歴代名車に懐かしのコンセプトカーも!?『オートモビルカウンシル』のトヨタ・ホンダ・マツダ・三菱・日産の国産メーカーの展示車両を見よ!

ヘリテージカーを中心にしたモーターショー&展示即売会の『オートモビルカウンシル2025』が、2025年4月11日(金)~13日(日)にかけて開催された。このカーショーの見所はたくさんあるが、その中でも国産メーカーの特別展示は見逃すことができない。今回は出展を行ったトヨタ、ホンダ、マツダ、三菱に加え、主催者テーマ展示の日産車を紹介する。

国産メーカーの特別展示に注目! 懐かしのコンセプトカーも見られる貴重な機会

千葉県千葉市の幕張メッセを会場に、2025年4月11日(金)~13日(日)にかけて『オートモビルカウンシル2025』が開催された。このイベントは全国の専門店がレストアしたヘリテージカーを持ち込み、展示・即売を行うカーショーであるが、お楽しみはそれだけではない。開催テーマに沿った主催者テーマ展示や自動車メーカーやインポーターによる特別展示などがあり、実際に会場でクルマを買わずともエンスージアストなら楽しめる内容となっているのだ。

今回は国産メーカーの特別展示をメーカーごとに紹介して行くことにする。国産メーカーは「過去が見た未来」を共通テーマとし、各メーカーは独自のテーマで展示を行った。紹介するメーカーはトヨタ、ホンダ、マツダ、三菱、日産の計5社だ。ただし、昨年までブースを構えていた日産は経営環境の悪化が理由なのか、今回は不参加。日産はヘリテージコレクションの中から車両を主催者に貸し出す形での協力に留まったようだ。したがって、厳密に言えばメーカーの特別展示ではなく主催者テーマ展示となる。

36年ぶりに公開されたトヨタ4500GTが注目を集めたトヨタブース
「TOYOTA CLASSIC」

「TOYOTA CLASSIC」をテーマに掲げたトヨタブースは、目玉として1989年のフランクフルトショーで発表され、同年の第28回東京モーターショーでも公開されたトヨタ4500GTを持ち込み36年ぶりに一般公開した。

300km/hの高速巡航が可能なGTとのコンセプトで開発され、1989年のフランクフルトショーで発表され、同年の第28回東京モーターショーでも公開されたトヨタ4500GT。一時は市販化も検討されたようだが、結局コンセプトカーのままで終わった。

トヨタの説明員によると「すべての車両を保管しているわけではないが、4500GTのような代表的なコンセプトカーは大切に保存している」とのことだ。ほかにも社内のレストアプロジェクトによって蘇ったセリカ1600LB、2026年春に生産終了を予定しているスープラのファイナルエディションが登場したことを記念して、歴代スープラの展示を行った。

トヨタ4500GTのサイドビュー。高速安定性を確保するため、ロングホイールベースの伸びやかなプロポーションとなった。
トヨタ4500GTのリヤビュー。「空気との対話」がスタイリングのテーマとされ、ステーションワゴンを彷彿とさせる、ルーフがボディ後端まで伸びたシューティングブレイクスタイルが特徴となる。
トヨタ4500GTのエンジンルーム。搭載されるパワートレインは初代セルシオ用の1UZ-FE型4.0L V型8気筒DOHCエンジンを4.5Lにスープアップし、バルブ数を4バルブから5バルブに変更。それに6速MTを組み合わせた。最高出力は300ps/6600rpmを発揮。駆動方式はトランスアクスル方式のFRとなる。
1973年に登場した初代セリカLB(リフトバック)。当初クーペのみだったセリカにモデルライフ途中で追加されたスポーツハッチモデル。この車両は2T-Gを搭載する1.6Lモデルで、トヨタ社内の教育の一環で行われたレストアプロジェクトによって新車と見紛うコンディションに修復されている(写真:りな)。
1986年に登場したスープラ(A70型)。この世代からもともと北米名であったスープラを名乗る(先代、先々代はセリカXX)。2代目ソアラとプラットフォームを共有する姉妹車。
1993年に登場したスープラ(A80型)。リトラクタブルヘッドランプを捨て、それまでの直線基調から曲面を多用したグラマラスなスタイリングに生まれ変わった。バブル崩壊とスポーツカー人気の低迷により、モデルチェンジがされないまま2002年の「平成12年度自動車排出ガス規制」で継続が困難になるまでと生産が続けられた。

歴代プレリュードを揃えたホンダブース
「クルマを超えて、クルマを楽しむ Classic Meets Modern and Future」

「クルマを超えて、クルマを楽しむ Classic Meets Modern and Future(クラシック・ミーツ・モダン・アンド・フューチャー)」をテーマにしたホンダのブースは、間もなく復活するスペシャリティクーペのプレリュードをフィーチャー。新型プレリュードを中心に初代から5代目までの歴代モデルを展示した。

