トラックをもっと身近に! いすゞA&Sが手掛けたエルフミオがカスタムの新たな可能性を切り開く【東京オートサロン2025】

普通免許、しかもAT限定免許で乗れるトラックとして話題を呼んだいすゞ・エルフミオ。東京オートサロン2025では、そんな「だれでもトラック」をベースとしたコンセプトカー3台が姿を現した。いすゞA&Sの手によるカスタマイズを見れば、多彩なニーズに対応できるエルフミオの可能性の高さを実感できるはずだ。

普通免許で乗れるエルフミオなら、仕事にも遊びにもとことん使える!

トラックのカスタムと言えば、これまではプロユーザーが愛車に自分好みで施すと相場が決まっていた。かつての映画『トラック野郎』に代表されるような華やかで大規模なカスタムもあったが、昨今はコンプライアンス上のこともあって、その市場は縮小傾向だ。

加えて、エルフシリーズに代表される小型トラックは軽トラックとは違い、まだ商用的なカテゴリーであり、一般ユーザーにとって身近なものとは言えない。だが、そんなトラックの市場に新たな楽しさを吹き込もうとしているのが、いすゞの純正アクセサリーメーカーである「いすゞA&S」だ。

東京オートサロン2025の会場でも抜群の注目度となっていたいすゞA&Sのブース。「エルフミオ カスタマイズ ラボ」と題し、いすゞ純正アクセサリーメーカーの立場から、トラックの新たな可能性を切り開く3台のコンセプトカーを展示した。

いすゞA&Sは昨年開催された東京オートサロン2024において、カスタムしたコンセプトカー2台を初出展。エルフとエルフミオの新しいライフスタイルの提案を行なった。そして今回の東京オートサロン2025においても、新風を感じさせる3台のコンセプトカーを展示している。

ELFmio ADVANCED CONCEPT

その筆頭となったのが、「エルフミオ アドバンスドコンセプト」だ。このモデルは昨年のオートサロンで展示された「エルフ フューチャーアクセサリーズエディション」を進化させたもので、仕事でエルフミオを使うドライバーが楽しく乗ることができるような、エアロダイナミクスなドレスアップを行なっている。

同モデルには、トラックの空力改善ポイントの代表格であるエアディフレクターをはじめ、外装11か所と内装3か所にドレスアップパーツが奢られている。エルフミオを知り尽くしたいすゞのグループ企業がデザインしただけあって、車両の親和性が高い上に、ドレスアップ効果は抜群。小型トラックであるエルフミオが、まるで大型トラック「ギガ」のような大迫力を纏って見る者に迫ってくるのだ。

近未来的なエアロダイナミックスタイルを纏うエルフミオ アドバンスド コンセプト。ベース車はエルフミオ SGグレード シングルキャブ バンボディ。
空力性能向上のための外装パーツを多数採用するが、非現実的なものではなく、実現性を意識してデザインされているのも特徴だ。
エアロバンパーの装着によりフロントマスクは迫力満点。障子を思わせるシグネチャーイルミネーションのデザインは、「和」のテイストを意識したもの。
サイドアンダーパネルは側面下端の整流効果を向上。リヤタイヤを覆いつつ、四隅の踏ん張り感を強調する狙いもある。
ノーマルのホイールアーチが丸いラインなのに対して、フェンダーパネルの装着によって直線的なラインとすることでスポーティ度をアップ。
ホイールカバーによって足元をイメージチェンジ。先進的なデザインが目を引く。
まるでジェットエンジンの排気ノズルのようなエアダクトをもつリヤバンパー。一文字のLEDテールランプもスタイリッシュだ。
キャブとの一体感を重視してデザインされたエアディフレクター。
サイドミラーの代わりにカメラを装備。空気抵抗の低減のほか、環境に左右されない視認性の確保といったメリットがある。
インテリアパネルはラメ入りの塗装とすることで華やかさを演出する。
ブラックを基調として、シボレザー調とスエード調生地を組み合わせたシートカバーを装備。
カメラ化されたサイドミラーの映像は、左右のモニターに映し出される。液晶の表面には透過式レザー調フィルムを採用し、先進的な映像表現を具現化した。

ちなみに、「フロントグリルガーニッシュ」と「バンパーグリル」に関しては2025年3月に市販化が決まっている。これ以外にも、市場の反響次第では新たなアイテムが発売される可能性は高そうだ。いわゆる“光りもの”ではない乗用車ライクなカスタムによって、エルフミオの新たな価値が見出されることだろう。今後もいすゞA&Sの商品開発に期待したい。

