【海外技術情報】スカニア:完全新設計の13Lエンジンプラットフォーム

スウェーデンの商用車メーカーであるスカニアが、完全新設計となる13Lエンジンプラットフォームを発表した。本稿では、そのリリースを翻訳・要約してお届けしよう。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

長距離走行で8%以上の燃料節約を達成する

アシスタント・チーフエンジニアのリンダ・パックバーググレン氏は以下のように述べた。
「私たちは白紙の状態から始めて、完全に新しい13リットルのエンジンプラットフォームを開発するという特権を与えられました。ゼロから始めるということは、お客様のニーズに合わせて、制約なしに設計作業に集中できることを意味しました。だからこそ私達は、運輸業界が本当に必要としている製品をここに提示し、持続可能な未来に向けて必要な措置を講じることができたのです」

チームメンバーのヒューバート・ヘルプスト氏(左)とアシスタント・チーフエンジニアのリンダ・パックバーググレン氏(右)。

スカニアのエンジニアはスーパーエンジンプラットフォームを使用して、高性能エンジンと後処理システムの完璧かつ繊細なバランスを実現した。このシステムはCO2排出量を減少させるのに効率的であると同時に、エンジンとしての高い性能を両立させている。またブレーキの熱効率が最大50%に達することも注目に値する。これは非常に広い範囲のエンジン速度と負荷領域において、燃料消費量が大幅に改善されることを意味する。長距離車両、建設車両、林業車両など、さまざまな用途向けの車両がその恩恵はを受けることになる。この卓越したエネルギー効率と、スカニアのパワートレインのその他の主要な更新(新しいギアボックスや新しいリアアクスルなど)の効果により、長距離走行で8%以上の燃料節約を達成できる。

新開発13Lエンジンプラットフォームの概要

新エンジンプラットフォームでは、DOHC、最適化されたインジェクター、改善された燃焼、最適化された高圧燃料ポンプ、改善された冷却と潤滑、ターボチャージャー効率の向上、それに最先端のエンジン管理システムが採用された。またデュアルSCRは優れた燃料節約能力を誇り、生産性と稼働時間の向上を実現する。この新しいデュアルSCRはゼロから作り直されたもので、『Scania Twin SCR』という名称が与えられた。後処理技術のテクニカルマネージャーを務めるマグナス・ニルソン氏は以下のように述べた。

「私たちの新しいツインSCR後処理システムは、効率的なエンジンから出る限られた熱を利用するように設計された独創的な「化学工場」です。窒素酸化物や粒子状物質の排出を劇的に削減させます。このコンセプトは、今後数年間のより厳しい環境法への対応を保証するものでもあります」

その研究開発に投資した金額は20億ユーロ以上であり、これはスカニアにとって新しいパワートレインに対する史上最大の投資の1つである。

ニルソン氏とパックバーググレン氏は、5年間の長い開発プロセスの鮮明な記憶を持っているという。2019年、スペイン南部のシエラネバダ山脈の暑い高地において新エンジンプラットフォーム搭載トラックのテストをした際、開発者チームは非常に戸惑ったとニルソン氏は語った。データは一部のテストで燃料消費量が約10%大幅に削減されたことを示していた。

「特に排気流量が比較的少なかったため、テスト機器の故障チェックを行いました。排気流は後処理システムの設計と触媒のサイジングにとって重要なパラメーターです。排気流量が多いほど、触媒が排出量を削減するために使用できる時間が短くなります。実験は再度行われ、R&Dのテストセルでも確認されました。そして、私たちは気づきました。新エンジンは本当に素晴らしかったのです。実際に、この大幅な流量削減を達成し、さらに重要なことに、燃料消費も削減していたのでした」とニルソン氏は述べた。

パックバーググレン氏は、スペイン南部までテスト車両を運転したことを思い出したという。

「トラックと新パワートレインの感触は絶対的に素晴らしかったです。どれほど静かでスムーズだったのか……信じられませんでした。それは私に永遠に残る個人的な思い出となりました」と彼女は言う。

Scaniaの新しい13リッターエンジンプラットフォームの特徴
• Euro6に対応した4つの異なる出力レベル(420、460、500、および560 hp)を備えた13L直列6気筒エンジンプラットフォーム。
• すべてのエンジンには固有のHVO(硬化植物油)機能を搭載。そのうちの2つはFAME(脂肪酸メチルエステル)バイオディーゼルバージョンとして注文できる。
• エネルギー効率が極めて良い。最大50%のブレーキ熱効率(BTE)。
• 排出ガス制御が大幅に改善されたScania Twin SCRシステムを採用。
• DOHCを採用。
• 新パワートレインは長距離アプリケーションで通常8%の燃料節約を約束する。

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著者プロフィール

川島礼二郎 近影

川島礼二郎

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系…