【新型キックス試乗】コーナーで積極的にアクセルを踏んでいきたくなる4WDだ。

マイナーチェンジを受けた日産のコンパクトSUV「キックス」に試乗した。新型のトピックは第2世代e-POWERへの換装と、4WDモデルの追加である。これまであまりバリエーション豊富とは言えなかったキックスだが、内装カラーの追加なども含め、より選びやすい一台になった。
REPORT:山田弘樹 PHOTO:平野 陽

第2世代e-POWERは、フロントモーターを出力アップ

スタイリッシュで愛らしい日産のコンパクトSUV「キックス」が、2020年の日本導入からおよそ2年の歳月を経てマイナーチェンジされた。そのトピックは、シリーズハイブリッドである「e-POWER」が第2世代に突入したこと。そしてそのバリエーションに、待望の4WDモデルが追加されたことだ。

フロントビューではMC前との区別はつきにくい。
リヤビューは、ガーニッシュの追加で上級感が増したイメージだ。
キックスデビュー当初はブラックルーフの2トーンしかなかったが、ブリリアントホワイトパールのルーフも選べるようになった。
左右のクリアランスランプをガーニッシュで連結させている点が、MC前との大きな違い。

同時にインテリアもアップデートが施されており、今回、ブラウンインテリアパッケージがシックな4WDモデル「X FOUR スタイルエディション」に試乗した。

第2世代のe-POWERだが、そのエンジンは1.2直列3気筒(82PS/103Nm)に変わりなし。対してフロントのモーターは95kW(129PS)から100kW(136PS)/280Nmへと出力アップされた。そしてリアには50kW(68PS)/100Nmのモーターが用意され、4WD版はノートオーラオーラと同じ出力を得た。ちなみに燃費性能は、FFモデルがWLTCモード総合で23.0km/ℓ、4WDモデルが19.2km/ℓとなっている。

エンジンのパフォーマンスには変更なし。フロントモーターは、95kWから100kW、260Nmから280Nmへのややパワーアップしている。加えて4WDには、ノートオーラと同じ50kW、100Nmのリヤモーターが追加される。

カドが取れてフラット感を増した乗り心地

元々キックスはツートーンインテリアが魅力的だったが、以前はオレンジ/ブラックしか選べなかった。新型では写真のブラウンツートーン内装、ベージュツートーン内装も用意される。

さてその走りの印象だが、今回許された試乗時間は15分と短く、テストコースを2周ほどしかできなかった。また新旧モデルの比較はなかったため、前期型に対する正確な違いは、正直なところわからない。ただしクルマ単体で見たときの性能は、そのちょうどよい加速力が魅力的だった。FFモデルでの経験と照らし合わせると、「かゆいところに手が届いた」という印象を受けた。

つまりモーターの高出力化と4WD化は、額面通りに効いているということになる。そしてストップ&ゴーが主体の一般公道に出れば、こうした初動の良さはFFモデルとの差となって現れると思う。

対して発電機となるエンジンは、わりと走り始めからブーンとうなりはしたものの、それは今回の走行環境がほぼコースティング領域のない状況だったことも影響していると思う。ただその音量は、きちんと低く抑えられていると感じた。当日はさらに静かな新型エクストレイルへの試乗もあり、セグメントの格差を正直感じたけれど、それでもBセグメントのSUVとして考えれば、第2世代のe-POWERは、十分な静粛性に仕上がっていると思う。

やや固めの印象を持っていた足周りは、リアにモーターを搭載した影響もあってか、その乗り心地から少しカドが取れたような気がする。ただしテストコースのサーフェスもなんだかんだとフラットなため、その正しい評価はやはり一般公道に出てからだろう。

前述した出力アップに対しては、この足周りがきちんと車体を支えて、4WDのトラクションを路面に無駄なく伝えている印象だ。そしてこのシャッキリとした足周りと4輪モーター制御の組み合わせは実に相性がよく、コーナーで積極的にアクセルを踏んで行きたくなる。4WDと第2世代のe-POWERを得たことで、キックスはさらに走りの魅力を底上げしたと思う。

日産 キックス X FOUR スタイルエディション

全長×全幅×全高 4290mm×1760mm×1605mm
ホイールベース 2620mm
最小回転半径 5.1m
車両重量 1480kg
駆動方式 四輪駆動
サスペンション F:独立懸架ストラット式 R:トーションビーム
タイヤ 205/55R17

エンジン 水冷直列3気筒DOHC
総排気量 1198cc
最高出力 60kW(82ps)/6000rpm
最大トルク 103Nm(10.5kgm)/4800rpm

フロントモーター EM47
最高出力 100kW(136ps)/3410-9697rpm
最大トルク 280Nm(28.6kgm)/0-3410rpm

リヤモーター  MM48
最高出力 50kW(68ps)/4775-10259rpm
最大トルク 100Nm(10.2kgm)/0-4775rpm
燃費消費率(WLTC) 19.2km/l

価格 3,281,300円

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

自動車雑誌の編集部員を経てフリーランスに。編集部在籍時代に「VW GTi CUP」でレースを経験し、その後は…