日産の人気リッターカー・初代マーチに「マーチターボ」を114.5万円で追加【今日は何の日?2月18日】

日産「マーチターボ」のエンジンルーム
日産「マーチターボ」のエンジンルーム
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日2月18日は、先進のリッターカーとして高い人気を獲得していた初代「マーチ」のマイナーチェンジで「マーチターボ」が誕生した日だ。走りを楽しむスポーツ志向の若者向けに投入したのだ。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・日産 歴代マーチのすべて

■人気のリッターカー「マーチ」にターボモデル追加

1985(昭和60)年2月18日、日産自動車は1982年にデビューして人気を獲得していたリッターカー「マーチ」に、FFホットハッチ「マーチターボ」を追加した。同クラスのターボモデルの中でもトップクラスの最高出力85psを発生し、リッターカーながら力強い走りを披露した。

日産「マーチターボ」
日産「マーチターボ」

日産初となるリッターカーのマーチ

日産初代「マーチ」
1982年にデビューした日産初代「マーチ」

1982年10月、日産初のリッターカーであるマーチがデビュー。内外装の基本デザインは、イタリアの巨匠ジウジアーロが手掛け、直線基調のスタイリッシュなハッチバックの空力性能は、クラストップレベルのCd値0.39が達成された。

日産初代「マーチ」
日産初代「マーチ」の空力

パワートレインは、日産初のアルミブロックを使った最高出力57ps/最大トルク8.0kgmを発揮する1.0L 直4 SOHCエンジンと4速/5速MTおよび3速ATの組み合わせ。車重620kg前後の軽量ボディに軽量エンジンを搭載して、軽快な走りと軽自動車に迫る優れた燃費を記録した。

日産「マーチ」のアルミシリンダーブロックとクランクシャフト

マーチは、世界戦略車として位置づけられ、欧州では「マイクラ」の車名で販売され、洗練されたクリーンなスタイリングと運転のしやすさが人気を呼び、日本と同様、欧州でも人気を獲得した。

ターボモデルの追加で人気を加速

日産「マーチターボ」
1985年にデビューした日産「マーチターボ」

軽量で俊敏な走りが持ち味のマーチはラリーでも活躍したが、ライバルがターボ化するなどして性能的に見劣りするようになった。
そこで日産は1985年2月のこの日に、マイナーチェンジで投入したのがマーチターボだ。

日産「マーチターボ」のエンジンルーム
日産「マーチターボ」のエンジンルーム

エンジンは、NAの1.0L直4 SOHCエンジンにターボを装着し、最高出力は57psから85ps、最大トルクは8.0kgmから12.0kgmへ大幅に向上。マーチは、当時コンパクトカーのターボ車では珍しかった電子制御噴射を採用し、エンジンとターボが精度よく制御できたのが強みでもあった。

日産「マーチターボ」のエンジン
日産「マーチターボ」のエンジン

マーチターボは、マーチの最上級スポーティグレードとして設定され、外観もドレスアップされた。具体的には、ボディ前後にエアダム一体式の大型エアロスポーツバンパー、フロントには丸型フォグランプが埋め込まれた。また、インパネの基本デザインはNAと同じだが、スピードメーターはデジタルとなり、クラスター両脇にサブメーターがデザインされた。

日産「マーチターボ」
日産「マーチターボ」のスポーティなフロントシート

足回りとブレーキもターボ用に専用チューンされ、軽量なマーチターボは過給の威力でパワフルな走りが実現され、走り好きの若者から注目を集めてマーチの人気を加速した。

日産「マーチターボ」
日産・マーチのマイナーチェンジで誕生した「マーチターボ」

車両価格は、114.5万円(5速MT)/118.2万円(3速AT)に設定。当時の大卒初任給は、14万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約188万円/194万円に相当する。ちなみに、NAより30万円程度高額だった。

日産「マーチターボ」
日産「マーチターボ」のリアビュー、典型的な2ボックスのハッチバックスタイル

最強の118psを誇るスーパーターボも登場

日産「マーチスーパーターボ」
1989年にデビューした日産「マーチスーパーターボ」。リッターあたり118psを発生するモンスターマシン

1989年1月には、コンパクトカーのモンスターと呼ぶに相応しい、驚きの「マーチスーパーターボ」がラインナップに加わった。マーチターボのエンジンにスーパーチャージャーを追加したのだ。

日産「マーチスーパーターボ」
日産「マーチスーパーターボ」のシステム

ターボとスーパーチャージャーは直列に配置され、低回転域ではスーパーチャージャーのみが過給を行ない、回転が上がってターボが利き始めるとスーパーチャージャーとターボの両方で過給、高回転域ではターボのみで過給する。両方の強みを生かして、両方の弱みを補填するシステムである。

全域での性能向上とレスポンスを向上したマーチスーパーターボは、最高出力110ps/最大トルク13.3kgmを発生。そのパワーは、1.6Lクラスのスポーツモデルさえ上回り、リッターあたりの出力は何と118ps、この値は当時国産車最強だった。

マーチスーパーターボには、その高性能ぶりを象徴するような大型フォグランプを組み込んだ専用グリルや大型バンパー、リアスポイラーなどが装備され、インテリアも3連補助メーター、10,000rpmまで刻印されたタコメーター、本革巻きステアリングなどスポーティにまとめられた。

もちろん、このパワーを支える足回りやブレーキは専用チューンされたが、軽量なマーチにこれだけのハイパワーエンジンを搭載すると、相当なじゃじゃ馬なので高度なドライビングテクニックが必要とされた。
ちなみに車両価格は、130.8万円(5速MT)/132.6万円(3速AT)、同時期のマーチターボより約5万円高く設定された。

マーチ スーパーターボ リトルダイナマイトカップ仕様
「マーチ スーパーターボ リトルダイナマイトカップ仕様」1987年、草の根モータースポーツ振興のためのワンメイクレース「マーチ・リトルダイナマイトカップ」が始まった際、参戦者へレンタルマシンで提供されたのが、NISMO製作によるこの「マーチ スーパーターボ」。そのエンジンは、全回転域での過給コントロールのため、低域をスーパーチャージャーに、高域をターボチャージャーに受け持たせた画期的な仕様で、排気量987ccにして110psを発生しました。1988年8月には、排気量をモータースポーツのクラス分類に合わせて930ccに縮小しつつも同等の110psを発生する「MA09ERT型」搭載の競技専用車「マーチR」が発売され、1989年1月には、同一エンジンを搭載したロードカー「マーチ スーパーターボ」もリリースされた

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コンパクトカーに、ターボとスーパーチャージャーの両方を装着するとは、驚きである。これも、日本中が舞い上がっていたバブル好景気のおかげだったのだろう。今では、とても考えられない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…