異例の試作車公開! 三菱ふそうの電気トラック「eCanter」次世代モデル、試験車両を初公開

正式公開日は2022年3月16日。その前日報道関係者を対象に、三菱ふそう製 “eCanter” の次期モデルが栃木県さくら市にある喜連川研究所でお披露目された。既にグローバル規模で車両電動化の波が押し寄せていることはご存知の通り。「カーボンニュートラル」の掛け声の下に、EV開発の流れは急速に高まっている。電動トラックで先行する同社は新たな試験設備も含め、EV設備投資を拡大。今回はその見学会も兼ね、EV開発の一端が披露された。

PHOTO & REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)
取材協力●三菱ふそうトラック・バス株式会社

合計100万km以上の走行を目指して着々とテスト中!

カムフラージュ柄でラッピングされた次世代モデル3機種が披露された。試験車両はいずれも平ボディ仕様のトラック。

異例の試作車公開。“三菱ふそう”の電気小型トラックが第二世代モデルへと進化する。今回の報道発表は電動トラックでリードする同社の取り組みを披露するのが狙い。公開の場となったのは敷地面積117万㎡を誇る喜連川研究所。178の実験設備を備え、走行試験路の総延長は14.4kmに及ぶ。その実験設備はさらなるEV開発に伴い、積極的な設備投資を行い、順次刷新されているのである。
同社では2039年までに国内の全新型車両をカーボンニュートラル化すると明言。そのためには“さらなる電動化”を推進すると言う。(もちろん開発は電動化の1本に絞られているわけではない。)

2017年から投入されているeCanterもすでに5年が経過しグローバル市場で350台以上を販売。日本でも110台以上が稼働、累計走行距離は450万km以上に及んでいるそう。下のフリップ(昨年11月時点での公表データ)を見直すと、普及の勢いが伸びていることがわかる。

eCanterは2020年にマイナーチェンジされて安全装備を充実させた。さらに今回披露したモデルは次世代モデルとされている。発売時期や新型車両の詳細についても明らかにされなかったが、その動向について、今年中にはハッキリする模様だ。
目指した進化は架装も含めてラインナップの拡充。現行はGVW(総重量)7.5トンだったが、多彩なニーズに対応できるようにする事。航続距離も伸ばす。様々な車体バリエーションが用意されるだけに、バッテリー搭載もユーザーニーズに応じて選択可能になる。

当然、基本的な航続距離が伸びていることも間違いないが、それについては未公表。唯一明言されたのは、災害時等に役立つよう、給電装置を装備できるよう考慮したと言う。

なお、車両は公開されたものの、許されたのは遠巻きからの外観撮影のみ。室内撮影も接近撮影もNG。ただ初代モデルとはバッテリーが異なっている事、その搭載方法も違う事がわかる。あくまで試作車なので推測に過ぎないが、重量物の搭載レイアウトを見直し、バランスの良い走行性能が追求されているのではないかと思えた。
 バッテリー電圧の高圧化等も含め、実用航続距離や充電時間等、第二世代モデルがどのような進化を披露してくれるのか、楽しみな存在であることは間違いない。

 

※:2021年11月公表時のデータ
現行のeCanter。IKEAでも稼働中。横浜から都内へ毎日の運搬に活躍している。駆動用バッテリーは370V/13.5kWのリチウムイオンバッテリーを6個搭載。最短1.5時間の急速充電(普通充電は約11時間)で約100km走行できる。
フォルムから判断するとキャビンは踏襲されているもよう。最新キャンターに準じ、新型LEDヘッドランプ搭載等でフロントマスクも一新される事だろう。アクティブ・サイドガード・アシストや、衝突被害軽減ブレーキ等、各種安全機能も最新の物へ刷新されているように見える。

実験施設もEV用に次々刷新中。

上はシステムテストベンチ(台上試験装置)。実車を持ち込み、必要な負担を加えながらの模擬走行実験を行うことができる。バッテリーやインバーター等の冷却設備も整えられている。
右はコンポーネントテストベンチ。モーター等単体で台上試験ができる。以前はエンジンテストをしていた場所を転用。上方には圧力センサーの名残が見える。

ここは2021年に新設されたバッテリー分解室。写真の台上で作業する。上には強力な換気装置、下には水を張ったプールがある。そして作業は熱感センサーに見守られている。内部リークや発火等のトラブル時には、台を下降させてプールに水没させる。

2017年、所内各所に設備された50kw DC充電器。写真の急速充電器は、3種のコネクターを持つ。右から順に日本で普及しているCHAdeMO、欧州タイプのCCS、普通(家庭)充電のACにも対応。2021年には将来に備えて、175kW級の高出力急速充電器も追加設置された。

悪路で疲労を促進する耐久テスト。

うねりの多い石畳路を走る次世代eCanterの試験車両。沢山の水溜りが残る様は、堀の深いギャップの多さを物語る。もちろん各車フル積載。実際よりも過酷な状況を課すことで、確かな耐久信頼性を培う。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…