コンパクトワゴンにミニバンの人気機能を凝縮「ダイハツ・トール」【最新ミニバン 車種別解説 DAIHATSU THOR】

軽自動車のサイズより全幅全長が20〜30㎝ほどサイズアップされ、日常生活の程よい感を見せるのが「ダイハツ・トール」。スクエアなボディゆえ取り回しのしやすさと積載量の高さは満足度も高く、軽自動車に近い運転感覚は軽自動車からの乗り換えにも心配はない。メンテナンスが容易なインテリアや多数の収納と価格もポイント。
REPORT:渡辺陽一郎(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:佐々木萌香

街乗り重視で実用性は超納得 積載性やシートアレンジも◎

トールは2列シートでありながら、コンパクトミニバンに近い機能を備える。標準ボディの全長は3700㎜と短く、全幅も1670㎜に抑えた5ナンバー車だが、全高は1700㎜を上回って後席側にはスライドドアも装着している。タントやN-BOXなど、軽自動車で人気の高いスーパーハイトワゴンの小型車版とも言える。トールはダイハツブランドだが、トヨタもOEM車のルーミーを販売して売れ行きは好調だ。ルーミーは小型/普通車の販売ランキングで上位に入る。

エクステリア

トヨタブランドで販売しているルーミーは外観の一部デザインを除き設計を共用する兄弟車。室内の広さなど実用性に関してはまったく同じだ。一方でライバルであるスズキ・ソリオに比べると全長が短い分だけトールの方が車庫入れなどはしやすいが、後席を最後端までスライドした際の荷室の広さではソリオが勝る。どちらも一長一短なのだ。

トールの魅力は、軽自動車のスーパーハイトワゴンと同じく、運転がしやすくて実用性も高いことだ。サイドウインドウの下端が低い水平基調のボディは、前後左右ともに視界が良い。最小回転半径も大半のグレードが4.6mに収まり、狭い裏道や駐車場でも軽自動車と同様に運転しやすい。

乗降性

車内も広く積載性も良好だ。後席の背もたれを前側に倒して、さらにシート全体を床面へ落とし込むように格納すると、少々操作が面倒だが平らで広い荷室に変更できる。天井が高いため、自転車のような大きな荷物も積みやすい。路面から荷室床面までの高さを527㎜に抑えたから、自転車を積むときも、前輪を大きく持ち上げる必要はない。荷室の床を反転させると、汚れを落としやすい素材が貼られ、タイヤの汚れた自転車を積んだ後の清掃もしやすい。収納設備が豊富に備わることも特徴だ。カップホルダーはペットボトルなどのサイズを調節できるように工夫され、500㎖の紙パックも収まる。インパネ中央の下側には、大きなボックスも装着され、トレーを含めて使いやすい。荷室には照明も備わり、夜間の積載性も優れている。

インストルメントパネル

ダッシュボード上面をできるだけフラットにして広い視界と開放感を得るために、メーターは低い位置に埋めたレイアウト。パーキングブレーキは電動もしくは足踏み式だ。

トールを選ぶときの注意点は、発売から8年を経過したことによる設計の古さだ。車内が広く荷室や収納設備の使い勝手は優れているが、後席の座面は柔軟性が乏しい。頭上と足元の空間はタップリしていて、ボディがコンパクトでも4名乗車は十分に可能だが、長距離を移動するなら座り心地を確認したい。

居住性

走行性能については、エンジンの世代がロッキーなどに比べると古く、1tを超える車両重量に1.0ℓ直列3気筒ではパワー不足を感じる。ターボなら最大トルクが1.5倍に増えて動力性能も向上するが、2500rpm前後でノイズが大きめに響く。ステアリング操作に対する車両の反応も鈍く、悪天候の高速道路では左右にあおられやすい。乗り心地も以前に比べると少し改善されたが、上下に揺すられる傾向がある。

うれしい装備

ドリンクホルダー付きのシートバックテーブル(飛行機や新幹線のような折り畳み式テーブル)に加え、スライドドアの窓にはロール式シェードを備えるなど後席を快適にしてくれる装備が充実。
月間販売台数      750台(24年5月~10月平均値)
現行型発表       16年11月(マイナーチェンジ 20年9月)
WLTCモード燃費     18.4 ㎞/ℓ※自然吸気のFF車 

ラゲッジルーム

これらの欠点があるため、購入時にはしっかりと試乗したい。ライバル車のソリオと乗り比べると良いだろう。それでも充実した収納設備と荷室の優れた使い勝手、多彩なシートアレンジはトールのメリットだ。平坦な市街地を中心に使い、軽自動車のスーパーハイトワゴンではなく、荷室のワイドなコンパクトカーが欲しいユーザーに適している。価格は一番安い「X」のFF車なら、衝突被害軽減ブレーキを装着して156万6500円だ。軽自動車のタント「X」と比べても約2万円安い。優れた実用性と低価格を両立させている。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.164「2025年 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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