目次
■シンプル、スマートをアピールするも1代限りで終了したゼスト
2006(平成18)年2月23日、ホンダから「ザッツ」の後継「ゼスト」が発表(発売は、3月1日)された。ゼストは、クラストップレベルの室内空間を持ち、低床で大開口の荷室、力強い走りが特徴で、マルチユースな軽ハイトワゴンだった。

ゼストの前身ザッツは、シンプルさをアピール

ザッツは、3代目ライフの派生車として2002年に誕生した。角を丸めたラウンドスクエアのスタイリングで、全体のフォルムだけでなくヘッドライトやドアミラー、リアコンビランプも同様なイメージのスッキリしたシンプルさを強調。インテリアは、広い室内空間と大型のウインドウガラスによる解放感が特徴だった。
パワートレインは、660cc 3気筒SOHCのNA(無過給)、そのインタークーラー付ターボの2種エンジンと3ATの組み合わせ、駆動方式はFFとフルタイム4WDを用意。また、ボディカラーが多彩で、7タイプのスタンダードカラーと7タイプのツートンカラーという計14色がラインナップされた。
ザッツは、シンプルで使いやすく低価格なこともあり、好調な販売で滑り出したが、その後の販売は伸び悩んだ。同時期に、デザインが類似した三菱「eKワゴン(2001年~)」やスズキ「ラパン(2002年~)」など、同様のシンプルなイメージのライバル車が多かったためであり、約5年の1代限りで生産を終えた。●ザッツを進化させたゼストだが、やはり1代で生産を終える

2007年に生産を終えたザッツの後継として登場したのが、2006年2月のこの日に発表された4代目ライフのプラットフォームを利用したゼストだ。

本家のライフが、女性が好むキュートな雰囲気に対して、ゼストはファミリー層をターゲットにクラストップレベルの広々した室内空間と低床で大開口の荷室がセールスポイント。スタイリングは、左右ヘッドライトの感覚を広げて、その間にメッキを施した直線的で太いフロントグリルバーを装着してワイド感を演出し、全体的にはシンプルながら伸びやかなイメージでまとまっている。

また多彩なシートアレンジや豊富な収納スペースなど、快適性や実用性を高める機能も充実。パワートレインは、ライフと同じ660cc 3気筒i-DSI(2点位相差点火制御)エンジンおよびそのターボ仕様の2種エンジンと4速ATの組み合わせ。

車両価格は、標準グレードが103.95万円、ターボエンジンを搭載したスポーツグレードが131.25万円に設定。ゼストは、シンプルながら広い室内空間や荷室空間など実用性と機能性に優れていたが、人気は限定的でヒットモデルとはならなかった。

ゼストもザッツ同様、1代限り6年で2012年に生産を終えて幕を下ろした。
ゼストはNシリーズに引き継がれて人気爆発
ゼスト(車高1635~1650mm)がデビューした頃には、車高が高いダイハツ「タント(車高1725mm)」やスズキ「パレット(車高1745mm)」といった、車高が1700mmを超えるスーパーハイトワゴンが登場し人気を集めていた。そのような市場の状況変化も、ゼストの人気が盛り上がらなかった要因のひとつだった。

しかし、ホンダはゼストと入れ替わるように2011年末にスーパーハイトワゴンの「N-BOX(車高1780mm)」を投入。N-BOXは、ボクシーなフォルムに便利な両側スライドドアを装備。何よりも最大の特徴は、燃料タンクを運転席の下側に配置する“センタータンクレイアウト“で実現された圧倒的な室内空間の広さだった。
これにより、大人4人がくつろげる室内空間、特に後席は余裕の空間を確保。さらに多彩なシートアレンジに加えて、リアのスライドドアを含め開口部が広いことで乗降しやすく、ユーティリティの高さも高い評価を受けて大ヒット。軽自動車販売トップとなり、現在もその好調ぶりは続いている。

さらに翌2012年には、実質的なゼストの後継車となるNシリーズの「N-ONE(車高1610mm)」もデビュー。こちらも、キュートでスポーティなスタイリングで人気を獲得、さらにN-WGN、N-VANとNシリーズは快進撃を続けている。



・・・・・・・・
シンプルながら広い室内空間が売りのゼストだったが、市場はハイトワゴンが全盛でスーパーハイトワゴンも登場し、車高がハイトワゴンの中でも低目の設定だったことが、ゼストの人気が伸び悩んだ要因のひとつと思われる。しかし、ゼストで磨かれた低床化による室内空間の広さ、扱いやすさなどは、結果としてNシリーズに生かされ花開いたのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。