全車3ナンバー化した新型ステップワゴン登場で考える「5ナンバーミニバン」今むかし。

20年以上前のミニバンブームの頃から、「5ナンバーミニバン」という言葉はよく使われた。その主役を担ったのは、ノア/ヴォクシー、セレナ、ステップワゴンなどのハイト系ボックス型ミニバンたちである。エスティマ、オデッセイ、エルグランドのような大型「3ナンバー」ミニバンに対して、「5ナンバーミニバン」と呼称された。新型ノア/ヴォクシーに続いて新型ステップワゴンも、その長い歴史の中で初めて、全グレードが3ナンバーとなったわけだ。

後追いながら、売り上げナンバーを奪取:トヨタ ノア/ヴォクシー

ノアは、その先代にあたる「タウンエースノア」「ライトエースノア」を引き継ぐ形で2001年に誕生した。同様にライトエースを引き継いだのがヴォクシーである。ライトエース、タウンエースと言えば商用バンのイメージが非常に強かったが、その名前が外れたことで、一気に商用イメージを脱することになった。ハードウエア上では、ライトエース、タウンエース時代のFRに決別し、低床FFプラットフォームとなったことも大きい。今に続く稀代の大人気ロングセラーミニバン、ノア/ヴォクシー誕生の瞬間であった。

初代ノア

初代ノア/ヴォクシーの全長は、4580mm〜4625mmと5ナンバー枠までまだ100mm前後の余裕がある小さめのボディだった。全幅は1695mmと、すでに5ナンバー枠いっぱいだ。

初代のヒットを受けて、二代目はキープコンセプトのスタイリング。全長は、4595mm〜4630mmと、わずか10〜15mmの延長に止まる。特筆すべきは全幅で、1695mmの標準車に加え、初めてSi/Sに、1720mm、3ナンバーのワイドボディ(フェンダー)が与えられている。

二代目ヴォクシー

三代目は、現代的にスタイリングが進化し、ボディ一気に大きくなった。全長4695mm×全幅1695mmと、いわゆる5ナンバー枠いっぱいの王道5ナンバーミニバンとなったわけだ。G’s、GR SPORTの追加もあって、最大サイズでは、4795mm×1735mmとかなり立派に育っている。

三代目ヴォクシー

三代目の長いライフを終えて、今年2022年に四代目が登場した。スタイリングはさらに洗練され堂々たる押し出し感も。ボディサイズは、全車4695mm×1730mmだ。これまでは5ナンバーのベースボディがある上で、ワイドフェンダーやバンパー、エアロパーツで上級グレードをこしらえていたが、全車が1730mmとなったことで、初めて、5ナンバーのノア/ヴォークシーが消滅したのである。エアロで各幅していないぶん、四代目ノア/ヴォクシーは、実質的な室内幅が広がるという恩恵を受けている。

四代目ヴォクシー。全長4695mm×全幅1730mm×全高1895mm。新型で初めてベースボディを拡幅し、全車3ナンバーボディになった。塊感のあるデザインで、寸法以上に大きく立派に見えるのが特徴だ。全高は3車中最大の1895mm。意外にも全長は5ナンバーサイズに収まる4695mmに留めているのが、ステップワゴンとは対照的だ。

FRの「バネット」を引き継ぐ形で登場:日産セレナ

初代バネットセレナ

FRシャシーのバネットセレナを経て、二代目のセレナ(C24型)が登場する。99年デビューの二代目セレナは、この世代からFFシャシーに転換した乗用ミニバンという意味でも、初代のノア/ヴォクシーと歩調が合っている。ボディ寸法は、全長4520〜4600mm、全幅1695mmと、ノア/ヴォクシーに近い。

二代目セレナ

三代目のC25型は、2005年に登場。スタイリングはガラリと変わり、新世代感を感じさせた。全長4650〜4725mm、全幅1695mm〜1725mm。いわゆる定石通りの5ナンバーミニバンであり、ハイウェイスターなどエアロ系に3ナンバーの“延長”ボディが与えられている。

