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作りたくても、作れない状況に
文字通り「大変なことになっている」のが、新車生産&販売の現場。ご存じのように、以前ならよほどの希少車以外はあり得ないような長納期が普通になっている。2〜3カ月待ちは当たり前、半年も珍しくはない。
以前であれば生産技術が発達してオンデマンド化が進み、最短で作るだけなら1日程度。オーダーからディーラーへの配車が1週間ぐらい(ただし納車はさらに時間は必要)まで来ていたのに、いつのまにか長納期が当たり前に。新車が欲しい人にとっては大混乱だ。さらに言えば、自動車は日本の基幹産業だけに、生産が滞るということは日本経済にもダメージが及ぶ。
一体何が原因なのかというと、まず思い浮かぶのが新型コロナとウクライナ戦争だろう。前者は部品も含めて生産に影響があったし、後者は世界的な資源調達や物流に問題が波及した。
しかし、実際のところ原因はこれだけでない。最近の大きなトピックスということで、先のふたつが思い浮かぶだけで、それ以外にも複合的に多くの問題が複雑に関わっている。
まず、大きなダメージとなったのが2021年初頭にアメリカ中西部を襲った大寒波。雪雲が巨大すぎて気象衛星がエラーを起こすほどの規模で、マイナス50度にも達し、停電が発生したほか、天然ガスの供給も滞って、生産活動が停止。しかもこの中西部には日本メーカーも含めた各自動車メーカーの工場に加えて、サムスンなどの半導体工場があってこれらも生産停止したことで、半導体の供給不足が深刻になった。そのほか、精油所が止るなど、影響は多岐に渡り、復旧にも時間がかかって、今でも影響が残っている。
とくに半導体に関してはさらに深刻で、国内にも自動車用を得意とするルネサスというメーカーがあるが、コスト高で赤字続き。しかも工場が火災に遭うなど不幸が続いた。そのほか、台湾のTSMCという半導体メーカーを誘致して熊本に工場を建設する予定だが、ここでもコスト高など懸念は残っている。
そして一番深刻なのが、長きに渡る日本経済低迷による円安の問題。日々ニュースをにぎわせていて、海外からモノを買うときは非常に厳しい状況になっている。海外のライバルに対して買い負けしている状態で、半導体や自動車部品、素材だけでなく、食品が高騰しているのもこれが原因だったりする。
とくに中国は経済の伸びが鈍化していると言われるが、規模を考えると今でも侮れない存在だ。新型コロナ発生当初は強烈なロックダウンでいち早くその影響から脱却したこともあって、世界中から買い漁っている。そうなると、日本にとっては厳しい。また人件費の高騰もあって、中国製の部品などが安くなくなっているのも、中国に依存してきた日本には頭の痛いところだ。
実はここのところ受注中止が増えているのは中国での新型コロナが関係している。なぜ今また新型コロナかというと、ゼロコロナ政策で今年の3月から5月にかけて上海がロックダウンされ港も封鎖されたから。日本への船便が止って半導体も含めた部品全体が不足。その影響が半年経っても残っているのだ。
某メーカーの生産管理者に聞いても「部品がこれだけ集められたから今日は何台作れるか」という感じ。先日、生産ラインを見てきたが、手持ちぶさたという、本来大量生産ではあり得ないことが起きていた。
以上、原因を探ってみたが、我々にとって深刻なのは買えないこと。次からは実際の状況を見ていくことにしよう。
台数減=産業としてのダメージ
コンテナ不足
半導体は買い負け
戦争もあるんですが
SYNEL / PIXTA(ピクスタ)
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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]