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アメリカン・モーターカルチャーの真髄「STREETROD」

まばゆいばかりのマシンが会場を埋め尽くす『32nd YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW』(以下、HCS)にあって、ショーの花形となるのが、1949年までに製造されたクルマをベースに、公道走行を前提に製作したHOTROD(ホットロッド)……すなわち、STREETRODだ。

歴史を辿れば禁酒法時代のアメリカで密造酒の運び屋たちが「誰がいちばん速いか」を決めるイリーガルな公道レースにルーツを持つSTREETRODは、第二次世界大戦後に戦場から復員してきた若者たちを中心に発展したアメリカンモーターカルチャーだ。

フラットヘッドV8を搭載するフォード・モデルB(通称DEUCE)、あるいは直列4気筒や直列6気筒エンジンを搭載する戦前型の大衆車をベースに、心臓部をシンプルでコンパクト、おまけにチューニング次第で如何様にも化けるアメリカンV8エンジンに積み替え、さらには軽量化によって走りに不必要なパーツを取り去って作られたSTREETRODだったが、1970年代から全米各地でカーショーが開催されるようになると、スピードよりも派手で奇抜な”魅せる”ことを重視したカスタムへと変化して行った。

そんなSTREETRODは1950年代の第一次ブーム以降も白人男性の間で人気保ち続け、現在ではチカーノやアフリカン・アメリカンのLOWRIDER(ローライダー)や、アジア系のスポコン(スポーツコンパクト)と並びアメリカンモーターカルチャーを語る上でなくてはならない存在となっている。

『ヨコハマホットロッドカスタムショー』は国内最高峰のSTREETRODの祭典
日本でアメリカ車というとマッスルカーやSUV、ピックアップトラックなどが人気となっているが、アメリカではSTREETRODこそがモーターカルチャーの一丁目一番地。全米各地では「Goodguys Rod & Custom Association」(会員数7万人を数える北米最大のSTREETROD&CUSTOMの組織)を中心としたモーターショーが毎月のように開催され、ファン人口の多さでは他のジャンルを凌ぐほどだ。

ところが、日本では馴染みの薄い戦前のアメリカ車をベースにしたカスタムであることに加えて、ベース車両の希少性や国内に売り物があっても中古車は高値安定傾向にある上、保管場所の問題(STREETRODを維持するには屋根付きの車庫がほぼ必須)、誰もが振り返るような魅力的なマシンに仕上げるには相応の資金と技術力が必要なことがネックとなってファン人口は少なく、残念ながらUSAほどの盛り上がりを見せてはいない。

けれども、STREETRODがイマイチ盛り上がりに欠ける極東の島国にも伝統的なアメリカンモーターカルチャーの世界を心から愛するファンは存在する。彼らにとってはMOONEYES主催のモーターショーは、日本に居ながらにしてアメリカのモーターカルチャーの真髄に浸れる数少ないイベントとして心の拠り所となっている。

なかでも毎年12月の第1日曜日に開催されるHCSは、USAからのゲストカーの参加に加え、国内でも有数のHOTRODビルダーたちが腕によりをかけてカスタムしたSTREETRODが多数エントリーすることで知られている。そんなHCSは文字通りの国内最高峰のカー&バイクショーであって、HOTRODフリークにとっては必見のイベントとなっているのだ。

2024年12月1日(日)に開催された今回のHCSにも、アメリカ本土のショーでアワードを狙えるような素晴らしいマシンが全国から集結した。インドアイベントということもあり、これほど密度が濃く、ハイレベルなモーターショーは他にないだろう。今回はそんなHCSにエントリーしたSTREETRODを写真を中心に紹介して行くことにする。

『第32回ヨコハマホットロッドカスタムショー』にエントリーしたSTREETROD!