三代目セレナ

四代目、C26型は2010年に登場。5ナンバーのベースボディながら、最大全長4770mmと、「セレナは大きい」という印象を与えた一台だ。2016年には現行の五代目にバトンタッチする。e-POWERやプロパイロットが初めて搭載されたセレナである。この最新世代でも、ベースボディは5ナンバーを維持。AUTECH、NISMOなどの上級グレードは、最大で全長4805mm×全幅1740mmとなり、クラス最大サイズである印象を強めた。セレナは2022年にもモデルチェンジが予想されており、ノア/ヴォクシー同様に、5ナンバーボディを捨てるのかどうかに注目が集まる。

四代目セレナ  
五代目セレナ。全長4745mm×全幅1740mm×全高1865mm。近々新型登場が予想されるセレナは他車よりもひと世代古い設計。セレナは、ベースボディは5ナンバーに収まるが、バンパーや加飾により大型化サイズを採用する傾向。モデルによっては全長4770mm×1740mmと、新型化で一気に大型になったステップワゴンとさほど変わらないサイズを採る。

今に至るFFハコ型乗用ミニバンのパイオニア:ホンダ ステップワゴン

1996年、ステップワゴンのデビューはライバルの中にあっても、最も鮮烈だった。トヨタ、日産のように、商用ベース、キャブオーバーベース、FRシャシーのハコ車を持っていなかったホンダは、「クリエイティブ・ムーバー」ステップワゴンを一から開発し、大いにブームとなり、大ヒットを飛ばしたのだ。乗用専用設計のFF、低床スタイルは、その後の流れを見ればわかるように、トヨタ、日産を後追いさせるほどのインパクトを持ったのである。

初代ステップワゴン
二代目ステップワゴン

初代の外寸は、4605mm×1695mmと、ライバルと同等だった。続く二代目では、ライバル同様に全長をやや伸ばし、スパーダのみ1725mmのワイドボディが与えられた。ステップワゴンがライバルと異なるのは、三代目、四代目である。ライバルが5ナンバーサイズをベースに、エアロ系グレードには大振りな拡張ボディを与えていたのに対し、ステップワゴンはスパーダを含む全車を5ナンバーサイズに収めたのだ。3車の中で、最もコンパクトサイズを守ったのは、ステップワゴンだった。

三代目ステップワゴン
四代目ステップワゴン

五代目ではやや変化が訪れる。スパーダ、Modulo Xなどは全長4760mmのロングボディ(=3ナンバー)になった。それでも、全幅だけは全車1695mmの5ナンバーサイズを守っていた。

五代目ステップワゴン

2022年、ノア/ヴォクシーと前後して、新型ステップワゴン(六代目)が登場した。新型ステップワゴンの外寸は、全長4800〜4830mm、全幅は全車1750mm。ベースボディの全長は一気に110mm。そして、2005年の三代目登場から一度も足を踏み入れなかった「3ナンバー幅」に、55mm拡幅で参入することになった。

六代目ステップワゴン。全長4800mm×1750mm×全高1840mm。三代目以降、エアログレードでも5ナンバー幅を守ってきたステップワゴンはクラス最小のサイズ感が特徴だった。新型では一転して、クラス最大の完全な3ナンバーボディを得た。新型スパーダの4830mm×1750mmという寸法は、長さも幅も、現在のMクラスミニバン最大サイズ。参考までにオデッセイは4855mm×1820mmだから、全長は、ほぼオデッセイに迫る。

5ナンバーミニバンから、新たに成熟したMクラスミニバンの時代へ

20年以上にわたって日本国内で重宝されてきたMクラスのハイト系ミニバンは、ほんの少し前までは、「5ナンバー幅に収めないと売れない」と言われ続けてきた。だから各社ともベースボディでは5ナンバーサイズを超えることがなかったし、ステップワゴンはエアロ系さえ含めて5ナンバー幅に収めてきた。世の中の潮目や需要が変わったのか。エスティマ、オデッセイの領域までカバーする必要が出てきたのか。今やMクラスのハイト系ミニバンは豪華で立派になった。トップグレードが400万円近い価格で売られる上級車へと移行してきたこととも、サイズアップと無関係ではないのかもしれない。

著者プロフィール

森本 太郎 近影

森本 太郎

「Motor-Fan.jp」編集長  (株)三栄書房入社後、「アズエフ」「GENROQ」「Option」「AUTOSPORT」「XaCA…