フロントグリルガーニッシュとバンパーグリルを装着したエルフ。東京オートサロン2024に出展されたコンセプトモデルで好評だった架装部位を基にユーザーの声も取り入れながら開発されたアイテムで、2025年3月の市販化が決定した。
上がフロントグリルガーニッシュ(メッキ)、下がフロントグリルガーニッシュ(ホワイト)。
上がバンパーグリル(メッキ)、下がバンパーグリル(ホワイト)。

ELFmio CROSS CONCEPT

新たな価値と言えば、それは「エルフミオ クロスコンセプト」からも強く感じられる。カスタムの世界で人気があるカテゴリーのひとつ“軽トラック”は、ここ数年ハード系のドレスアップを好むユーザーが多い。荷台にユーティリティフレーム、キャビン上部には多数のワークライトが装着されたキャリア、さらにフロントはガード、タイヤはオフロード系を装着することで、クロスカントリー4WDのような佇まいにするのである。

そんな軽トラカスタムを得意とする「ハードカーゴ」というメジャーなカスタムビルダーとコラボレーションし、いすゞA&Sのセンスと融合して生まれたのが同コンセプトモデルだ。時代の空気感に実にマッチしたカスタムトラックで、ミリタリーカーのようでもあり、オーバーランダーにも見えるところがいい。

仕事と遊びの両方でとことん使えることを目指したエルフミオ クロス コンセプト。ベース車はエルフミオ SEカスタム シングルキャブ 平ボディ。
軽トラのカスタマイズでその名を知られるハードカーゴとのコラボレーションで仕立てられている。荷台横にはサービスホールが多数設けられたユーティリティサイドパネルを装備。

フロントはゴツ系のバンパーガードと多連装ワークラート&バー、ルーフラックという定番アイテムで飾り、そこに大いに存在感を放つ荷台のベースフレームが加わる。内外装29か所にもおよぶドレスアップパーツの美点には枚挙にいとまがないが、タイヤもトーヨータイヤとのコラボで「オープンカントリー」のトラック専用タイヤ(展示参考品)を装着するなど、細部へのこだわりがとにかくすごい。

見た瞬間から心奪われるデザインは、まさに機能美あふれるもの。というのも、このモデルは“仕事”と“遊び”をクロス(両立)させるエルフミオというコンセプトによって生まれているからだ。オンタイムでは仕事に使い倒し、オフタイムはアウトドアレジャーを楽しむ。まさに、小型トラックの新基軸が生まれそうな1台である。

多彩なアレンジが可能なベースフレームを荷台に装着。ユーテリティサイドパネルやユーティリティバーなどが追加されている。
バンパーやグリルには、傷に強いラプター塗装が施されている。そして、タフなブルバーもアドオン。
キャビンにはルーフキャリアを装備。荷台上部のユーティリティバスケットと高さを合わせることで、荷台より長いアイテムを積載することが可能に。ワークライトはシリコン製ガードを装着。
後アオリの上部には横開きのリヤゲートを追加することで、荷物の落下を防止。
サイドオーニングは3mの長さがあり、アウトドアで活躍するのはもちろん、仕事中の休憩スペースにも。
サイドのフレームに取り付けられているのは「竹ぼうき入れ」。こうしたユーザー目線のアイデアが随所に盛り込まれている。
踏み台としても使えるサイドステップはタフなルックスも○。フューエルタグやアオリ開閉時の衝撃を吸収するカラープロテクターも見逃せない。
タイヤはトーヨータイヤとのコラボレーションで実現したエルフミオ クロス コンセプト専用オープンカントリー(コンセプトタイヤ)。ラギッドなパターンデザインが車両にハマっている。サイズは195.75R15 109/107N。
マッドフラップにはスチールプレートを組み合わせることで耐久性を向上。モーターサイクルのカスタムマフラーをモチーフにしたマフラーカッターも目を引く。
センターパネルやエアコン吹き出し口周辺のパネルは車体色と合わせてコーディネート。ダッシュボードマットはスエード調で質感が高く、日射によるダッシュボードの劣化を防ぐ効果も。
シートエプロンも車体色とコーディネートされたカラーが楽しい。簡単に取り付け/取り外しができるのもメリットだ。キャブ後方にはストレージパネルを配置し、ヘッドレストを組み合わせた。

