護衛艦「あさひ」型は、前身となる「あきづき」型を基に建造された最新の汎用護衛艦になる。1番艦「あさひ」の起工は2015年(平成27年)、進水は翌2016年(平成28年)、竣工は2018年(平成30年)。そして2番艦「しらぬい」の竣工が2019年(平成31年)と、2隻とも新しく、就役間もない新鋭艦という存在だ。
ちなみに「あさひ」型はこの2隻が造られて終了し、後続には多機能護衛艦(FFM)「もがみ」型が準備されている。「もがみ」型は主要寸法など艦体を全体的に小型化し、排水量は約3,900トン。ステルス設計を最大にして搭載する機能も多様に盛り込むもの(「もがみ」型は次回紹介する予定です)。
前述したように護衛艦「あさひ」型は「あきづき」型を土台に造られたため、2隻は全体的に似ている。主要寸法も同じだ。外観上の違いは「OPY-1レーダー」用の多目的アンテナのレイアウトにある。「あきづき」型では前部と後部に分散して配置した4つの多目的アンテナを「あさひ」型では艦橋上部に集めて置いた。イージス艦のように艦橋構造物の4面にアンテナを配置するスタンダードなスタイルに戻ったといえる。このあたりに紆余曲折というか、試行錯誤の様子が読み取れて興味深いと思う。
「あさひ」型の主機・推進方式は、COGRAG(コンバインド・ガスタービン・エレクトリック・アンド・ガスタービン)方式を採用した。これは海上自衛隊の護衛艦として初めて採用した方式で、ガスタービンエンジンと電気推進を使う統合電気推進機関というもの。ハイブリッド車と同じように、内燃機関の低速時の効率の悪さを電気推進で改善し、燃費を良くして航続距離を伸ばすことを目論んだ。省エネや高効率を求める統合推進方式は船舶の世界で注目されており、種類を問わず採用がみられる。
「あさひ」型は対潜戦を重視している。前身の「あきづき」型が防空重視だったのに対し、「あさひ」型は防空能力を個艦レベルに抑えた。「あさひ」型が重視した対潜能力は「マルチスタティック機能」と呼ばれるもの。その向上策として新型音波探知機「OQQ-24アクティブソナー」と「OQR-4曳航式パッシブソナー(TASS)」を搭載し、自艦と僚艦が発信するソナー音波を相互に受信できる機能を持った。僚艦のソナー発信音に対する目標からの反響音を自艦で受信し情報処理できる。つまり僚艦の索敵情報を取得(共有)して攻勢することができ、また、総合して高精度化が図れるシステムだ。この機能は「あきづき」型にも積まれるようになった。
加えて、海自護衛艦で初採用となる「潜望鏡探知レーダー」を2番艦「しらぬい」では装備しており、「あさひ」にも装備が進む。新機能ソナーと探知レーダーの併用で潜水艦を狩り出す能力を高めている。
主砲などの搭載武装類は従来の汎用護衛艦や前身の「あきづき」型と同様なものになるが、対潜用攻撃武器には浅海域潜水艦攻撃用として新開発した12式短魚雷を搭載しているのが注目点だ。
スペック) 主要要目 基準排水量 5,050t 主要寸法 151×18.3×10.9×5.4m(長さ、幅、深さ、喫水) 主機械 ガスタービン2基・推進電動機2基 2軸 馬力 62,600PS 速力 30kt(55.6km/h) 主要兵装 高性能20mm機関砲×2、62口径5インチ単装速射砲×1、VLS装置一式、SSM装置一式、3連装単魚雷発射管×2、哨戒ヘリコプター×1 乗員 約230名