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軽量かつ高強度のSGPを採用した第5世代フォレスター
インプレッサをベースに仕立てたコンパクトワゴンとして97年に初代がデビューしたフォレスター。最初のモデルは後席が狭く、ファミリーユースには向かなかったが、全長4.5mを切る小さなボディに2.0Lターボエンジンを搭載した快速AWDワゴンとして注目を集めた。
特に北米市場では、南部や西部の農業地帯で人気を獲得。かの地の大規模農場は、自宅の敷地内に未舗装路があることも少なくなく、作業用のピックアップトラックやジープより快適で、未舗装路を不安なく走って帰れるフォレスターが重宝されたのだ。
第2世代までは“快速コンパクトワゴン”路線を継承していたが、07年の第三世代以降は、オーソドックスなSUV路線へとシフト。現在のモデルは18年にデビューした第5世代となる。
プラットフォームには、スバル車が共通使用する新世代骨格SGP(Subaru Global Platform)を採用。サイドメンバーを前から後まで連続して通し、衝突荷重を効率よく支持するほか、前後の荷重伝達をスムーズにし、軽量で高強度かつ高剛性のボディを作り上げている。
パワーユニットは水平対向4気筒のガソリンエンジンで、これを縦向きに搭載する。現在は2.0Lの自然吸気エンジンと1モーターを組み合わせたパラレル式ハイブリッドの“e-BOXER”と、レヴォーグにも搭載されている1.8L直噴ターボの2系統。グレード名に“Sport”と付くのが後者だ。
トランスミッションはいずれもチェーン式CVTの“リニアトロニック”を採用。4WDシステムは、前輪側から後輪側に駆動力を配分する電子制御トルクスプリット式を採用し、悪路や雪道で専用制御が選べる“Xモード”を装備する。
運転支援システムは、ステレオカメラを使用して前方の状況を把握する“アイサイト”を標準装備。ドライバーの表情から脇見や居眠りを検知すると警報を発する“ドライバーモニタリングシステム”を、Advance以上のグレードに標準装備(ほかはオプション設定)するなど、ロングドライブ時の安全性向上や疲労軽減のアシスト機能も万全に備える。
モーター出力は小さいが40km/hくらいまではモーター走行できる
試乗車のグレードはX-BRAKE。パワーユニットには“e-BOXER”を搭載し、オールシーズンタイヤのBSエコピアH/L422Plusを装備するモデルだ。
発着点の駐車場は路面が荒れており、大きめのうねりや段差がある。一般の方にとっては迷惑だが、クルマを評価するには好都合の環境だ。
そうした路面を低速で斜めに通過すると、サスペンションの初動感や、ボディの剛性がわかる。最近の国産SUVはみなレベルが高く、フォレスターのサスペンションも、初動からまずまずしなやかに動く。段差通過の当たりも優しく、それほど扁平率の低くない60タイヤを前230kPa/後220kPaと高すぎない空気圧で使っているのが、良い方向に作用していそうだ。
ボディもしっかりしているが、むやみに固めているというより、全体のバランスで入力をいなしている印象。自動二輪に乗る人ならば、「ドゥカティのスチールフレームのよう」と言えば、イメージが掴めるかもしれない。
ブレーキのファーストバイトは強め。なまくらなクルマから乗り換えると、効きすぎるように感じるかもしれない。しかし、慣れれば安心感は高いし、ルーズな履き物では滑らかなコントロールがしにくい=ちゃんとした靴を履く動機付けとなるのは、むしろ良いことだ。
モーター出力は10kWにすぎないが、クリープで発進して穏やかに加速すれば、40km/hぐらいまではモーター走行できる。一般的な市街地の流れに遅れない程度にアクセルを踏むと、発進直後にエンジンが始動するのだが、改善を期待したいのがエンジン始動時のショックだ。
これはD型発売当初から指摘されていることなので、開発陣は耳が痛いかもしれないが、アクセル低開度時やSIドライブのIモード選択時には、加速応答よりスムーズさを優先する制御を導入するなど、何か工夫していただきたいところ。数値より大切なのはフィーリングなのだから。
一方で、エンジンが始動してしまえば、走りは非常に滑らか。モーター出力が小さい上、車重もそこそこ重いので、いかにも「モーターアシストしてます」的な加速力はないが、エンジンがトルクを出すまでの遅れをモーターがうまくカバーしており、合流や追い越しの際には、応答性よく加速できる。「凄みはないけど乗りやすい」という感じで、リラックスしてロングドライブを楽しむSUVには適したキャラクターだと言える。
いつものコース(住宅地を約10km)をいつものように、流れを乱さない範囲でエコドライブした燃費は14.4km/Lと、WLTCモードの郊外路燃費を上回った。以前、東京から山中湖を往復したときには16.3km/Lを記録しており、ロングドライブ適性は、なかなか高いと言えるだろう。
SUBARU FORESTER X-BREAK 全長×全幅×全高 4640mm×1815mm×1730mm ホイールベース 2670mm 最小回転半径 5.4m 車両重量 1630kg 駆動方式 四輪駆動 サスペンション F:ストラット式 R:ダブルウィッシュボーン式 タイヤ 225/60R17 エンジン種類 水平対向4気筒DOHC16バルブ エンジン型式 FB20型 総排気量 1995cc 最高出力 107kW(145ps)/6000rpm 最大トルク 188Nm(19.2kgm)/4000rpm モーター種類 交流同期電動機 モーター型式 MA1 最高出力 10kW(13.6ps) 最大トルク 65Nm(6.6kgm) トランスミッション CVT(リニアトロニック) 燃費消費率(WLTC) 18.6km/l 価格 3,135,000円