ホンダブースに展示された新型プレリュード。2023年のジャパンモビリティーショーでは白で統一されたブースに純白のプロトタイプが展示され、輪郭がぼやけてしまいあまり良い印象を持たなかった。だが、今回は真紅でペイントされた車両が展示されており、車体色ひとつでずいぶん印象が異なる。個人的にはこの車に白は似合わないと思う。グリルに奔るデイライトがメッキ加飾に変更されたこともグッドだ。
新型プレリュードのリヤビュー。ひと頃のホンダ車のスタイリングはキャラクターラインがうるさく感じられて好ましいと思えなかったが、2代目ヴェゼルから面の美しさで魅せるスタイリングに変わった。この新型プレリュードも無駄がなくシンプルなスタイリングで美しい。とくにリヤビューが良い。
「川越ベンツ」の異名で知られる初代プレリュード。真横から見るとメルセデス・ベンツSLC(C107)がそっくりなことが由来となる。
元祖「デートカー」として知られる2代目プレリュード。低いノーズにリトラクタブルヘッドランプを採用したスタイリングが特徴で、日本車離れしたワイド&ローフォルムが人気となった。
1987年に登場した3代目プレリュード。スタイリングは先代のキープコンセプトで、サスペンションを4輪ダブルウイッシュボーンへと一新され、量産車としては世界初の4WSが採用されている。販売面では遅れて登場したS13型シルビアの後塵を拝した。
1991年に登場した4代目プレリュード。コンセプトを刷新し、スペシャリティカーからスポーツクーペとなる。心臓部は2.2直4DOHCで、ホンダのお家芸であるVTECも設定された。CMキャラクターにマクラーレン・ホンダのエースドライバー、アイルトン・セナが起用されたことを覚えている人も多いだろう。
1996年に登場した5代目プレリュード。コンセプトを再びスペシャリティカーに戻され、先代に比べて居住性が向上している。スッキリしたオーソドックスなスタイリングが特徴だ。クーペの冬の時代ということもあり商業的には成功せず、2001年に生産終了。以降、プレリュードは長い休眠期間に入る。

マツダデザインの真髄を見せたマツダブース
「MAZDA DESIGN STORY “心を揺さぶる、モノづくりへの追求”」

「MAZDA DESIGN STORY “心を揺さぶる、モノづくりへの追求”」をテーマにしたマツダのブースは、1962年にイタリアのベルトーネ社へデザインを依頼し、若き日のジョルジェット・ジウジアーロ氏が手掛けたS8Pを筆頭に、第39回東京モーターショーに出展した「マツダ先駆」、現在の魂動デザインの出発点になった「マツダ VISION COUPE」と「マツダ 魁 CONCEPT」の合計4台のコンセプトカーを出展。さらに1990年代のデザインテーマ「ひびきのデザイン」に沿った美しいスタイリングの4ドアセダン・ユーノス500を展示した。

2017年の第45回東京モーターショーに出展されたマツダ「魅」CONCEPT。のちに市販車マツダ3へと発展するプロトタイプである。
マツダ「魅」CONCEPTのリヤビュー。ボディサイズやディテールは市販車のマツダ3とかなり異なる。
2017年の第45回東京モーターショーに出展された4ドアクーペのマツダ VISION COUPE。2018年にフランスで開催された「国際自動車フェスティバル」でMost Beautiful Concept Car of the Yearを受賞している。
2005年の第39回東京モーターショーに出展されたマツダ「先駆」。「大人のための4シーターロータリースポーツ」をテーマにしたロータリーエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッドカー。
1992年に登場したユーノス500。クロノス6姉妹で唯一5ナンバーセダンとなった。その美しいスタイリングは「マエストロ」ことジョルジェット・ジウジアーロ氏が絶賛したとも伝えられ、アルファロメオ156など日本車よりもむしろ欧州車に強い影響を与えた。
1966年にデビューしたスタディモデルのマツダS8P。このクルマはマツダ初のFF車で、なおかつロータリーエンジンを搭載する。のちに初代ルーチェとして市販化されるが、レシプロエンジンを積むコンサバティブなFRセダンとして登場した。
マツダS8Pについてはこちらの記事もご覧ください。