Travio EXPEDITION STRIKER CUSTOMIZE CONCEPT

最後の1台は、より現実的なコンセプトカーと言える。ここ10年間、需要が右肩上がりのキャンピングカーだが、“キャブコンバージョン(通称キャブコン)”と言われるタイプでは、ベースに小型トラックベースの専用シャシーが使われることが多い。これまで市場では、トヨタ「カムロード」というキャンピングカー専用シャシーがほぼ独占状態だった。

だが2024年11月に、エルフミオをベースのキャンピングカー用シャシー「トラヴィオ」がデビュー。キャンピングカービルダー、ユーザー共に、新しい選択肢が加わったのである。

トラヴィオの最大の特徴は、2017年3月12日以降に普通免許を取得した人でも乗れることだ。いすゞにはこれまでも「ビーカム」というキャンピングカー用シャシーがあったが、これは車両重量が3.5tを超えてしまうため、前述の免許条件の場合は準中型免許を取得しなければならなかった。エルフミオ同様に、この縛りから解放されているトラヴィオは、より多くのユーザー層に訴求できるモデルというわけだ。

今回出展された「トラヴィオ エクスペディション ストライカーカスタマイズコンセプト」は、ビーカムベースの数々のキャンピングカーを手がけてきた「日本特種ボディー」が架装を担当。運転席のキャブと居住空間のシェルをあえて結合しないことでシャシーのねじれを最大限生かしてタイヤの接地性を高め、走破性能の向上を実現しているという。

普通免許で運転できるキャンピングカー専用シャシー「トラヴィオ」に、日本特種ボディー社が架装した新型キャンピングカーが「エクスペディションストライカー」。展示車両はそれをベースにしたカスタマイズモデルで、フロントグリルガーニッシュ(市販予定)やランプカバー(ブラック塗装)などが装着されている。
エクスペディションストライカーのシェル部分は、キャンピングカーとしては日本初となるオールアルミ製を実現。高強度かつ軽量なシェルを実現している。

もちろん、運転席と後部居住空間を結合させるキャブコンを製造することも考えられており、運転席キャビンをアップしなくても、整備ができる構造になっている。また、フレームの強度やサスペンションのセッティングなどの点でも後発らしく先進性が高い。

特に安全装備面では、ライバルよりも数歩先んじている。ダッシュボード上に設置されたステレオカメラに加えて、バンパー内に3つのレーダーセンサーを設置。これにより直進時の前方の感知のみならず、右左折時の歩行者や自転車との接触事故の防止機能が備わっているのが特徴だ。

価格面ではライバル車よりも高くなりそうだが、昨今はキャンピングカー、とくにキャブコンの事故がクローズアップされることが多いため、トラヴィオの安全性の高さにはユーザーも注目するのではないだろうか。

ダイネットは4名がくつろげるスペースを確保。テーブルを下げてマットを展開すれば、フロアベッドに変身する。
バンクベッドのサイズは1900mm×1600mm。物置のスペースとしても重宝しそうだ。
キッチンにはシンクや電子レンジ、冷蔵庫などが備わる。
シェルの右後方には、車内にアクセスできるバゲッジドアを装備。前方の窓は結露しにくいアクリル押し出しタイプ。
NTB(日本特種ボディー)とTravioのロゴが入ったオリジナルのパネルでインテリアをプチカスタマイズ。
サイドアンダープロテクターとフェンダーパネルカバーの装着でアクティブな印象に。ホイールは純正をマットブラック塗装したもの。
トーヨータイヤとのコラボレーションによって実現した「DELVEX M135 TVコンセプトタイヤ」を履く。サイズは185/75R15 106/104N(リヤダブル)。

冒頭でも書いたが、これまでのいすゞトラックは一般ユーザーにとって必ずしも身近なものではなかった。だが、かつてワンボックスバンが単なる“働くクルマ”であったのが、いまや一般ユーザーに広く浸透したように、今後はエルフミオのような小型トラックもまた一般化する可能性は大だ。まさにそういう近未来を具現化した3台を、いすゞは「夢」というカタチで魅せてくれたのである。

また、いすゞのディーラーが近くに見当たらないという方のために、見積もりから車両契約までをオンラインでサポートしてもらえる「エルフミオストア」も開設されている。アクセサリーアイテムを選んで、装着状態の車両の様子を3Dシミュレータで確認することも可能。興味がある方は、ぜひアクセスしてみていただきたい。

エルフミオストア https://www.isuzu.co.jp/product/elfmio/elfmiostore/

オンラインサービス「エルフミオストア」の見積もりサービスでは、3Dシミュレータによってパーツや用品の装着状態の姿を確認可能。自分だけの1台を妄想カスタムしてみるのも楽しい。

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著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…