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約6割が選択するという4WDの実力は?
三菱のデリカミニが発売されたのが5月25日。それに先駆けて1月13日から予約注文を実施したところ発売前日までに約1万6000台の受注を受け、人気の高さを証明してみせた。
事前情報で4WD車に165/60R15サイズの大径タイヤと専用ショックアブソーバーが採用されていることが周知されたこともあってか、その時点の受注全体のうち約6割のユーザーが4WD車をチョイス。それはクルマの購入条件として燃費の良し悪しがシビアに吟味される軽自動車としては異例のことだ。
もちろん車両本体価格も同一グレードであれば4WD車の方が高くなるので、余程納得のいく走りを実現していないと事前情報で4WD車を選んだ人もがっかりという結果になりかねない。
ということで、6月に開催されたプレス向けの公道試乗会で、早速デリカミニの走りをチェックしてきた。結論から先に言うと、デリカミニの4WD車の乗り味は選んで後悔ナシ! の走行安定性と乗り心地を実感できる仕上がり。2WD車からの価格上昇分を考えても十分に納得できるし、アウトドアが趣味で未舗装路をよく走るユーザーならば積極的に選ぶべき性能を持ち合わせていた。
安心の操縦安定性と極上の乗り心地!
デリカミニのサスペンションは、基本的には先代モデルにあたるeKクロススペース/eKスペースから継承されている。リアサスペンションの形式は駆動方式で異なり、2WD車はトーションビーム式、4WD車は3リンクリジッド式が採用されている。
車名に「デリカ」を冠することになったデリカミニは、より未舗装路での走行安定性を重視した開発が施され、4WD車のみ専用のショックアブソーバーを採用。具体的には2WD車用のショックアブソーバーに内蔵されるイニシャルスペーサーを無くし、圧縮側も伸び側もよりしなやかでリニアに動く減衰特性を実現させている。
また、2WD車用よりも外径が大きい(579mm)タイヤサイズを採用したことで、エアボリュームが増して乗り心地が向上。2WD車より全高が高いのはそのせいで、一見すると腰高な印象を受けるが、乗ってみると路面追従性の高いサスペンションと大径タイヤのおかげで上質な乗り味を実現。
言うなれば、舗装路での乗り心地の良さはそのままに、未舗装路では驚くほどフラットな姿勢を保つイメージ。これまでスーパーハイトワゴンの走りに対して抱いてきた固定観念が崩されるほど、ワンランク上の操縦安定性を実感することができた。
ちなみに今回の試乗シーンでは体感できなかったが、eKクロススペースの時から採用されているグリップコントロールも進化している。
グリップコントロールとは雪道やぬかるんだ道で駆動輪が空転しているのを検知するとブレーキ制御を行い、グリップしている側の駆動力を確保するシステム。デリカミニの生産が開始されるギリギリのタイミングで、もともとデリカD:5に採用されていた機能が追加されることになったそうだ。
例えば除雪がまだ済んでいない道から、除雪が終わっている幹線道路に合流するような際、従来の制御では無駄にブレーキがかかってしまう傾向があった。それをアクセル操作を優先する制御に切り替えたことで、スムーズな発進を実現。名称としてはグリップコントロールで変わりないが、中身は細かくブラッシュアップされているのである。
そのグリップコントロールと急坂や雪が積もった下り坂を下る際に役立つヒルディセントコントロールは2WD車にも標準装備。4WD車の進化がすごいので、2WD車がやや見劣りする印象になりがちだが、そもそもベースとなったeKクロススペース/eKスペースは(さらに言うと兄弟車である日産のルークスも)、初代から2代目にフルモデルチェンジした際にサスペンションを大きく改良している。
それは普通車並みのポテンシャルと言っても過言ではなく、実際のところ、ほとんど乾いた舗装路しか走らないというユーザーにとっては2WD車でも十分快適な乗り味を享受できる。
SPECIFICATION
グレード名 T Premium(4WD)
全長×全幅×全高(mm) 3395×1475×1830
室内長×室内幅×室内高(mm) 2200×1335×1390
WLTCモード燃費消費量(km/L) 17.5
エンジン排気量・種類 659cc・直列3気筒DOHCターボ
最高出力[kW(ps)/rpm] 47(64)/5600
最大トルク[Nm(kgf・m )/rpm] 100(10.2)/2400-4000
乗車定員(名) 4
タイヤサイズ 165/60R15
価格 223万8500円
公式キャラクターの名称は「デリ丸。」
▷三菱・DELICA MINIの実力チェック まとめはこちら
STYLEWAGON(スタイルワゴン)2023年9月号より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]