日産R32「スカイラインGT-R NISMO」は441万円! 500台のグループAホモロゲモデル即完売【今日は何の日?2月22日】

R32型スカイラインGT-R NISMO
R32型スカイラインGT-R NISMO
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日2月22日は、日産自動車の「R32型スカイラインGT-R NISMO」が発表された日だ。R32型スカイラインGT-R NISMOは、全日本ツーリングカー選手権(JTC)のグループAに参戦するためのホモロゲーションモデルであり、限定500台で発売された。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・日産 歴代GT-Rのすべて、オートスポーツ、レーシングオン、web option

■レースで勝つために開発されたスカイラインGT-R NISMO

1990(平成2)年2月22日、日産自動車が「R32型スカイラインGT-R NISMO」を発表(発売は、3月11日)。当該モデルは、ツーリングカーレース参戦のためのホモロゲーションを取得するために限定500台で販売された、NISMOによるレーシングチューンした高性能モデルである。

R32型スカイラインGT-R NISMO
R32型スカイラインGT-R NISMO

スリムになって登場したR32型スカイライン

8代目「R32型スカイライン」
1989年にデビューした8代目「R32型スカイライン」

1989年5月、8代目となる「R32型スカイライン」がデビュー。R32型は、先代に対してボディサイズをスケールダウンして走りを重視し、4ドアセダンと2ドアクーペが設定された。

8代目「R32型スカイライン」
1989年にデビューした8代目「R32型スカイライン」

パワートレインは、1.8L直4 SOHC、2.0L直6 SOHC、同DOHC、最高出力215psを発揮する同DOHCターボエンジンの4種エンジンと、5速MTおよび4ATの組み合わせ、駆動方式はFRである。

8代目「R32型スカイライン」
1989年にデビューした8代目「R32型スカイライン」

ボディのスリム化と軽量化に加えて、サスペンションを4輪マルチリンクに変更することによって、R32型は一段と優れた走り披露した。

R32型スカイラインに16年ぶりにGT-Rが復活

R32型スカイラインGT-R
1989年に16年ぶりに復活したGT-R、「R32型スカイラインGT-R」

そして同年8月には、16年ぶりに4WDの高性能「スカイラインGT-R」(BNR32)が復活した。R32型GT-Rの開発にあたっては、目標は“レースに勝てる、勝ち続ける圧倒的な速さを持つクルマ”であり、世界トップクラスのロードカーになることだった。

R32型スカイラインGT-Rに搭載されるRB26DETT型エンジン

レーシングマシンとしてチューニングし、ツーリングカーレースのグループAカテゴリーに参戦することを前提に、600psを超えるようなポテンシャルを持つ新たな2.6L直6 DOHCターボ(RB26DETT型)エンジンの開発と,

その強力なパワーをフルに路面に伝えられる4WDシステムの開発が行なわれた。

そして出来上がったGT-Rは、最高出力280ps/最大トルク36.0kgmを発揮する2.6L直6 DOHCツインセラミックターボエンジンを搭載。4WDシステムは、電子制御トルクスプリット4WD“アテーサE-TS”、さらに4輪操舵4WS“スーパーHICAS”も採用された。

大型エアインテークを組み込んだ迫力あるフロントマスクと前後プリスターフェンダーにリアスポイラー、16インチアルミホイール、専用バケットシートなどが装備されたR32型スカイラインGT-Rの価格は、445万円と高価なものだった。

グループAで勝つために生まれたGT-R NISMO

R32型スカイラインGT-R NISMO
開発中のR32型スカイラインGT-R NISMO

翌1990年2月のこの日、500台限定でNISMOによるレーシングチューンしたR32型スカイラインGT-R NISMOが発表され、3月11日から発売が始まった。

R32型スカイラインGT-R NISMO
開発中のR32型スカイラインGT-R NISMO

GT-R NISMOは、ツーリングレースのグループAに参戦するために製作され、グループAの規則で認められていたエボリューションモデルである。エボリューションモデル公認の条件であるES(Evolution sportive du type)の500台以上の追加生産が必要との規約に準じているのだ。

「R32型スカイラインGT-R NISMO」のコクピット
「R32型スカイラインGT-R NISMO」のコクピット

グループAでは、市販車GT-R NISMOをレースマシンに改造できる範囲は限られている(レギュレーションにより変更できない)ため、GT-R NISMOにはレースチューニングする際に有利になるようなスペック設定が求められる。

「R32型スカイラインGT-R NISMO」のフロントシート
「R32型スカイラインGT-R NISMO」のフロントシート

そのためGT-R NISMOのエンジンには、レースマシンとして600ps以上を確保できる大容量のメタルターボが採用され、冷却性能を高めるフードトップモールやフロントバンパーダクトが装備された。またサイドシルプロテクター、リヤの小型スポイラーなどGT-Rとは異なるエアロパーツを装着。一方、軽量化のためにABSの廃止、エアコンとオーディオの未装着、リヤワイパーの廃止などレースに不要な装備は除かれた。

R32型スカイラインGT-R NISMO
1990年に500台限定で販売された「R32型スカイラインGT-R NISMO」のリアビュー

GT-R NISMOの最高出力と最大トルクは、ベースのGT-Rと同じ280ps/36.0kgmで、車両価格は441.0万円に設定。ただし、GT- NISMOはレースマシンを前提にセラミックターボから大容量メタルターボとしたことや市販化のために触媒付きの排気系であることから、日常的に使うシーンではGT-R NISMOよりもベースのGT-Rの方がレスポンスよく、力強い走りができるのだ。ちなみに価格441万円は、現在の価値では約597万円に相当する。

スカイラインGT-Rは破竹の29連勝でグループAを制覇

全日本ツーリングカー選手権グループAで圧倒的な強さを見せた「R32型スカイラインGT-R NISMO」マシン

GT-R NISMOベースのレースマシンは、大型メタルターボをフルに使って、排気系もNISMO専用設計にするなどして最高出力は600ps超を発生した。

カルソニック・スカイラインとリーボック・スカイライン
カルソニック・スカイラインとリーボック・スカイライン

そしてGT-R NISMOの発売から1週間後の“西日本オールジャパンツーリングカー300km”で、ついにグループAに参戦。スカイラインGT-Rは、予選から圧倒的な速さを見せつけ、星野一義選手が駆るカルソニックスカイラインがポールポジション、2番手には長谷見昌弘選手のリーボックスカイラインが続き、決勝レースでも2台のGT-Rが終始リードし、見事1-2フィニッシュでデビュー戦を飾った。

カルソニック・スカイライン
星野一義選手のカルソニック・スカイライン
アクシア・スカイラインGT-R
清水和夫選手が戦っていたアクシア・スカイラインGT-R

このデビュー戦以降、GT-Rは全戦全勝、破竹の29連勝を記録。まさにグループAレースを完全制覇する圧倒的な強さだったのだ。

29連勝でグループAを制覇
29連勝でグループAを制覇

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代表的なホモロゲーションモデルとしては、スバルの「インプレッサWRX」と三菱「ランサーエボリューション」があるが、ラリーで勝つためにバージョンアップしてその都度ホモロゲモデルを販売し、即完売する人気だった。このR32型スカイラインGT-R NISMOも即完売したそうだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…