巨大な十字架!? 奇抜なデザインの無人機「V-BAT」を海上自衛隊が導入。さらに「自爆ドローン」を陸上自衛隊が配備!

米国シールドAI社が開発した垂直離着陸型UAV「V-BAT」。同機は全長2.7m・翼幅3m。この奇妙なデザインの無人機を海上自衛隊が導入することが明らかとなった(写真/アメリカ海兵隊)
現代戦において「無人機」は不可欠な存在となっている。自衛隊もまた、無人機の導入を急いでおり、令和7年度予算では複数の無人機の取得に予算が割かれている。ここでは、来年度に自衛隊がどのような無人機を導入するのか、主に「無人航空機(UAV)」に絞って紹介しよう。
TEXT:綾部剛之(AYABE Takayui)協力/四角号嗎

海上自衛隊は陸上用と艦艇用の2機種を導入

海上自衛隊は2機種を取得する。まず「滞空型UAV」として、米国ゼネラル・アトミクス社製の「MQ-9Bシーガーディアン」を導入することが昨年11月に明らかとなった。同機は翼幅24mで、20~40時間の滞空時間を有する長時間偵察用のUAVであり、地上の航空基地から運用され、有人哨戒機部隊を補完する。

「MQ-9B」は、中高度(数千m)を数十時間飛行する能力を持ち、一般に「MALE(中高度・長時間滞空型無人機)」と呼ばれるタイプの無人機で、「MQ-9 リーパー」をベースに海洋監視機材を搭載したもの。写真はすでに導入されている海上保安庁のもの(写真/稲葉義泰)

次に、『艦載型UAV(小型)』として、導入される米国シールドAI社製「V-BAT」は、冒頭に掲載した写真のとおり非常に面白いカタチをしている。垂直離着陸能力があり、12フィート四方(3.7m四方)のスペースがあれば運用できるようだ。また、巡航時には横向きとなり、翼で揚力を得て飛行するため、最大10時間もの滞空を可能としている。護衛艦のヘリ甲板で運用が可能であり、警戒監視や情報収集に用いられる。

「V-BAT」は大型のダクトファンで垂直離着陸する一方、巡航時には横向きとなって、翼で飛行する。滑走路や専用のカタパルトなどを必要とせず、護衛艦のヘリ甲板で運用できる(写真/アメリカ海兵隊)

自爆ドローンを導入する陸上自衛隊

陸上自衛隊では、偵察用として「UAV(中域用)機能向上型」や「UAV(狭域用)」・「UAV(狭域用)汎用型」などの名称で、部隊の規模にあわせて複数の機種が導入される。また、注目したいのは「小型攻撃用UAV」だ。こちらは偵察も可能だが、弾頭を搭載して目標に突入する、いわゆる「自爆ドローン」である。自爆ドローンについては、ウクライナ戦争でも多数投入されており、ご存じの方も多いだろう。

この「小型攻撃用UAV」にはI型・II型・III型の3機種があり、I型は軽量な個人携行型で主に対人攻撃用の小型なタイプ、II型も個人携行型だが軽装甲車両や小型舟艇を攻撃するタイプ、III型が車載型のやや大型なタイプ、となっている。

I型の候補のひとつ、豪DefendTex社製「ドローン40」。個人携行用のI型は、1m以下のサイズのものが多いが、「ドローン40」は特に小さく、全長わずか12cmだ。いずれの候補も滞空時間は数十分で、行動範囲は10km程度(写真/綾部剛之)
II型の候補のひとつ、イスラエルのIAI社製「HERO120」。全長1.34mで、数十kmの行動範囲を持つ。無人機分野ではイスラエルが先行しているが、パレスチナ問題を巡り同国への批判が高まっており、自衛隊の機種選定にも影響を与えるかもしれない(写真/IAIホームページより)

現時点では来年度予算で取得する機種は明らかになっていないが、これまでに実証試験としていくつかの機種が確認されている。I型では「ドローン40」や「ポイントブランク」、「Q-SLAM」、「ROTEM L」、II型では「ドローン81」や「HERO120」、III型では「スカイストライカー」など。導入される機種も、このいずれかになるのではないだろうか。また、II型は過去の資料で「令和7年度」の装備化を目指すとされており、次年度に取得されるのはII型の可能性が高い。

III型の候補、イスラエルのエルビット社製「スカイストライカー」。車載ランチャーから発射される大型のUAVで、最大100kmの行動範囲を持つ(写真/エルビット社資料より)

諸外国に比べて無人機の導入で出遅れた感のある自衛隊だが、2022年策定の「国家防衛戦略」以降は一転して積極的な導入を進めている。ここで紹介した無人航空機だけでなく、無人車両や無人船など、その幅はとても広い。現在発売中の『自衛隊新戦力図鑑2025』では、自衛隊が導入を予定する各種の無人機について、詳しく情報をまとめている。興味を持たれた方はぜひ、お読みいただきたい。

自衛隊 新戦力 図鑑 2025 サンエイムック

キーワードで検索する

著者プロフィール

綾部 剛之 近影

綾部 剛之

軍事関連をメインとした雑誌/書籍の編集者。専門は銃器や地上兵器。『自衛隊新戦力図鑑』編集長を務めて…