スズキの世界戦略車「SX4」誕生! スイフトとエスクードの間、小型クロスオーバーSUVは164.85万円で06年に登場【今日は何の日?7月4日】

スズキ「SX4」
スズキ「SX4」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日7月4日は、スズキが得意とするコンパクトスポーツの走りとSUVの機動性を融合させたクロスオーバーSUV「SX4」が誕生した日だ。フィアットと共同開発した小型世界戦略車であり、スイフト、エスクードに続くスズキのコンパクトSUV第3弾である。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・スズキ SX4のすべて、WRCプラス、モーターファンイラストレーテッド

■フィアットと共同開発した世界戦略車SX4

2006(平成18)年7月4日、スズキはフィアットと共同開発した世界戦略車の小型クロスオーバーSUV「SX4」を発売した。コンパクトスポーツとSUVを融合させた“スポーツクロスオーバーハッチバック”と称し、その軽快な走りからWRCやパイクスピークでも活躍した。

スズキ「SX4」
2006年にデビューした「SX4」。スズキとフィアットの共同開発の成果として誕生
スズキ「SX4」
2006年にデビューした「SX4」。スズキとフィアットの共同開発の成果として誕生

フィアットとの共同開発で誕生したSX4

スズキは、1981年8月にGMと資本・業務提携を締結し、2008年まで提携関係は続いた。一方のフィアットは、小型車競争が激化して経営が不安定となり2000年にGMと提携し、2006年まで提携関係は続いた。このように両社ともGMと提携関係にあったことから、スズキとフィアットの小型世界戦略車の共同開発が進んだ。

スズキ「SX4」
2006年にデビューした「SX4」。スズキとフィアットの共同開発の成果として誕生

開発されたのは、スズキの新Aセグメント・プラットフォームをベースとする5ドアハッチバックの小型クロスオーバーSUV。エンジンは、ガソリンとディーゼルを搭載。スズキ製とフィアット製で外観を変更することで、ブランドの差別化が図られた。

日本では車名SX4として2006年7月のこの日に発売され、丸みを帯びたフェンダーを持つヨーロピアンテイストの躍動感のあるウェッジシェイプのスタイリングが特徴だった。デザインは、イタリアのカロッツェリアとして著名なジウジアーロ率いるイタルデザインと協同で行なわれ、ボディサイズはスイフトよりひと回り大きく、エスクードよりひと回り小さい。

スズキ「SX4」
2006年にデビューした「SX4」。スズキとフィアットの共同開発の成果として誕生

エンジンは、最高出力110psを発揮する1.5L直4 DOHCと145psの2.0L直4 DOHCの2種類、フィアット製のディーゼルエンジンは搭載されなかった。トランスミッションは4速ATのみで、駆動方式はFFと電子制御式4WD「i-AWD」が用意された。

スズキ「SX4」
2006年にデビューした「SX4」。スズキとフィアットの共同開発の成果として誕生

i-AWDは、FFに近い状態で走る“2WDモード”、FFから4WD状態まで前後輪へトルク配分する“4WDオートモード”、悪路で威力を発揮する“4WDロックモード(60km/h以上では4WDオートモードに切り替わる)“の3つの運転モードが設定された。

スズキ・SX4に搭載された2種エンジン
スズキ・SX4に搭載された2種エンジン

車両価格は、1.5L仕様の標準グレードが164.85万円(2WD)、2.0L仕様が182.7万(2WD)/203.7万円(4WD)に設定された。また1年後の2007年には、セダンの「SX4セダン」が追加された。

「SX4」のコクピット
「SX4」のコクピット
「SX4」のシートアレンジ
「SX4」のシートアレンジ

SX4は、斬新なコンセプトのSUVだったが、販売面ではやや不満が残る結果となった。

さまざまなフィールドで活躍したSX4

SX4 WRC
2007年からWRC参戦した「SX4 WRC」
SX4 WRC
2007年からWRC参戦した「SX4 WRC」

・WRC参戦
SX4は、その優れた走りを生かしてSX4ベースのラリーマシン「SX4 WRC」で2008年の1年だけだったが、WRCにフル参戦したことで話題となった。ニュージーランドラリーで6位と7位に入り、いよいよ本領発揮かと思われたが、リーマンショックなどの影響でスズキはWRC撤退を余儀なくされた。

2011年パイクスピーク
ガソリンエンジンの集大成として挑んだ2011年パイクスピーク

・パイクスピークで総合優勝
モンスター田嶋こと、田嶋伸博氏が自らハンドルを握り、米国パイクスピークヒルクライムレースで、スズキ「XL7」ベースのマシンで2007年、2008年連覇。2009年には、ベースマシンを「SX4」に変更し、2011年まで3連覇を果たした。パイクスピークは、米国コロラド州ロッキー山脈に位置する標高4301mの山(パイクスピーク)で毎年アメリカ独立記念日前後に開催される、人気の山岳レースである。

2008年に国土交通大臣認定を取得した燃料電池車「SX4-FCV」

・SX4燃料電池車
2008年6月には、SX4ベースの燃料電池車「SX4-FCV」が国土交通大臣認定を取得した。GMと共同開発したSX4-FCVは、GM製の高性能燃料電池にスズキが開発した70MPaの高圧水素タンクと、減速エネルギー回生や加速時の燃料電池負荷を軽減する軽量・コンパクトなキャパシターの採用により走行性能を向上させた。

2代目はSX4 Sクロスとネーミングして登場

SX4の2代目に相当するSX4 Sクロスは、2015年2月に日本でデビューした。SX4よりひと回り大きく、またSUVらしく変貌した。

2006年に登場したSX4 Sクロス
2006年に登場したSX4 Sクロス

パワートレインは、最高出力117psの1.6L直4 DOHCエンジンとCVTの組み合わせ。駆動方式は、FFとスズキ独自の新しい4WDシステム「ALLGRIP(オールグリップ)」を採用。これは、“AUTO”、旋回性能に優れる“SPORT”、走破性に優れた“SNOW”、駆動力を高める“LOCK”の4つのモードを選ぶことで、さまざまな走行シーンにおいて優れた走破性と走行安定性を実現できる電子制御4WDシステムである。

その後SX4 Sクロスは、フロントマスクを変更したり、タイヤの大径化、CVTの6速AT化、レーダーサポートIIによる安全性能の強化などで商品力強化を図ったが、激戦区のクロスオーバーSUVのなかではSX4同様に存在感をアピールできずに、2020年に生産を終えた。

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スズキの登録車と言えば、スイフトの名が上がるが、それ以外のモデルはどうしても印象が薄くなってしまう。激戦区のコンパクトSUVでは、スイフトのように他車とは一味違うスズキらしさをアピールしないと大きなブランのクルマには太刀打ちできない。SX4も、もうひとつアピール力が弱かったのではないか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…