七宝エンブレムの輝きはあせず! バブルが生んだ日産最高級車、インフィニティQ45

日産インフィニティQ45
日産インフィニティQ45。
バブル景気華やかなりし頃、日産が高級車市場に打って出たブランドがインフィニティ。最高級車として発売されたQ45は「ジャパン・オリジナル」というコンセプトのもと独創的なデザインと優れた走行性能を備えていたが、同時期に発売されたトヨタ・セルシオの前に完敗。希少車に属するほどしか売れなかったけれど、30年以上経た今では新鮮な風情を備えていると感じる。そんなQ45をこよなく愛するオーナーを見つけた。

PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)

どの高級車にも似ていないスタイル、これが「ジャパン・オリジナル」だ!【ニューイヤークラシックカーミーティング】

インフィニティQ45は600万円前後という価格帯で1989年に発売された、当時の日産の最高級車。5mを超える全長、1.8mを超える全幅、さらには4.5リッターV型8気筒エンジンは280psと40.8kgmという性能を誇り、ルックスも性能も群を抜く高性能な高級車だった。ところが同時期に発売されたトヨタ・セルシオは大ヒットした一方、Q45の売れ行きは苦戦した。その理由はグリルレスのデザインだったとも言われ、独創的だが万人受けするスタイルとは言い難かった。

日産インフィニティQ45
日産インフィニティQ45。

現在の目で見ると独特のエレガントさを備える典型的な高級車と感じられるのだが、30年以上前は「高級車らしくない」などと評されたもの。その点、世界トップクラスの静粛性を備え、古典的なデザインで発売されたセルシオにはわかりやすい高級感があった。

日産インフィニティQ45
インフィニティQ45のリヤスタイル。

ひとたび走らせると誰もが認める走行性能を備えるインフィニティQ45だったから、デザインを変えれば売れるはず…という思惑により、1993年のマイナーチェンジでグリルを装備することになる。だが、販売が好転することはなく97年まで細々と生産された。

日産インフィニティQ45
七宝焼のフロントエンブレム。
日産インフィニティQ45
リヤのエンブレム。
日産インフィニティQ45
車名を示すエンブレム。

あまり売れなかった車種だから、新車として購入したのは間違いなく日産党で高級車好きだろう。そのため丁寧なメンテナンスをされてきた個体も多い。そう考えると人気が低いため中古車価格は相場も安いけれど、状態は悪くない個体が多いはずで悪くない選択肢とも言えるのだ。

そう考えたのが現車のオーナーである池田慎吾さんで、乗っていてもすれ違うことすら稀な希少車であることもポイントだったそうだ。

日産インフィニティQ45
楕円のドアノブ。
日産インフィニティQ45
今では小さく感じる純正15インチアルミホイール。

池田さんがこのQ45を購入したのは2017年のことで、中古車店に在庫されていた個体を見て購入を決められた。購入の決め手は前述の理由のほかに新車当時は否定的だった人が多いグリルレスのデザインや最高級車であること、さらにはトラブルの原因になりやすいエアサスではないコイルサスペンション仕様だったことなどを挙げている。いかに程度の良い個体でもトラブルになりやすい仕様は極力避けるのが、その後の維持費につながるもの。とはいえサスペンションはエナペタル製に交換したというから、しっかり手をかけていることもお伝えしておこう。

日産インフィニティQ45
痛みの少ないインテリア。
日産インフィニティQ45
走行距離は7万km台。
日産インフィニティQ45
後期型用の時計を移植。
日産インフィニティQ45
シートの状態も良い。

デザインや雰囲気は大事だが、圧倒的なパワーを生み出す4.5リッターV8エンジンも魅力。高級さばかりでなく走行性能でもライバルを圧倒しようと考えた当時の日産らしい作り込みがされている。

現在の走行距離は7万km台だからトラブルとは無縁にパワフルさを楽しまれていると思ったが、購入後に燃料ポンプが交換になり、なんとトランスミッションも壊れてしまったという。やはりパワフルなエンジンに対して容量が足りないのだろうか、性能を堪能しすぎると4速ATが悲鳴を上げてしまうようだ。池田さんはオーバーホールではなくATごと交換することで対処したそうで、維持にはそれなりの苦労もあるのだろう。だが、これだけ独創的なモデルは今後も生まれることはないだろうから、状態の良いものが選べるうちに楽しんでおくのが良さそうだ。

日産インフィニティQ45
パワフルなV8エンジン。
日産インフィニティQ45
純正工具が残されている。
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増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…