれるような姿を見せれるように。頑張ります」と話してくれた。
そして、やはりシーズン前半はマシントラブルも多かったなかで、後半にかけてはより狙い通りの戦いかたができるようになってきて、右肩上がりに成績を上げてシーズンを終えた広島トヨタ team DROO-Pの松岡監督も「朝の路面温度の低いときから、追走のハーフウェットのときまで、DIREZZA β02はものすごいワイドに使えるんで、これがやっぱりダンロップタイヤの強みだと。さまざまな路面に対してワイドに性能を発揮できるのがダンロップが特に優れている部分」とタイヤの強みを強調。シーズンを振り返ると「最初の追走に残れないところから、ベスト16、ベスト8って着々と来てるんで、そこはね、ここからが楽しみしかないんで、来年も期待してください」と締めくくった。