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街乗り重視で実用性は超納得 積載性やシートアレンジも◎

トールは2列シートでありながら、コンパクトミニバンに近い機能を備える。標準ボディの全長は3700㎜と短く、全幅も1670㎜に抑えた5ナンバー車だが、全高は1700㎜を上回って後席側にはスライドドアも装着している。タントやN-BOXなど、軽自動車で人気の高いスーパーハイトワゴンの小型車版とも言える。トールはダイハツブランドだが、トヨタもOEM車のルーミーを販売して売れ行きは好調だ。ルーミーは小型/普通車の販売ランキングで上位に入る。
エクステリア




トールの魅力は、軽自動車のスーパーハイトワゴンと同じく、運転がしやすくて実用性も高いことだ。サイドウインドウの下端が低い水平基調のボディは、前後左右ともに視界が良い。最小回転半径も大半のグレードが4.6mに収まり、狭い裏道や駐車場でも軽自動車と同様に運転しやすい。
乗降性


車内も広く積載性も良好だ。後席の背もたれを前側に倒して、さらにシート全体を床面へ落とし込むように格納すると、少々操作が面倒だが平らで広い荷室に変更できる。天井が高いため、自転車のような大きな荷物も積みやすい。路面から荷室床面までの高さを527㎜に抑えたから、自転車を積むときも、前輪を大きく持ち上げる必要はない。荷室の床を反転させると、汚れを落としやすい素材が貼られ、タイヤの汚れた自転車を積んだ後の清掃もしやすい。収納設備が豊富に備わることも特徴だ。カップホルダーはペットボトルなどのサイズを調節できるように工夫され、500㎖の紙パックも収まる。インパネ中央の下側には、大きなボックスも装着され、トレーを含めて使いやすい。荷室には照明も備わり、夜間の積載性も優れている。
インストルメントパネル

トールを選ぶときの注意点は、発売から8年を経過したことによる設計の古さだ。車内が広く荷室や収納設備の使い勝手は優れているが、後席の座面は柔軟性が乏しい。頭上と足元の空間はタップリしていて、ボディがコンパクトでも4名乗車は十分に可能だが、長距離を移動するなら座り心地を確認したい。
居住性


走行性能については、エンジンの世代がロッキーなどに比べると古く、1tを超える車両重量に1.0ℓ直列3気筒ではパワー不足を感じる。ターボなら最大トルクが1.5倍に増えて動力性能も向上するが、2500rpm前後でノイズが大きめに響く。ステアリング操作に対する車両の反応も鈍く、悪天候の高速道路では左右にあおられやすい。乗り心地も以前に比べると少し改善されたが、上下に揺すられる傾向がある。
うれしい装備





月間販売台数 750台(24年5月~10月平均値)
現行型発表 16年11月(マイナーチェンジ 20年9月)
WLTCモード燃費 18.4 ㎞/ℓ※自然吸気のFF車

ラゲッジルーム


これらの欠点があるため、購入時にはしっかりと試乗したい。ライバル車のソリオと乗り比べると良いだろう。それでも充実した収納設備と荷室の優れた使い勝手、多彩なシートアレンジはトールのメリットだ。平坦な市街地を中心に使い、軽自動車のスーパーハイトワゴンではなく、荷室のワイドなコンパクトカーが欲しいユーザーに適している。価格は一番安い「X」のFF車なら、衝突被害軽減ブレーキを装着して156万6500円だ。軽自動車のタント「X」と比べても約2万円安い。優れた実用性と低価格を両立させている。