懐かしの名車がずらりと並んだ三菱ブース
「時代を切り拓いてきた名車たち」

「時代を切り拓いてきた名車たち」テーマにした三菱のブースは、1989年の第28回東京モーターショーに出展されたHSR-IIを中心に、同社を代表する歴代モデル3台と最新モデルのアウトランダーPHEVを展示。また、会期中は元F1ドライバーであり、現在は三菱のブランドアンバサダーを務める片山右京氏と、チーム三菱ラリーアートの増岡浩総監督のトークショーも開催され、集まった来場者を大いに沸かせていた。

1989年の第28回東京モーターショーに出展されたHSR-II。1997年のHSR-VIまで続くコンセプトカーシリーズの第2弾。HSRとは「ハイ・ソフィスティケーティッド・ランニング・リサーチ」の略で、心臓部には3.0L V型6気筒DOHCツインターボエンジンを横置きに搭載し、フルタイム4WD、4輪ABS、4WS、4輪独立サスペンション、運転支援技術などの新技術の数々が惜しみなく投入されていた。
「走るシーラカンス」と揶揄された初代・三菱デボネア。1964年の発売開始から1986年のモデルチェンジまで、22年間に渡って生産が続けられた。モデル末期には永田町や大手町以外ではなかなか見かけることがなく、ほぼ三菱役員専用車となっていた。
三菱初のスペシャリティカーのギャランGTO。さまざまなアメリカンマッスルカーをごちゃ混ぜにして縮小したような印象のデザイン。当時の日本車はアメ車のスタイリングに強く影響を受けていた。
GTOの実質的な後継者だが、オイルショックや環境規制強化の影響でスポーツ色が薄くなり、スペシャリティクーペにコンセプトを変更し、1976年に登場したギャランΛ(ラムダ)。
1990年代に登場した初代ディアマンテ。1989年の消費税導入により、それまでの物品税が廃止され、3ナンバーの自動車税が大幅に引き下げられたことが追い風となって三菱はこのクルマでスマッシュヒットを出した。BMWに似たスタイリングと価格の安さも人気の理由となる。
電動化技術と四輪制御技術の粋を集めた三菱のフラッグシップモデルとなるアウトランダーPHEV

不参加の日産は主催者テーマ展示で4台の日産車を展示

残念ながら経営難に喘ぐ日産は今回は不参加。しかし、旧車ファンに人気の日産車の展示がなければイベントが盛り上がらないとして、主催者テーマ展示として日産車4台を会場の出口近くに並べた。

GT-R(スカイライン時代から数えて)とジウジアーロ氏率いるイタルデザインがそれぞれ50周年を迎えたことを記念し、両社が共同企画した50台のみの限定生産車がGT-R50 by Italdesignだ。プロトタイプの発表は2018年6月のことで、2019年9月に市販化された。

その中で注目を集めていたのが2018年6月に発表され、50台限定で販売されたGT-R50 by Italdesignだった。このクルマは日産とイタルデザインの共同企画で生まれた。日本での販売価格は1億4530万5600円(税込)ということもあって当時は話題を集めた高級スポーツカーだ。

GT-R50 by Italdesignのリヤビュー。ベース車は2017~2022年型「GT-R NISMO」で、内外装は日産デザインヨーロッパと日産デザインアメリカが担当し、プロトタイプの開発・設計・製造はイタルデザインが受け持った。チューニングにより最高出力は720psへと強化されている。
GT-R50 by Italdesignの足元に装着されるのは、OZレーシング製21インチサイズのオリジナルホイールだ。
1963年に登場したプリンス・スカイラインスポーツ。スタイリングはイタリアのカロッツェリア・ミケロッティが手掛けた。「チャイニーズ・アイ」と呼ばれるツリ目型ヘッドランプが特色で、クーペとコンバーチブルが用意された。映画『海底軍艦』やTVドラマ『ウルトラQ』などの円谷特撮に登場することでもお馴染みのクルマだ。
プリンス・スカイラインスポーツのリヤビュー。プリンス初の高級パーソナルカーということで、イタリアの職人を招聘して技術指導を受けながら手作業で製造したこともあり、新車価格はクーペが185万円、コンバーチブルが195万円と、現在の貨幣価値換算で2000万円以上に相当する高価格から販売は伸び悩み、総生産台数は60台に留まった。
1963年に登場した2代目ブルーバード(410型)。端正で美しいスタイリングはピニンファリーナが担当した。しかし、当時の日本人にはカーデザインに対するリテラシーがなく、このスタイリングの美しさが理解できず、販売面では苦戦した。
1982年に登場した初代日産マーチ・コレット。デザインの原案はジウジアーロ氏。イタルデザインが日産に提案したデザイン案はフィアット・ウーノに似た実用性と美しいスタイリングを両立させた素晴らしいデザインであったが、日産デザイナーによる改変(とくにリヤエンド)でオリジナルデザインの魅力は薄れてしまった。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…